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粒子の“大小ミックス”が鍵となるか~全固体電池の早期社会実装に貢献~

2026年4月10日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院工学研究科 矢野 武尊大学院生(研究当時、現・九州大学大学院工学研究科助教)、大崎 修司准教授、仲村 英也教授、綿野 哲教授
九州大学大学院工学研究科浅野 周作准教授、井上 元教授
ドイツ ブラウンシュヴァイク工科大学(粒子技術研究所/ブラウンシュヴァイクバッテリー研究所) Moritz Hofer(モリッツ・ホーファー)大学院生(研究当時)、Arno Kwade(アルノ・クヴァデ)教授、Peter Michalowski(ピーター・ミハロフスキ)博士

概要

次世代蓄電デバイスとして期待される全固体電池の実用化に向けては、電極内部でリチウムイオンがいかにスムーズに移動できるかが重要です。
本研究グループは、硫化物系固体電解質を使い、粉砕条件を変えて粒子の大きさを調整した電極を作り、その構造と電気性能を調べました。その結果、粒子が同じ大きさの場合より、大小さまざまな粒子が混在している方が、電極内部のイオンの通り道が曲がりにくくなり、伝導効率が向上することを確認しました。

本研究成果は、2026年2月17日に国際学術誌「Journal of Energy Storage」にオンライン掲載されました。

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ポイント

  1. 電極の材料である「固体電解質」の粒子の大きさを不揃いにすることで、電極内部でのリチウムイオンの移動効率の向上を確認。
  2. 高価な新材料を使用せず、粒子の大きさの調整で全固体電池の急速充放電性能などを引き出すことが可能に。

<研究者のコメント>

本研究成果は、筆頭著者である矢野 武尊(現・九州大学大学院工学研究科 助教)が博士課程在学中にドイツのブラウンシュヴァイク工科大学へ留学し、現地での実験とシミュレーション解析を粘り強く進めたことで得られたものです。コロナ禍を乗り越え、海を越えた国際共同研究として実りある成果を挙げられたことを大変嬉しく思います。

press_oosakiprofile大崎 修司准教授

研究の背景

次世代の蓄電デバイスとして注目される全固体電池の実用化において、電極内部でのリチウムイオンの移動効率(イオン伝導性)の向上は最大の課題の一つです。電極内は固体粒子が複雑に重なり合っており、イオンはその粒子を縫うように移動しなければならず、この「道の曲がりくねり(屈曲率)」が抵抗の原因となっていました。

研究の内容

本研究では、電極の材料である硫化物系固体電解質を用い、粉砕条件を変えることで粒径分布を制御した電極層を作製し、その構造と電気特性を評価しました。また、コンピュータシミュレーション(離散要素法)を用いて、電極内部のミクロなイオン伝導パスを可視化・数値化しました。

その結果、粒子の大きさを揃えた場合よりも、大小さまざまな粒子が混ざり合った状態の方が、電極全体の屈曲率が小さくなることが判明しました。これは、大きな粒子が小さな粒子の集合体の中を貫通するように配置されることで、大きな粒子がイオン輸送の「バイパス」のような役割を果たし、イオンが通過すべき粒子間界面の数が減少し、最短距離に近い経路が形成されるためです。本研究は、これまで見落とされがちだった「粒子の大きさのバラつき」が、電池性能を左右する重要なパラメータであることを科学的に実証しました。

期待される効果・今後の展開

本知見を活用することで、高価な新材料を開発することなく、既存材料の粒径分布を最適化するだけで、全固体電池の性能を大幅に引き出すことが可能になります。これにより、電気自動車(EV)の急速充放電性能の向上や、製造プロセスの効率化が期待されます。

今後は、正極活物質の粒径や充填密度との相関についても解析を進め、より実用的な電極製造プロセスにおける最適設計手法を確立することで、全固体電池の早期社会実装に貢献することを目指します。

資金情報

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費(助成番号 22KJ2617、24K23019)、JSPS国際共同研究事業(ドイツ研究振興協会(DFG)との共同研究、助成番号 JPJSJRP20221606)、および科学技術振興機構(JST)次世代研究者挑戦的研究プログラム(助成番号 JPMJFS2138)の支援を受けて実施しました。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Journal of Energy Storage
【論文名】 Effect of size distribution of solid electrolyte on tortuosity of ionic conductive paths: A combined experimental and simulation study
【著者】 Takeru Yano, Moritz Hofer, Shuji Ohsaki, Hideya Nakamura, Satoru Watano, Shusaku Asano, Gen Inoue, Arno Kwade, Peter Michalowski

【掲載URL】 https://doi.org/10.1016/j.est.2026.120973

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
准教授 大崎 修司(おおさき しゅうじ)
TEL: 072-254-9578
E-mail:shuji.ohsaki[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:橋本
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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