最新の研究成果
公園への経路景観が良いと歩行量が増える ~AI画像認識と歩数データを用いた縦断研究で判明~
2026年5月18日
- 生活科学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学大学院生活科学研究科 松下 大輔教授
概要
本研究では、公園へのアクセス経路の環境が、住民の日常的な歩行にどのような影響を与えるのかについて、84人を対象として複数年にわたり調査しました。その結果、公園までの経路沿いに街路灯が多いほど、より多く歩く人が増える傾向が見られました。公園へのアクセス経路の環境を整備することが、日常の歩行を増加させる可能性が示されました。
本研究成果は、2026年4月20日に国際学術誌「Transportation Research Interdisciplinary Perspectives」にオンライン掲載されました。
ポイント
- 大阪府富田林市で行われた歩行習慣推進活動に参加した84人を対象として、複数年にわたり日々の歩数調査を実施。
- 参加者ごとに最も近い公園までの最短経路を特定し、その経路沿いにある街路景観要素をAI画像認識技術※で計測。
- 公園までの経路沿いに街路灯が多いほど、より多く歩く人が増える傾向が見られた。
図 AI画像認識技術の一例研究の背景
毎日しっかり歩くことは、人々の健康と深く関連しています。特に、加齢とともに運動量が低下しやすくなるため、日常生活の中で意識的に歩く習慣が大切です。近所にある公園は、散歩や運動の目的地としてだけでなく、歩く習慣全体に影響を与えます。公園が近くにあると、人々は日常的により多く歩くようになりますが、近隣にあるだけでは十分ではなく、公園までのアクセス経路、つまり、自宅から公園までの街路環境が重要です。
街路環境には、街路灯、緑地、植栽、交通標識、塀、歩道、空など、さまざまな要素があります。これらの「アイレベル」の景観要素(人の目から見える街の風景)は、人々の歩行意欲に大きな影響を与えることが知られています。しかし、公園までのルート沿いにある環境要素が、実際に日常的な歩行量とどのように関連しているかについては、あまり研究されていませんでした。
研究の内容
本研究では、公園へのアクセス経路の環境が住民の日常的な歩行にどのような影響を与えるのかについて、大阪府富田林市で行われた歩行習慣推進活動に参加した84人を対象に、複数年にわたり調査しました。参加者が活動量計を携帯することにより日々の歩数が記録されます。また、参加者ごとに最も近い公園までの最短経路を特定し、その経路沿いにある街路景観要素をAI画像認識技術で計測しました。その後、街路景観要素と参加者の日常的な歩数の関係を統計的に分析しました。そして、結果の正確性と信頼性を確認するために、感度分析(異なる条件での分析)と、ブートストラップ法という統計的検証を実施しました。これらの方法により、限られたサンプル数でも信頼性の高い結果が得られることを確認しました。
研究の結果、公園までの経路沿いに街路灯が多いほど、より多く歩く人が増える傾向が見られました。具体的には、街路灯要素が0.25%増加すると、歩数が十分である確率が約2.17倍高くなることが分かりました。これは、明るい道路が安全性と快適性を高め、人々の歩行意欲を高めることを示唆しています。一方で、交通標識が多い経路では、逆に歩数が十分でない確率が高くなりました。具体的には、交通標識要素が0.07%増加すると、十分な歩数を達成する確率が約0.23倍になることが分かりました。これは、交通標識が多い地域ほど交通量が多く、歩行者にとって危険で不快な環境である可能性を示唆しています。また、高齢者では、経路沿いの植栽が多いほど歩数が少なくなる傾向も見られました。これは、過度な植栽は犯罪や危険と結びつき避けられる可能性を示唆しています。
これらの結果は、複数の感度分析と頑健性試験を通じて、限られたサンプル数でも、信頼性が十分高いことが確認されました。
期待される効果・今後の展開
公園そのものを作るだけでなく、公園へのアクセス経路の環境を整備することが、住民の日常的な歩行を増加させる可能性があります。
今後の展開として、より大規模な調査や異なる地域での検証、また複数の公園への経路を同時に分析することが考えられます。また、具体的な環境改善介入地域を対象とした因果関係の分析も重要です。
用語解説
※ AI画像認識技術:コンピューターが写真から自動的に特定の物体や特徴を見つけ出す技術のこと。本研究では、Google Street Viewの街路景観画像から、街路灯、看板、植栽などの要素を自動で認識し、数えたり測ったりするのに使用。AIによる画像処理で大量の画像データを効率的に分析できる。
掲載誌情報
【発表雑誌】 Transportation Research Interdisciplinary Perspectives
【論文名】 Impact of Eye-Level Streetscape Elements Along the Shortest Route to Parks on Residents' Daily Walking Behavior: Empirical Evidence from Community-Led Walking Promotion Projects
【著者】 Xiaorui Wang, Erika Matsumoto, Daisuke Matsushita
【掲載URL】 https://doi.org/10.1016/j.trip.2026.102006
資金情報
本研究はJSPS科研費JP24K01053、JST SPRING JPMJSP2139の助成を受けたものです。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院生活科学研究科
教授 松下 大輔(まつした だいすけ)
TEL:06-6605-2871
E-mail:matsushita[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs