最新の研究成果

飲み込み型医療機器の通信性能を大幅向上 ~生体内通信を支える新技術を開発~

2026年4月22日

  • 情報学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院情報学研究科 小林 匠准教授、Jaakko Hyry(ヤーッコ ヒリュ)特任助教、藤本 まなと准教授、安在 大祐教授

概要

本研究グループは、飲み込み型医療機器からの生体通信で、利用がこれまで難しいとされていた超広帯域通信(UWB: Ultra WideBand)※1の実現可能性を大幅に高める技術の開発に成功しました。今後普及が期待される生体内医療機器の導入を後押しし、新たな医療技術の実用化に大きく寄与すると期待されます。

本研究成果は、2026年1月21日に国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

ポイント

  1. 低侵襲な飲み込み型医療デバイスの普及を阻んでいた、生体内無線通信の課題を克服。
  2. 強い電波を利用することは安全性の問題があったが、超広帯域(UWB)通信と分散ビームフォーミング※2により、送信するエネルギーを増やさず安全性を保ったまま通信品質を大幅向上。
  3. 飲み込み型医療デバイスの実用化・高度化を加速し、次世代医療・ヘルスケアへの展開に貢献。

Fig.1_Anzai_Kobayashi図:分散ビームフォーミングを用いた複数の飲み込み型医療デバイスの構成例

<研究者コメント>

高周波数帯の生体通信の活用には課題が多い状況でしたが、本研究の取り組みにより高周波数帯利用の実用化につながる研究成果が得られたことに関係者一同で喜びを感じています。今後の飲み込み型機器の新しい展開に期待しています。

profile

    小林 匠准教授      Jaakko Hyry特任助教     藤本 まなと准教授       安在 大祐教授

研究の背景

カプセル内視鏡や飲み込み型温度計、ディジタル錠剤に代表される飲み込み型医療デバイスは、低侵襲で患者の負担が少ない医療技術として近年大きな注目を集めています。これらのデバイスの普及・高度化には、体内から体外へ安定かつ高品質に情報を伝送する無線通信技術の確立が不可欠です。しかし、スマートフォンの5GやWi-Fiで利用されているGHz帯(1GHz=10億H z)の電波は、人体組織による電波吸収が大きく、生体内通信への応用には多くの技術的課題が存在していました。また、生体内の医療デバイスでは強い電波を利用することは安全性の問題があり、送信するエネルギーを増やさずに、いかに生体通信の品質を改善できるかが重要なポイントになります。その一方で、GHz帯より低い周波数帯においても解決すべき制約があり、新しい生体医療デバイスの実現に歯止めがかかっている状況でした。このような背景から、生体通信に適した新しい通信技術の開発が強く求められていました。

研究の内容

本研究は、今後の利用拡大が期待される超広帯域(UWB: Ultra Wideband)通信に着目し、生体内通信の品質を大幅に向上させる分散ビームフォーミング技術を新たに確立しました。本開発技術では、複数の飲み込み型デバイスを協調的に動作させることで、送信電力を増加させることなく、体外において効率的に大きな通信エネルギーを取り出すことを可能にしています。

期待される効果・今後の展開

人体組織による電波吸収が大きい生体内通信において、体外での高効率な信号受信を実現する技術の実現が重要な課題でしたが、本研究成果によりこの課題を克服しました。複数の生体内デバイスが協調連携し、より安全で品質の高い生体通信が可能になります。

本成果により、飲み込み型医療デバイスから手軽かつ高品質な無線通信が実現可能となり、今後、実用化・普及の加速や、より高度な医療・ヘルスケア応用への展開が期待されます。

資金情報

本研究は、JST【ムーンショット型研究開発事業】グラント番号【JPMJMS2214-06】、総務省の「電波資源拡大のための研究開発(JPMI250830001)」、及びJSPS科研費JP24K00885の助成を受けて実施しました。

用語解説

※1 超広帯域通信(UWB: Ultra WideBand):
UWBとは、数GHzにわたる非常に広い周波数帯域を利用する無線通信方式で、高い距離分解能を持つことから通信と同時に高精度な位置計測が可能である特徴を有する。近年では、Appleの紛失防止タグ「AirTag」にUWBが採用され、スマートフォンとの高精度な相対位置測位を実現している。

※2 分散ビームフォーミング:
通常のビームフォーミングは1つの端末内に複数配置されたアンテナを制御し、特定の方向に無線通信電波の強いビーム形状を形成する技術である。分散ビームフォーミングはこの概念を拡張し、複数の通信端末を協調させ、あたかも複数のアンテナを持つ1つの端末(システム)として制御することでビームフォーミングを実現する。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Scientific Reports
【論文名】 Weight optimization of MIMO-UWB distributed beamforming for implant communications
【著者】 Takumi Kobayashi, Jaakko Hyry, Manato Fujimoto, Daisuke Anzai

【掲載URL】 https://doi.org/10.1038/s41598-026-36694-w

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学 大学院情報学研究科
准教授 小林 匠(こばやし たくみ)
TEL:072-254-9553
E-mail:kobayashi.takumi[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:橋本
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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