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商業施設からヘルスケア施設への転換でヘルシーニュータウンへ~20年間の都市変容から近隣住区論の更新を提言~

2026年5月19日

  • 生活科学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院生活科学研究科都市科学研究室 加登 遼准教授

概要

本研究は、泉北ニュータウン(堺市南区)を事例に、2003年から2023年までの建物用途データを用いて、ヘルスケア施設(医療施設・介護施設)がどの土地利用エリアでどのように都市変容してきたかを実証的に分析しました

その結果、戸建住宅地、団地住宅地、近隣センター※1のエリアでは、ヘルスケア施設が顕著に増加し、エリアごとに異なる三つの都市変容が明らかとなりました。本研究は、人口減少・高齢化に直面するオールドニュータウンを「ヘルシーニュータウン」へと転換するために、近隣住区論※2の原則を、高齢化社会に対応する形で見直す必要性を示すとともに、住民主体のボトムアップ型の都市経営の可能性を示すものです。

本研究成果は、2026年4月24日に国際学術誌「Journal of Urban Management」にオンライン掲載されました。

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ポイント

  1. 泉北ニュータウンでは、2003年から2023年にかけて、戸建住宅地・団地住宅地・近隣センターの三つのエリアで、ヘルスケア施設の面積が顕著に増加した。
  2. 施設タイプは、戸建住宅地ではクリニックなどの小規模施設、団地住宅地では総合病院、近隣センターでは介護施設が増加しており、エリアごとにヘルスケア機能の分化が進んでいた。
  3. 近隣センターでは、商業施設からヘルスケア施設への直接的な都市変容が確認され、近隣センターに日常生活を支える商業機能を配置するという近隣住区論の第5原則を、ヘルスケア機能を含む形で更新する必要性が示唆された。

<研究者コメント>

日本を代表するオールドニュータウンである大阪府堺市南区の泉北ニュータウンは、高齢化率が約37%に達しており、急速な高齢化を迎えています。このような高齢化したニュータウンは、これまで「オールドニュータウン」として課題が指摘されてきました。本研究は、20年間の都市変容の実証分析を通じて、こうした地域をヘルシーニュータウンへとリ・デザインする道筋を示すものです。

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加登 遼准教授

研究の背景

日本を含む東アジアの大都市圏では、1960~70年代に大規模に開発されたニュータウンが半世紀を経て高齢化し、いわゆる「オールドニュータウン」となっています。大阪都市圏だけでも241カ所のオールドニュータウンが存在し、その高齢化率は31.5%と全国平均を上回ります。こうした地域では、地域住民・医療事業者・自治体の連携により、空き店舗や空き地をヘルスケア施設へと転用する動きが進んでいます※3

しかし、日本のニュータウンの計画理念である近隣住区論は、近隣センターに「地区内商業」を配置することを前提としており、現代の高齢化に伴う医療・介護需要への対応は明示的に位置づけられていませんでした。また、これまで、ヘルスケア機能が、どの土地利用エリアで、どのような経路をたどって用途転用してきたのかを、空間的・縦断的な実証分析は限られていました。

研究の内容

本研究は、泉北ニュータウンを対象に、2003年・2009年・2018年・2023年の4時点における建物用途データ※4を用い、土地利用ゾーニング(戸建住宅地、団地住宅地、近隣センター、地区センター)別に、建物用途と延床面積をクロス集計しました。さらに、ヘルスケア施設の都市変容をサンキーダイアグラム※5により可視化し、エリアごとの転換メカニズムを分析しました。あわせて、泉北ニュータウンの都市再生関連政策文書を構造的に分析し、これらの変化の背景にあるガバナンス条件を解明しました。

その結果、ヘルスケア施設の延床面積は、団地住宅地で約24,783m²増(+2.12%)、近隣センターで約4,761m²増(+6.98%)、戸建住宅地で約7,365m²増(+0.46%)であり、近隣センターで顕著に増加していました。さらに、エリアごとに三つの異なる転換経路が確認され、戸建住宅地では、戸建住宅・事務所などからの小規模な空き家・空き地の利活用が進み、団地住宅地では、空き地を活用した総合病院の新規立地が確認され、近隣センターでは、商業施設から介護施設への直接的な転換が生じていました。

これらの変化は、単なる高齢化だけでは説明できず、介護保険制度による持続的な財源、用途規制の柔軟な運用、公的資産の再編、地域ネットワークによる調整といった、複合的なガバナンス条件に支えられていたことが示されました。

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図:近隣センターにおける都市変容(右:2003年 → 左:2023年)

期待される効果・今後の展開

本研究は、日本のニュータウンの計画理念である近隣住区論の第5原則(近隣センターへの商業機能配置)について、医療・介護などのヘルスケア機能を含む形で再定義する必要性を示すとともに、オールドニュータウンをヘルシーニュータウンへと転換させる新たな計画原則の方向性を示しました。これは、英国NHSのHealthy New Townsプログラムのように国レベルで展開されたモデルとは対照的に、地域主体によるボトムアップ型のヘルシーニュータウン形成モデルとして位置づけられます。

今後は、本研究で得られた知見を、ヘルシーニュータウンの実現に向けて活用すると共に、ヘルスケア施設へのアクセシビリティや住民の健康アウトカムとの関連分析を進めることで、エビデンスに基づく政策形成(EBPM)としての「健康まちづくり」の実装に貢献していく予定です。

資金情報

本研究は、日立財団 倉田奨励金(1622)、大林財団 研究助成事業(2024-27-28)、鹿島財団 一般研究助成(2026-30)の支援を受けて実施しました。

用語解説

※1 近隣センター:ニュータウン内の各住区(各校区)の中心に配置された、日常生活を支える商業施設および公共施設からなる複合拠点。

※2 近隣住区論:徒歩で生活できるエリアを1つの生活圏(住区)として捉え、住民の日常生活を支える公共施設や商業機能を計画的に配置する考え方。日本では、ニュータウン計画の基本理論として活用された。本研究では特に、近隣センターに商業機能を配置する原則に着目した。

※3 関連する研究成果:プレスリリース「オールドニュータウンをヘルシーニュータウンに -泉北ニュータウンでの福祉転用事例から-」(https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-13892.html)、「かつてのベッドタウンからヘルシーニュータウンへ -ニュータウン内で生活する高齢者が増加-」(https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-17491.html

※4 建物用途データ:本研究では、大阪府および堺市が実施した「都市計画基礎調査」のデータの提供を受けて利用した。

※5 サンキーダイアグラム:要素間の流量や転換量を矢印の太さで表現する図表手法。本研究では、各時点における建物用途の変化(例:商業施設からヘルスケア施設)を可視化するために用いた

掲載誌情報

【発表雑誌】 Journal of Urban Management
【論 文 名】 Urban Transformation of Neighborhood‑Units Toward Healthy New Towns: A Case Study of Senboku New Town
【著  者】 Haruka Kato

【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.jum.2026.03.016

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院生活科学研究科
准教授 加登 遼(かとう はるか)
E-mail:haruka-kato[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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