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人工光合成システムの自動運転化が前進 ~太陽光でギ酸を高効率に生産~

2026年5月13日

  • 研究推進機構
  • 理学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学人工光合成研究センター 松原 康郎准教授、天尾 豊教授、
飯田グループホールディングス株式会社 次世代技術開発室 川上 日向子研究員、梶田 康仁研究員

概要

ギ酸は二酸化炭素の削減とエネルギー貯蔵を同時に実現できる重要な物質です。太陽電池とギ酸を生成するための電解槽とを組み合わせ、太陽電池が常に効率よく発電できるように制御する最大電力点追従(MPPT)システムは、太陽光をエネルギー源として燃料を自動的に生産する人工光合成装置の実現に向けた有望な技術です。しかし、従来のMPPTシステムは、太陽光の強弱に合わせて出力を一定にするための高価なバッテリーが必要な点が課題でした。本研究グループは、電解槽を理論的にモデル化し、改良することで、特定の条件下において太陽光の強弱に関わらず一定濃度のギ酸を生産し続ける自動運転に向けた人工光合成技術の基盤を確立しました。

本研究成果は、2026年3月20日に国際学術誌「EES Solar」にオンライン掲載されました。

pr20260513_02図1 二酸化炭素と水からギ酸を生成する人工光合成システム

ポイント

  1. ギ酸を生成するための電解槽を、熱と電気の観点から理論的にモデル化し、改良した。
  2. 太陽光の強度に合わせて供給するガスや水量を制御することで、常に一定濃度の純粋なギ酸が得られるようになった。
  3. 特定の条件下において、太陽電池の最大電力点を追跡できる、自動運転化に向けた人工光合成技術の基盤を確立した。
  4. 人工光合成の自動運転システムとして、現時点で世界最高レベルのエネルギー効率を達成した

<研究者のコメント>

今、温室効果ガスの総排出量をゼロにするための技術開発が、世界中で行われています。人工光合成研究センターでは、そのための科学と技術を研究開発・支援しています。本研究は、そのようなコア技術を社会実装するための架け橋となる中間技術として、新しい方法を提示できたと自負しています。

pr20260513_03松原 康郎准教授

研究の背景

人工光合成は太陽光エネルギーを駆動力とし、二酸化炭素を原料とした燃料を合成する有望な技術です。本研究グループは、太陽光エネルギーを利用して水と二酸化炭素から燃料となりうるギ酸を生成する、人工光合成技術の確立を目指した研究を進めてきました。太陽電池と電解槽を連動させ、最大電力点追従(Maximum Power Point Tracking; MPPT)システムで運転制御することは、太陽光エネルギーを駆動力として燃料生産する自律型人工光合成装置を実現するための有望なアプローチの一つです。しかし、人工光合成により安価に燃料生産することが目標であるにもかかわらず、従来のMPPTシステムでは高価なバッテリーを必要とするため、システム全体として高価な部材に依存している点が課題でした。

研究の内容

本研究では、電解槽を熱と電気の観点から理論的にモデル化し、改良しました。その結果、特定の条件下で太陽電池の最大電力点を追跡でき、太陽光の強弱に関わらず一定濃度のギ酸を生産可能な自動運転化した人工光合成技術の基盤を確立しました。

本研究で開発した人工光合成技術では、太陽光の強度に合わせて供給するガスや水量を制御することで、常に一定濃度の純粋なギ酸が得られます。そして、この技術を組み込んだ装置は、実際に、強度が変動する太陽光を用いて水と二酸化炭素からギ酸を安定して生成できることが分かりました。具体的には従来の電子式MPPTシステムを使用せず、市販の単結晶シリコン太陽電池パネルを接続した電解槽(図2)に本研究で考案したモデルを適用したところ、太陽電池による発電エネルギーを高効率で利用することができ(平均85%)、太陽光エネルギーからギ酸への変換エネルギー効率2%で、純水と二酸化炭素から0.1 kgのギ酸を生成することができました。このエネルギー効率には、装置運転に必要なエネルギーも含まれており、自動運転システムとして現時点で世界最高レベルの効率を達成しました。

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図2 水と二酸化炭素からギ酸を生成するための電解槽の構成と外観図

期待される効果・今後の展開

本研究は、2025年4月に開幕した2025大阪・関西万博の「飯田グループ×大阪公立大学共同出展館」にて実証試験を実施し、パビリオン内のミニジオラマへの給電のために必要なギ酸生成に利用されました。今後は、さらにギ酸生成収率を高めるとともに、住宅への搭載のための人工光合成技術へ展開します。

資金情報

本研究は、飯田グループホールディングス株式会社との共同研究によって実施されました。

掲載誌情報

【発表雑誌】 EES Solar
【論文名】 Chemical Maximum-Power-Point Tracking System for Stabilized Liquid Solar-Fuel Production
【著者】 Yasuo Matsubara, Hinako Kawakami, Yasuhito Kajita, Yutaka Amao

【掲載URL】 https://doi.org/10.1039/D5EL00177C

※ EES Solar(Energy and Environmental Science Solar)は、英国の学術機関である王立化学会(Royal Society of Chemistry, RSC)が発行する、太陽エネルギーおよび太陽光発電に焦点を当てた優良な国際的学術誌です。本誌では、太陽エネルギー分野の発展に資する画期的な基礎研究から、化学、物理学、材料科学、工学、理論、政策、技術経済分析にまたがる研究まで、幅広い研究論文および分析論文を掲載しています。特に、環境に配慮した材料や持続可能な手法を用い、環境負荷を最小限に抑えながら高性能の実現を目指す研究を積極的に取り上げています。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学 人工光合成研究センター
教授:天尾 豊(あまお ゆたか)
TEL:06-6605-3726
E-mail:amao[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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