最新の研究成果
通いの場参加と認知機能障害の関連を明らかに~運動習慣がない高齢者ではリスク半減~
2026年5月15日
- リハビリテーション学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科 上村 一貴准教授
概要
地域住民が主体となって体操等のグループ活動を行う「通いの場」は、介護予防施策として注目されており、認知機能障害の予防効果も期待されています。
本研究グループは、大阪府羽曳野市の高齢者3,511人を対象にしたアンケート調査結果および介護保険データを用いて分析を行い、通いの場への参加と認知機能障害の発生との関連を検討しました。
その結果、高齢者の運動習慣の有無によって、通いの場への参加と認知機能障害の発生との関連が異なることが明らかになりました。
本研究成果は、2026年5月9日に国際学術誌「Journal of the American Geriatrics Society」にオンライン掲載されました。

図:通いの場参加と認知機能障害リスクの関連
ポイント
- 運動習慣がない高齢者では、通いの場への参加者は非参加者と比べて、認知機能障害の発生リスクが約半分であることが示された。
- 運動習慣がある高齢者では、通いの場への参加の有無による明確な差は認められなかった。
<研究者コメント>
本研究は、老年学・運動疫学の知見としての意義に加え、日本の地域に根ざした介護予防の取り組みである「通いの場」の効果を、国際誌を通じて世界に発信した点にも意義があるものと考えています。今後も、地域の実践とデータを結びつけることで、介護予防施策の検証を進め、その成果を国内外に発信してまいります。
上村 一貴准教授
研究の背景
健康寿命の延伸を目指す介護予防施策として、全国の市町村で「通いの場」(地域住民の有志による体操などのグループ活動)が推進されています。通いの場は、身体活動や対人交流による認知的刺激を通して、認知機能障害の予防効果も期待されています。
これまでの研究では、通いの場への参加と認知機能障害の発生との関連について、一貫した結果は得られていませんでした。そこで本研究では、通いの場への参加効果の現れ方には個人差があると考え、その要因の一つとして「運動習慣」に注目しました。運動習慣は、それ自体が認知症予防において重要な生活習慣であることが知られています。本研究では、通いの場への参加と認知機能障害の発生との関連が、運動習慣の有無によって異なるかを検討しました。
研究の内容
本研究では、羽曳野市が2020年1月に実施した郵送アンケート調査(要介護認定を受けていない高齢者3,511人)と、介護保険データを用いました。羽曳野市が支援する通いの場(週1回程度の体操自主グループ)への参加者と非参加者について、4年間にわたり認知機能障害の発生を追跡し、生存時間分析※により比較しました。
その結果、運動習慣(30分以上の汗をかく運動を週2回以上、1年以上継続)がない高齢者では、通いの場への参加者は非参加者と比べて、認知機能障害の発生リスクが約半分であることが示されました。一方で、運動習慣がある高齢者では、参加の有無による差は認められませんでした。
期待される効果・今後の展開
本研究の結果から、運動習慣の獲得が難しい高齢者においても、通いの場での活動(軽負荷の体操や交流)が、認知機能障害の発生を抑制する可能性が示されました。この知見は、「運動ができる人を増やす」だけでなく、「運動が難しい人でも参加できる場を整備する」という、近年の介護予防施策の方向性を補強するものと考えられます。
通いの場は、強度の高い運動プログラムに比べて参加のハードルが低く、誰もが参加できる入口として機能する可能性があります。本研究の成果は、幅広い高齢者を取りこぼさずに支える地域づくりや、健康格差の縮小を目指す行政施策の検討に資するエビデンスとして活用されることが期待されます。
資金情報
本研究は、JSPS科研費 25K14145の助成を受けて行われました。
用語解説
※ 生存時間分析:「ある出来事が起こるまでの時間」に注目してデータを分析する方法。
掲載誌情報
【発表雑誌】Journal of the American Geriatrics Society
【論 文 名】Effect Modification by Exercise Habit on the Association Between Participation in Community Gathering Places and Cognitive Disability
【著 者】Kazuki Uemura, Tsukasa Kamitani, Koutatsu Nagai, Tetsuya Ueda, Emi Fukuda, Masafumi Kuzuya, and Minoru Yamada
【掲載URL】http://doi.org/10.1111/jgs.70499
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科
准教授 上村 一貴(うえむら かずき)
TEL:06-6167-1250
E-mail:kuemura[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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