最新の研究成果

犬・猫の腹膜腫瘍におけるCT画像の特徴を解明~中皮腫に特有の分布と遅延造影効果を確認~

2026年6月16日

  • 獣医学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院獣医学研究科 田中 利幸准教授

概要

本研究グループは、犬および猫の原発病変1が特定されていない腹膜2腫瘍症例を対象にCT画像を解析しました。その結果、腫瘍の種類によって、腫瘍が存在する場所に違いがあることを明らかにしました。癌やリンパ腫は臓側や壁側腹膜に広く分布する傾向がみられた一方、中皮腫は全例で壁側腹膜、特に横隔膜付近に局在していました。
また、中皮腫では造影剤を使用したCTにおいて、遅延性造影効果3が確認されました。これらの結果から、腹膜腫瘍の鑑別診断に有用な指標となる可能性が示されました。
本研究成果は、2026年6月4日に国際学術誌「Australian Veterinary Journal」にオンライン掲載されました。

press_0611_tanaka

図:腹膜中皮腫と癌におけるCT画像所見

ポイント

  1. 犬や猫の腹膜腫瘍のうち、癌およびリンパ腫は臓側や壁側腹膜に広く分布する一方で、中皮腫は壁側腹膜のみに局在する傾向がある。
  2. 分布パターンと遅延性造影効果が鑑別診断の手がかりとなる可能性が示された。

<研究者コメント>

腹部に発生した中皮腫は腹水を調べても確定できないことが多く、病変があるかどうかもわからないことが多いです。中皮腫がよく発生する場所が明らかになったことでCT検査だけではなく、超音波検査にも応用できると考えます。

press_0414_tanaka01

田中 利幸准教授

研究の背景

犬や猫の腹膜に発生する原発性腹膜腫瘍は非常に稀であり、その診断方法は十分に確立されていません。腫瘍の一種である中皮腫は、腹膜での発生は比較的少なく、さらに腺癌と形態が類似しているため鑑別が困難です。また、現状では決定的な診断法がなく、確定診断には侵襲的な生検を繰り返し行う必要があるため、非侵襲的な診断法の確立が求められています。
近年、獣医学分野においてCT検査が腫瘍の鑑別に有用であることが報告されていますが、腹膜中皮腫に関するCT所見の蓄積は十分ではありません。また、犬や猫の腹膜中皮腫においては、多くのCT画像において明らかな病変が検出されないケースも報告されています。
そこで本研究では、原発病変が特定されていない腹膜腫瘍症例を対象に、癌、中皮腫、リンパ腫のCT所見を解析し、原発性腹膜腫瘍の診断に役立つ特徴の解明を目指しました。

研究の内容

本研究では、2016年から2025年の間にCT検査を受け、腹膜腫瘍と確定診断された症例のうち、原発病変が認められない12例(犬5例、猫7例)を対象としました。症例は、癌(4)、中皮腫(5)、リンパ腫(3)に分類され、これらのCT画像を用いてその特徴を解析しました。
その結果、腫瘍の発生部位に特徴的な違いが認められました。癌では臓側腹膜のみに存在する例が1例、壁側腹膜と臓側腹膜の両方に存在する例が3例みられました。リンパ腫でも、臓側腹膜に存在する例が1例、壁側腹膜に存在する例が2例みられ、比較的広範囲に分布する傾向が確認されました。一方、中皮腫では全例で壁側腹膜に腫瘍が認められ、そのうちの4例は横隔膜に腫瘍が存在していました。
さらに、中皮腫では造影CTにおいて、遅延性造影効果が確認されました。一方で、腫瘍の形状、造影剤投与後の画像の写り方、リンパ節の腫れ、腹水の有無、石灰化の有無については、腫瘍の種類による明確な差は認められませんでした。
これらの結果から、中皮腫は横隔膜を含む壁側腹膜に局在しやすく、さらに遅延性造影効果を示すという特徴が明らかとなりました。これらの所見は、腹膜腫瘍の診断および鑑別に有用である可能性があります。

期待される効果・今後の展開

本研究により、腹膜腫瘍におけるCT所見の特徴が明らかとなったことで、腹膜腫瘍を疑う際に注意すべきポイントが示されました。特に中皮腫がよく発生する場所が明らかになったことで、CT検査だけでなく、超音波検査においても重点的に評価すべき部位に関する有用な知見が得られました。しかしながら、本研究は症例数が限られていることから、今後はさらに多くの症例を対象とした検討が必要であると考えられます。

用語解説

※1 原発病変:他の臓器に腫瘍の発生源が確認されていない状態。

※2 腹膜:腹腔内を覆う膜で、臓側腹膜と壁側腹膜に分けられる。臓側腹膜は内臓の表面を覆う膜であり、壁側腹膜は腹壁、横隔膜、骨盤腔の内面を覆っている。

※3 遅延性造影効果:造影剤投与後、時間の経過とともに腫瘍がより強くCT画像に描出される現象。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Australian Veterinary Journal
【論文名】 Computed tomography findings of peritoneal tumor in the absence of primary lesions: preliminary study
【著者】 Toshiyuki Tanaka, Mizuki Tomihari, Takashi Hasegawa

【掲載URL】https://doi.org/10.1111/avj.70101

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院獣医学研究科
准教授 田中 利幸(たなか としゆき)
TEL:072-463-5457
E-mail:t-tanaka[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs04