最新の研究成果
『通いの場』参加者は介護費用が30%低い~要支援・要介護1の高齢者で確認~
2026年7月15日
- リハビリテーション学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科 上村 一貴准教授
概要
地域住民の有志で、体操等のグループ活動を行う『通いの場』は、健康寿命の延伸を目指す介護予防施策として注目されています。
本研究グループは、豊中市の国保データベース(KDB)※1を用いた分析を行い、要支援・要介護1※2の認定を受けている高齢者における『通いの場』への参加の影響を検討しました。その結果、通いの場に参加している高齢者の方が、非参加者と比べて、2年間の追跡期間における介護費用(平均月額)が9,813円低いことを明らかにしました。本研究により、生活機能の低下が認められる高齢者において、通いの場への参加が介護費用の抑制に関連することが示唆されました。
本研究成果は、2026年7月2日に国際学術誌「Journal of the American Medical Directors Association」にオンライン掲載されました。

ポイント
- 要支援・要介護1の高齢者では、通いの場参加群の介護費用(平均月額)が非参加群より9,813円低く、約30%削減される可能性が示された。
- 要介護認定のない自立高齢者では、通いの場参加の有無による介護費用の差は認められなかった。
<研究者コメント>
本研究は、豊中市との密接な連携のもとで実現したものです。
現場での継続的な取り組みによって蓄積されたデータと、我々のデータ分析の知見を組み合わせることで、自治体における介護予防施策の社会的意義を支持する研究成果が示されました

上村 一貴准教授
研究の背景
健康寿命の延伸を目指す介護予防施策として、全国の市町村で『通いの場』(地域住民の有志で、体操等のグループ活動を行うもの)が推進されています。通いの場は、生活機能低下の有無にかかわらず、誰もが社会参加できる場とされ、住民同士の支え合いの基盤としての役割も期待されます。
通いの場には、高齢化に伴って増大する社会保障費(医療費や介護費用)の抑制への寄与も期待されています。しかし、これまでの研究は主に自立高齢者を対象としており、すでに生活機能の低下がみられる高齢者における効果は十分に検証されていませんでした。本研究では、自立高齢者と、要支援または要介護1の認定を有する高齢者(軽度の生活機能低下が認められる層)を対象に、通いの場への参加が介護費用に及ぼす影響を縦断的に検証しました。
研究の内容
本研究は、豊中市の国保データベース(KDB)を用い、75歳以上の9,489人を対象として、ベースライン(データベースに質問票データが登録された日)から2年間の介護費用を、通いの場参加群と非参加群で比較しました。その結果、要支援・要介護1の認定を有する高齢者では、参加者は非参加者と比べて、介護費用の平均月額が9,813円低いと推定され、約30%削減される可能性が示されました。一方で、要介護認定のない自立高齢者では、有意な差は認められませんでした。
期待される効果・今後の展開
本研究により、生活機能の低下が認められる高齢者において、通いの場への参加が介護費用の抑制に関連することが示唆されました。これらの結果から、通いの場が単なる体操の機会にとどまらず、介護サービスの利用のあり方にも影響し得る地域資源であると考えられます。今後は、調査期間や規模の拡大によるさらなる検証を通じて、自治体における介護予防施策の最適化や、エビデンスに基づく政策立案(EBPM)への活用が期待されます。
資金情報
本研究は、豊中市の受託研究(J241000400)の支援を受けて実施しました。
用語解説
※1 国保データベース(KDB):国民健康保険および後期高齢者医療制度に係る医療レセプト情報、健診情報、介護保険給付情報を統合した自治体ごとに分析・活用できるデータベース。
※2 要支援・要介護1:日常生活に一部の支援(要支援)や介護(要介護1)が必要と認定された状態。
掲載誌情報
【発表雑誌】 Journal of the American Medical Directors Association
【論文名】 Participation in Community Gathering Places and the Subsequent Care Costs in Older Adults: a 2-Year Follow-up Study
【著者】 Kazuki Uemura, Yuta Kuroda, Katsura Matsunami, Hiroko Tokuyama, Mami Maekawa, Koichi Endo, and Yuhei Otobe
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