最新の研究成果
血液検査で分かる栄養不足と疲労のつながり~健康な日本人約600人を対象に調査~
2026年5月12日
- 生活科学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学大学院生活科学研究科 竹中 重雄教授、叶内 宏明教授、桒原 晶子教授、健康科学イノベーションセンター 水野 敬特任教授、渡辺 恭介特任准教授、渡辺 恭良顧問、アリナミン製薬株式会社
概要
本研究グループは、健康な日本人約600人を対象に、血液中のホモシステイン※1濃度、葉酸※2濃度、ビタミンB12※3濃度を測定し、血中ホモシステイン濃度からビタミンB12や葉酸の不足を検出できることを明らかにしました。また、ホモシステイン濃度と疲労の関係を男女に分け、重回帰分析※4を実施。男性はホモシステイン値が高いと身体疲労が大きく、女性はホモシステイン値が高いと意欲が低下することが明らかになりました。
本研究成果は、2026年3月17日に国際学術誌「Nutrients」にオンライン掲載されました。
ポイント
- ホモシステイン濃度が高い人ほど、葉酸とビタミンB12が不足していることを確認。
- ホモシステイン濃度が高いことは、男性で身体疲労の大きさと女性で意欲低下との関連を示した。
図:不適切な生活習慣によるホモシステイン高値と身体疲労の関連(男性の場合)
<研究者のコメント>
現代社会において水溶性ビタミンの欠乏症は稀であるとされています。しかし、欠乏症が現れていない潜在的欠乏状態による身体の不調を呈しているケースが認められるようです。偏食は水溶性ビタミン摂取不足に陥りやすいため、日頃からバランスの取れた食事を心がけて欲しいです。

叶内 宏明教授
研究の背景
現代社会では、多くの人が日常的に疲労を感じているといわれています。疲労は生活の質を下げるだけでなく、仕事の効率低下や事故の原因にもなるため、社会的な問題です。私たちは、疲労の原因の一つとして「栄養状態」に着目し、特に、偏った食生活によって不足しやすい水溶性ビタミンが、体の不調に関係しているのではないかと考えました。本研究では、体内の「酸化ストレス(体が酸化して傷つく状態)」に関係する物質であるホモシステインに注目しました。ホモシステイン代謝には、ビタミンB12と葉酸が必要です。そこで、ビタミンB12や葉酸が不足すると血中ホモシステイン濃度が高くなり、そのことが疲労とどのように関係しているかを調べました。
研究の内容
健康な日本人およそ600人を対象に、血液の中に含まれるホモシステインという物質、および葉酸、ビタミンB12の量を調べました。その結果、血液中のホモシステインの値が高い人たちは、男女ともにビタミンB12と葉酸の量が少ないことが分かりました。つまり、ホモシステインの値は、これらのビタミンが不足しているかどうかをよく表していることが分かりました。
次に、ホモシステインの値と疲労との関係について、男女別に調べました。その際、年齢や睡眠時間、仕事の忙しさ、食事内容など、疲労に影響しそうな要因を同時に考慮して解析しました。その結果、男性ではホモシステインの値が高いほど体の疲れが大きく、女性ではホモシステインの値が高いほど意欲が低くなることが明らかになりました。
これらの結果から、ビタミンB12や葉酸が不足するとホモシステインの値が高くなり、それが疲労や意欲の低下に関係する可能性があることが分かりました。これは、健康な人を対象として、ビタミンB12や葉酸の不足と疲労の関係を示した世界で初めての報告であると示唆されます。
期待される効果・今後の展開
血中ホモシステイン濃度は心血管疾患や認知症、骨折、胎児の神経管閉鎖障害等との関係の観点で、注意喚起がされてきましたが、今回の研究結果によれば、今後は疲労や意欲の面にも留意をしていく必要があると考えられます。ホモシステイン値の上昇を抑えるためには、ビタミンB12や葉酸が不足しないことが重要です。日常からバランスの良い食事に心がけることが肝心です。
資金情報
本研究は、健康“生き活き”羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラムとアリナミン製薬株式会社の支援を受けて実施しました。
用語解説
※1 ホモシステイン:体内での代謝過程で生成される悪玉アミノ酸である。ビタミンB12や葉酸が不足するとホモシステイン値が上昇する。
※2 ビタミンB12:水溶性ビタミンの一つで、動物性食品にのみ含まれる。
※3 葉酸:水溶性ビタミンの一つで、葉物野菜、海藻、豆類などに含まれる。
※4 重回帰分析:複数の因子の関係を同時に考慮して解析する方法。
掲載誌情報
【発表雑誌】 Nutrients
【論文名】 Associations of Plasma Homocysteine Reflecting Vitamin B12 and Folate Status with Fatigue-Related Outcomes in Healthy Adults
【著者】 Hiroaki Kanouchi, Ayaka Yamamoto, Akiko Kuwabara, Shigeo Takenaka, Eiji Nishikubo, Yukihiro Nomura, Takehiro Naruto, Kyosuke Watanabe, Kei Mizuno and Yasuyoshi Watanabe
【掲載URL】 https://doi.org/10.3390/nu18060941
関連情報
https://alinamin-pharma.co.jp/news/newsrelease/
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院生活科学研究科
教授 叶内 宏明(かのうち ひろあき)
TEL: 06-6167-1362
E-mail: kano[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:橋本
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs