最新の研究成果
患者ニーズの可視化が看護師の意欲を高める~精神科訪問看護における研修の有効性~
2026年6月9日
- 看護学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学大学院看護学研究科精神看護学 河野 あゆみ准教授、松田 光信教授
概要
精神疾患を抱える方への訪問看護は、身体的ケアのような目に見える成果が得にくく、関わり方や支援の意義に迷いや不安を抱える看護師も少なくありません。
本研究グループは、近畿地方の2県に設置されたステーションに所属する訪問看護師39人を対象に、精神科訪問看護における患者ニーズの理解と看護実践の改善を目的とした講義と対話型ワークショップからなるセミナーを実施しました。調査の結果、参加者同士の議論を通じて、実際の支援と患者ニーズの差や課題、改善策を検討し、その効果を評価した結果、参加者の仕事満足度や達成意欲の向上が認められました。
本研究成果は、2026年4月13日に国際学術誌「BMC Medical Education」にオンライン掲載されました。
図:看護師の意欲を高める研修プログラム-模造紙の使用例
ポイント
- 訪問看護師39人を対象に、精神訪問看護における患者ニーズの理解と実践改善を目的としたセミナーを実施。
- 講義と対話を通じた研修により、仕事満足度と達成意欲の向上が確認された。
<研究者のコメント>
私は、精神科看護がより良いものになるための活動や研究に取り組んできました。特に統合失調症患者さんへの看護について着目しています。現在の精神科医療保健福祉の場では、訪問看護師さんの役割が拡大しています。この研究が地域で暮らす統合失調症患者さんへの看護支援の向上につながることを願っています。
研究の背景
昔の日本では、心の病をもつ人は数年~10年以上など、長いあいだ病院に入院して治療を受けることが多くありました。しかし今では、できるだけ入院期間を短くし、地域でふつうの生活を続けながら支援を受けられるようにすることが当たり前になっています。そのために、外来での診療や訪問看護、訪問介護、通所施設の利用など、地域で支える仕組みが整えられてきました。そのような中、訪問看護師は、地域で暮らす心の病をもつ患者を支える大切な役割を担っています。
ところが、心の病を持つ人への訪問看護は、身体の病気のように「血圧を測る」「傷を処置する」といった目に見える支援が少ないことから、訪問看護師は「どう関わればよいのか」「自分の支援は役に立っているのか」と迷いや不安を抱えることが多くあるようです。時には、自信をなくしたり、やりがいを感じにくくなったりする訪問看護師もいます。
そこで私たちは、訪問看護師が自分の看護に自信を持ち、意欲を高められるような教育の仕組みを作れないかと考え、この研究に取り組みました。
研究の内容
この研究では、近畿地方のある地域で働く訪問看護師39人を対象に、患者のニーズ理解と看護実践の改善を目的としたセミナーを実施しました。本セミナーでは、第一に患者が訪問看護にどのような支援を求めているのかを理解すること、第二に現在行っている訪問看護と患者が求めている支援との違いに気づくこと、第三に現状の訪問看護の課題を明らかにし、その解決策を見出すことを目標としました。セミナーは講義と対話型のワークショップの二部構成で行いました。講義では、訪問看護を利用している患者を対象に実施したアンケート調査の結果について、現在受けている支援や今後望む支援の内容を含め、研究者がわかりやすく解説しました。続くワークショップでは、講義で提示した内容をもとに参加者同士で議論を行い、「患者が受けている支援」と「患者が期待している支援」を整理したうえで、その差をどのように埋めていくかについて検討しました。そして、このセミナーが訪問看護師のモチベーションや意欲にどのような影響を与えたのかを、アンケート調査で評価しました。
その結果、セミナーに参加した看護師は、参加前よりも今の仕事への満足感が高まり、「なんでも手がけたことは最善をつくしたい」といった、価値あることを達成したいという気持ちが強くなることがわかりました。
期待される効果・今後の展開
本研究により訪問看護師へのよりよい教育支援方法を検討することができ、今後の訪問看護師の活動の質を高めることになることが見込まれます。
本研究は、特定の地域に限定した活動であり、セミナーを受けていない看護師との比較をしていないことから、他の看護師にも同様の効果をもたらすかどうかはわかりません。今後は、対象地域や対象者の拡大をすることによって、より良いセミナーへと改良することが課題です。
資金情報
本研究は、ユニベール財団の研究助成を受けて実施しました。
掲載誌情報
【発表雑誌】 BMC Medical Education
【論文名】 Evaluation of a program to increase nurses’ motivation for psychiatric visiting care: a pilot study
【著者】 Ayumi Kohno, Mitsunobu Matsuda
【掲載URL】 https://doi.org/10.1186/s12909-026-09086-x
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院看護学研究科精神看護学
准教授 河野 あゆみ(こうの あゆみ)
TEL:06-6645-9087
E-mail:kohno.ayumi[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:橋本
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs