最新の研究成果

世代統一されたゲージ・ヒッグス大統一理論の構築に成功 ~全ての物質粒子を統一する新理論~

2026年5月27日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院理学研究科 丸 信人教授、名古 竜二朗氏(博士後期課程2年)

概要

素粒子論は、物質をこれ以上分割できない最小の粒子と、それらの間に働く力の仕組みを明らかにすることを目的にしています。本研究グループは、3世代のクォーク※1とレプトン※2が1つの物質粒子に統一されるだけでなく、ヒッグス粒子※3がゲージ粒子※4に統一される6次元SO(20)※5ゲージ・ヒッグス大統一理論※6を構築することに成功しました。

本研究成果は、2026年4月16日に国際学術誌「Progress of Theoretical and Experimental Physics」にオンライン掲載されました。

pr202605_maru01

世代統一されたゲージ・ヒッグス大統一理論の概念図。
色ごとに統一する範囲を示している。 

ポイント

  1. 物質はクォークとレプトンからできており、それらの間には強い力※7・電磁気力※8・弱い力※9が働き、3つの相互作用を媒介するゲージ粒子と、これらの粒子に質量を与えるヒッグス粒子が素粒子として知られている。
  2. クォークとレプトンが質量の違いにより3世代構造を持つが、なぜ3世代構造なのか解明されていなかった。
  3. 本研究では、3世代のクォーク・レプトンが1つの物質粒子に統一されるだけでなく、ヒッグス粒子がゲージ粒子に統一される6次元SO(20)ゲージ・ヒッグス大統一理論を構築することに成功。

<研究者のコメント>

素粒子の世代統一だけでなく、ゲージ粒子とヒッグス粒子の統一も実現する、よりシンプルな統一理論を構築できたことに満足しています。より究極の理論に近づいたと考えられます。今後は実験データを説明・予言できるように理論の改善をさらに進めていきます。

pr202605_maru02丸 信人教授

研究の背景

素粒子論の目的は、分割不可能な物質粒子の存在とこれら物質粒子が受ける相互作用の基本法則を明らかにすることです。現在のところ、クォークとレプトンと呼ばれる物質粒子と、強い力・弱い力・電磁気力の3つの相互作用を媒介するゲージ粒子と、これらの粒子に質量を与えるヒッグス粒子が素粒子として知られています。これらの素粒子と3つの相互作用は「標準模型」として記述されており、実験データを矛盾なく説明しています。しかし、素粒子の数が17種類、相互作用が3種類あることは、より統一的な理論の観点から考えると複雑です。1つの素粒子、1つの相互作用で記述することが期待されている究極の統一理論の構築が、素粒子論研究における重要な研究テーマの1つです。

3つの相互作用およびクォーク・レプトンを統一的に記述する大統一理論※10は従来から研究されており、陽子が崩壊する現象が代表的な予言です。岐阜県神岡鉱山に建設予定の次世代ハイパーカミオカンデ実験においても発見が期待されています。一方、5次元以上の理論に拡張すると、ヒッグス粒子もゲージ粒子に統一されるゲージ・ヒッグス大統一理論(GHU)を本研究グループは研究しており、より大きな統一理論の構築を追求しています。また、標準模型の未解決問題の1つに「世代の謎」があります。クォークとレプトンが質量の違いにより3つの繰り返し(3世代)構造を持ちますが、なぜ3世代構造なのかその起源は解明されていません。

研究の内容

世代の謎を解明する考え方の一つに「世代統一」と呼ばれるものがあります。世代統一では、素粒子標準模型を含む拡張理論において、3世代のクォーク・レプトンが1つの物質粒子としてまとまっている(統一されている)と考えます。

本研究では、3世代のクォーク・レプトンが1つの物質粒子に統一されるだけでなく、ヒッグス粒子がゲージ粒子に統一される6次元SO(20)ゲージ・ヒッグス大統一理論を構築することに成功しました。本研究グループの先行研究で構築した6次元ゲージ・ヒッグス大統一理論では、複数の物質粒子に統一される点が不満足でしたが、本理論ではゲージ対称性を変更することによりその点が改善され、極めてシンプルになりました。

期待される効果・今後の展開

本結果により、唯一残された重力を含めた更なる統一理論構築へのヒントを提供することが期待されます。また、本研究の理論が究極理論の最有力候補である弦理論11から導かれる可能性に新たな道筋を開いたことになります。

今後は、今回構築した6次元理論を用いて、素粒子標準模型には見られないクォーク・レプトンの質量に関する特徴的なパターンの導出、3つ相互作用が統一するエネルギースケールの解析、大統一理論の予言である陽子崩壊の主崩壊モードの予言について研究を進めます。

資金情報

本研究は、JSPS KAKENHI Grant-in-Aid for Scientific Research (C) No. JP25K07304 (丸)、Grant-in-Aid for JSPS Research Fellows (名古)の支援を受けて実施しました。

用語解説

※1 クォーク:原子核を形成する陽子や中性子を構成する6種類の素粒子の総称。

※2 レプトン:電子やニュートリノなどの6種類の素粒子の総称。クォークとともに物質の基本的な構成要素となる。

※3 ヒッグス粒子:素粒子の質量を生成する粒子。

※4 ゲージ粒子:力を伝える粒子。

※5 SO(20):20次元特殊直交群。20次元空間のベクトルの長さを変えない回転対称性。

※6 ゲージ・ヒッグス大統一理論:大統一理論にヒッグス粒子も含め、統一的に記述する高次元理論。

※7 強い力:原子核を構成する陽子や中性子にクォークを閉じ込める力を引き起こす相互作用。

※8 電磁気力:電気による力と磁気による力をまとめた力。

※9 弱い力:β崩壊に代表される原子核を変える反応を引き起こす相互作用。

※10 大統一理論:強い力、電磁気力、弱い力の3つの相互作用を1つの相互作用として、クォーク・レプトンをより少ない素粒子として統一的に記述する理論。

※11 弦理論:分割不可能な基本構成単位が粒子でなく弦と考える理論。全ての素粒子、重力も含めた相互作用を弦の振動で記述する。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Progress of Theoretical and Experimental Physics
【論文名】 Family Unification in a Six Dimensional Theory with an Orthogonal Gauge Group
【著者】 Nobuhito Maru, Ryujiro Nago

【掲載URL】 https://doi.org/10.1093/ptep/ptag064

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科
教授 丸 信人(まる のぶひと)
TEL:06-6605-2539
E-mail:nmaru[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs04