最新の研究成果

超音速で渦が崩れる現象の一端を解明 ~次世代超音速旅客機の設計に貢献~

2026年4月22日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院工学研究科 比江島 俊彦准教授

概要

音速を超える超音速における渦崩壊※1という現象の発生については、これまでほとんど何も分かっていませんでした。本研究では、超音速流中での渦崩壊の有無を運動エネルギーと内部エネルギーの大小から判断できることを発見しました。今後、超音速旅客機のデルタ翼で生じる渦崩壊現象の解明や、渦崩壊による機体の空力的不安定を予防する対策を検討するうえで、重要な知見になることが期待できます。

本研究成果は、2026年3月30日に国際学術誌「Journal of Fluid Mechanics」にオンライン掲載されました。

pr20260422_hie01図 渦崩壊の形態:亜音速(音速未満)では研究が進んでいるが、超音速では不明な点がまだ多い。本研究で、軸上での加速、つまり淀み点をもたずにスパイラル渦崩壊が生じることが判明した。

ポイント

  1. 渦軸上で流れが加速して渦崩壊が生じることが判明した。
  2. 渦中心の流線上に着目し、運動エネルギーと内部エネルギーの関係からスパイラル(らせん)渦崩壊発生条件を導いた。
  3. マッハ数2が2.5から5.0までの超音速流中の旋回渦に関する3次元数値シミュレーションにより、妥当性を確認した。
  4. 本研究は、超音速旅客機のデルタ翼面上での渦崩壊解明や空力不安定の予防に役立つ知見となる。

<研究者のコメント>

未解明である超音速流中での渦崩壊現象発生の十分条件について、現象の本質を抽出して簡単な式で評価することができました。Journal of Fluid Mechanics(JFM)は流体力学の分野で世界的に最も権威のある学術雑誌です。基礎的な物理学分野への貢献に留まらず、本成果を次世代超音速旅客機の設計に役立つ発展へとつなげていきたいと考えています。

pr20260422_hie02比江島 俊彦准教授

研究の背景

旋回流※3は、さまざまな所に出現し、さまざまな分野で応用されている基本的な渦流れです。低速流に相当する非圧縮流での渦崩壊現象は、その崩壊形態として主にバブル型とスパイラル型の二つが出現し、次のような特徴があります。まず、流れ方向に強い逆圧力勾配をもち、流れが減速して渦軸上に淀み点が生じて再循環領域※4が形成されることです。また、その発生条件に関しては、渦の旋回流強さに基づく臨界スワール数※5が存在します。一方、高速流に相当する圧縮性流における渦崩壊現象については未解明な点が多く、衝撃波※6との干渉によって生じる渦崩壊現象が、衝撃波前後の逆圧力勾配により非圧縮流のバブル型渦崩壊に近い構造で発生することが示されているのみです。圧縮性流、特に音速を超える超音速流での渦崩壊現象の発生については、これまでほとんど何も分かっていませんでした。

研究の内容

本研究では、渦中心の流線上に着目し、全エンタルピー※7保存に基づいて運動エネルギーと内部エネルギーの関係からスパイラル渦崩壊発生条件を導きました。このとき非圧縮流とは異なり、渦軸上で流れが加速して渦崩壊が生じることが分かりました。そして、この理論的な十分条件の妥当性については、マッハ数が2.5から5.0までの超音速流中の旋回渦に関する3次元数値シミュレーションにより確認しました。本研究により、超音速流での渦崩壊について、スパイラル渦崩壊発生に関する十分条件を世界で初めて明らかにしました。

期待される効果・今後の展開

本研究により、超音速流中での渦崩壊の有無を運動エネルギーと内部エネルギーの大小から判断できることが分かりました。亜音速とは異なる超音速での流体力学の研究に大きな進展を与え、超音速旅客機のデルタ翼で生じる渦崩壊現象の解明や、渦崩壊による機体の空力的不安定の予防に役立つことが期待できます。

資金情報

本研究は、科学研究費補助金基盤研究(C)(JP21K11922)の支援を受けて実施しました。

用語解説

※1 渦崩壊:旋回を伴う安定した渦流れが突然拡大して崩壊する現象。

※2 マッハ数:流体の流れの速さと音速との比。

※3 旋回流:流線がらせんを描く、流れ場全体が大きな渦である流れ。スワールともいう。

※4 再循環領域:主流と逆向きの流れが発生し、それらが作り出す局所的な循環する流れの領域。

※5 臨界スワール数:渦崩壊が発生する旋回流の強さの閾値。

※6 衝撃波:物体が音速を超えて移動するときに発生する波で、流体中を伝播する圧力などの不連続な変化。

※7 全エンタルピー:静エンタルピーと運動エネルギーの和。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Journal of Fluid Mechanics
【論文名】 Onset of spiral vortex breakdown in supersonic flows
【著者】 Toshihiko Hiejima

【掲載URL】 https://doi.org/10.1017/jfm.2026.11349

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
准教授 比江島 俊彦(ひえじま としひこ)
TEL:072-254-9246
E-mail: hiejima[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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