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ドローン×AIで港湾岸壁のひび割れ点検を高精度化~異常検知の活用で、漂流ごみや汚れによる誤検出を低減~

2026年5月26日

  • 情報学研究科
  • 現代システム科学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院情報学研究科 吉田 大介准教授、赤毛 政親氏(研究当時:大学院生)、現代システム科学域 藤本 和佳奈氏(学士課程4年)

概要

本研究グループは、小型汎用ドローンで撮影した港湾岸壁などの港湾施設画像を対象に、誤検出を抑えてひび割れ点検の信頼性を向上させるAIフレームワークを開発しました。港湾施設の表面には漂流ごみや汚れなどが多く存在し、従来のAIではこれらをひび割れと誤検出する場合が多く、点検作業の自動化における課題となっていました。本手法では、物体検出と異常検知※1を組み合わせた二段階処理により、誤検出を安定的に低減することが示されました。
本研究成果は、2026年5月7日に国際学術誌「Geomatics」にオンライン掲載されました。

ポイント

  1. 港湾岸壁のドローン画像点検で課題であった漂流ごみや汚れ、表面模様などによる誤検出を抑制する新たなAI処理手法を開発。
  2. 物体検出の後に異常検知を導入することで、ひび割れ候補を再判定し、ひび割れの見落としを抑えつつ誤検出を安定的に低減。
  3. オルソ画像2上に結果を重ね合わせることで、地理情報と連携した点検ワークフローへの展開可能性を提示。

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図:港湾施設(50m x 30m)のオルソ画像上に投影したひび割れ検出結果の比較。
左:元のオルソ画像、中央:従来手法による検出結果、右:異常検知を導入した検出結果。
異常検知により、漂流ごみ(画像中央に集積)や汚れ周辺に発生していた散発的な誤検出が低減されている。
(なお、この図は現場の制約により高度30mから撮影した画像を用いた地理情報連携の例示であり、
主な定量評価は別途、高解像度画像を用いて実施しました。)

<研究者コメント>

本研究では、港湾施設の画像点検で大きな課題となっていた“誤検出の多さ”に着目し、実際の運用に近い条件で信頼性を高めることを重視しました。最先端のモデル性能だけを追うのではなく、現場で“使える”点検技術に近づけることを意識しています。今後は、地理情報との連携やWebシステム化も視野に入れながら、自治体や現場で活用しやすい形での社会実装を目指したいと考えています。

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吉田 大介准教授

研究の背景

高度経済成長期に整備された多くの社会インフラでは老朽化が進んでおり、港湾施設においても効率的な維持管理が求められています。特に岸壁・護岸などの港湾施設は、波浪や飛沫、塩害などの厳しい環境に常時さらされるため、劣化の把握が重要です。
近年はドローンとAIを活用した画像点検技術が注目されていますが、港湾環境では表面に付着した漂流ごみや汚れ、不規則な模様が多く、ひび割れと見た目が似たノイズによる誤検出が大きな課題でした。こうした誤検出は、点検者の確認負担を増やし、実運用上の信頼性を下げる要因となっていました。

研究の内容

本研究では、まず既存の物体検出モデルを用いて、港湾施設のドローン画像からひび割れの可能性がある候補領域を広く抽出しました。その後、それぞれの候補領域を切り出してひび割れの特徴を捉えやすくするための前処理を行い、ViT※3ベースの異常検知モデルに入力するという二段階処理の手法を提案しました。異常検知では、あらかじめ学習した「ひび割れ画像らしい特徴分布」とのずれを評価し、ずれが大きい候補を誤検出として除去します。
実験では、標準的な検出閾値を用いた方法と、より低い閾値で候補を広く抽出する方法の両方について比較しました。その結果、標準閾値による物体検出と異常検知を組み合わせた手法が、ひび割れの見落としを抑えながら誤検出を安定的に低減でき、今回比較した条件の中では、最も安定した性能を示す構成であることが分かりました。
一方で、低閾値で候補を広く抽出し、線状の構造を強調する画像処理(Frangiフィルタ)による前処理と異常検知を組み合わせる手法は、高解像度の条件下(高度約5m)では一部で有効だったものの、飛行高度の上昇に伴い画像解像度が低下すると、その有効性は限定的となることが確認されました。
また、オルソ画像上に検出結果を投影した例では、異常検知を導入した構成により、漂流ごみが集まりやすい領域周辺の散発的な誤検出が減少する様子が視覚的にも確認されました。

期待される効果・今後の展開

本研究成果は、港湾岸壁を主な対象としつつ、護岸などを含む港湾施設のコンクリート構造物に対して、ドローン画像点検の信頼性を高める新たな後処理フレームワークを示したものです。これにより、限られた人員や予算の中でも、港湾施設の維持管理をより効率的に進められる可能性があります。
今後は、撮影条件や画像解像度に応じた異常検知閾値の自動設定や、高高度画像への超解像処理の導入、ドローン画像環境に適したデータセットの活用などを進めることで、さらなる実用化を目指します。

資金情報

本研究は、JST共創の場形成支援プログラム(課題番号:JPMJPF2115)の支援を受けて実施されました。

用語解説

※1異常検知:正常なデータの特徴を学習し、そこから大きく外れるものを異常として判定するAI技術。

※2 オルソ画像:空撮画像の歪みを補正し、地図のように位置情報と対応させて扱える画像。

※3 ViT(Vision Transformer:画像を小さな領域に分割し、それぞれの関係性を学習する深層学習モデル。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Geomatics
【論 文 名】 Improving the Reliability of UAV-Based Crack Inspection of Port Quay Walls Using Anomaly Detection
【著  者】 Masachika Akage, Daisuke Yoshida, Wakana Fujimoto

【掲載URL】https://doi.org/10.3390/geomatics6030046

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院情報学研究科
准教授 吉田 大介(よしだ だいすけ)
TEL:06-6605-3382
E-mail:daisuke[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

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