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外装と緑化が屋内外の温熱環境を大きく左右~都市ヒートアイランド緩和策を定量評価~

2026年5月26日

  • 生活科学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院生活科学研究科 袁 継輝准教授、イラン シャールード工科大学 Mostafa Mohajerani(モスタファ・モハジェラニ)講師

概要

本研究グループは、建物内部の熱環境を再現するBuilding Energy Model(BEM)※1と、屋外の微気候を再現するUrban Microclimate Model(UMM)※2を統合したシミュレーション手法を用い、都市ヒートアイランド(UHI)※3緩和策が屋内外の温熱環境に及ぼす影響を評価しました。その結果、南面の緑化壁は室内の温熱環境を最大で1.7℃改善しました。また、低アルベド※4外装は屋外の熱快適性を約1.5℃改善する一方で、高アルベド外装は主に屋内の温度低減に有効であることが明らかとなりました。

本研究成果は、2026年3月30日に国際学術誌「Energy and Buildings」にオンライン掲載されました。

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ポイント

  1. 南面の緑化壁は室内の温熱環境を改善した(最大約1.7℃低減)。
  2. 外装の種類で効果が異なり、低アルベドは屋外快適性向上、高アルベドは室内温度低減に有効。
  3. 外装材料の放射特性は、熱容量よりも温熱環境に対して強い影響を与えることが判明。

<研究者のコメント>

気候変動により極端高温と停電リスクが重なる中、建物の温熱環境対策は重要性を増しています。本研究では、外装材料や緑化により屋内外の快適性を同時に改善できることを示しました。今後は、より多様な都市への適用を進め、レジリエントな建築設計に貢献していきます。

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袁 継輝准教授

研究の背景

近年、気候変動と都市化の進行により、都市ヒートアイランド(UHI)現象が強化され、極端高温(ヒートウェーブ)の頻度と強度が増加している。これにより、屋外だけでなく建物内部の熱環境も悪化し、冷房需要の増大や電力系統への負荷が高まり、停電リスクも増加しています。

従来の研究では、UHI対策は主に屋外環境の改善に焦点が当てられてきたが、実際には建物外皮を介して屋内外の熱環境が相互に影響するため、両者を統合的に評価する必要があります。また、停電時のような極端条件下における建物のレジリエンス評価は十分に行われていませんでした。

研究の内容

本研究では、酷暑な夏を有するアジアの都市に位置する教育施設を対象として、都市ヒートアイランド(UHI)緩和策が屋内外の温熱環境に及ぼす影響を評価しました。解析には、建物内部の熱環境を再現するBuilding Energy Model(BEM)と、屋外の微気候を再現するUrban Microclimate Model(UMM)を統合したシミュレーション手法を用いました。さらに、将来気候条件に加え、夏季のヒートウェーブおよび停電という極端な状況を想定し、現実的かつ厳しい条件下での建物性能を検討しました。温熱快適性の評価には、生理的等価温度(PET)※5を指標として用い、屋内外を統一的に評価しました。

検討対象とした対策には、高反射(高アルベド)外装、低反射(低アルベド)外装、および緑化、特に南面のグリーンウォールが含まれる。解析の結果、南面の緑化壁は室内の温熱環境を最大で1.7℃改善する効果が確認されました。また、低アルベド外装は屋外の熱快適性を約1.5℃改善する一方で、高アルベド外装は主に屋内の温度低減に有効であることが明らかとなりました。さらに、外装材料の放射特性(アルベド)は、熱容量よりも温熱環境に対して強い影響を与えることが示されました。これらの結果から、建物外皮に対する対策は屋内外の双方に同時に効果を及ぼすことが確認されました。

本研究の意義は、屋内と屋外を統合したマルチスケールでの評価を実現した点に加え、停電時における建物の耐熱性能というレジリエンスの観点を導入した点にあります。また、将来気候を考慮した実践的な設計指針を提示した点においても重要です。

期待される効果・今後の展開

本研究の成果により、ヒートウェーブ時や停電時といった極端条件下においても機能するレジリエントな建築設計の指針が提供されることが期待されます。また、都市スケールと建築スケールを統合した都市ヒートアイランド対策の高度化に寄与するとともに、エネルギー消費削減と温熱快適性向上の両立にも貢献する。特に、垂直緑化や外装材料の選択は比較的導入しやすい対策であり、都市全体の温熱環境改善にも波及効果を持つ可能性があります。

今後は、他都市や異なる気候帯への適用性の検証に加え、長期的な運用における維持管理やコストの評価が求められます。また、建物単体にとどまらず、街区や都市全体へのスケール拡張を通じて、より包括的な都市環境設計への応用が期待さます。

用語解説

※1 Building Energy Model(BEM):建物内部のエネルギー挙動や熱環境を解析するモデルである。

※2 Urban Microclimate Model(UMM):都市の微気候(温度・風・放射など)を解析するモデルである。

※3 都市ヒートアイランド(UHI):都市部の気温が郊外より高くなる現象であり、人工排熱や建築材料の蓄熱特性により発生する。

※4 アルベド:表面が太陽放射をどれだけ反射するかを示す指標である。値が高いほど反射率が高く、温度上昇を抑制する。

※5 生理的等価温度(PET):人体の熱収支に基づき評価される温熱快適性指標であり、屋内外で共通に使用できる。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Energy and Buildings
【論文名】Assessment of UHI mitigation strategies on indoor and outdoor thermal comfort under future extreme heat and power outage conditions, case study: educational building in Shahrood, Iran
【著者】 Parnian Komeili, Mostafa Mohajerani, Ahmad Jameei, Masoud Taheri Shahraeini, Jihui Yuan*(責任著者)

【掲載URL】 https://doi.org/10.1016/j.enbuild.2026.117411

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院生活科学研究科
准教授 袁 継輝(えん けいき/YUAN Jihui)
TEL:06-6605-2833
E-mail:yuan[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:橋本
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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