最新の研究成果

色付きプラスチックの持続可能なリサイクル方法を提案 ~着色カプセルを用いた色付きプラスチックを開発~

2026年7月2日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院工学研究科 髙橋 雅英教授、岡田 健司准教授、深津 亜里紗助教、岩林 弘久氏(研究当時 大学院生)、冨士色素株式会社 森 良平氏

概要

色付きのプラスチックは、トレーやスプーンなど日常的に大量に使用されており、ごみの削減や資源の節約のために、低コストで質の良いリサイクル技術の開発が重要な課題です。

本研究グループは、直径約46マイクロメートル(μm)のシリカ※1粒子に、着色剤を内包して「色カプセル」を作る技術を開発しました。この色カプセルを無色のプラスチックに混ぜることで、色鮮やかなプラスチックが作成できます。また、この色付きプラスチックは、溶媒※2に溶かして色カプセルと無色のプラスチックに分離できるため、複数回リサイクルすることが可能です。

本研究成果は、2026年7月2日に国際学術誌「Green Chemistry」にオンライン掲載されました。

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図1 本研究における色カプセルを用いた
色付きプラスチックの循環利用のイメージ。

ポイント

  1. 直径約46μmのシリカ粒子に、着色剤を内包して「色カプセル」を作る技術を開発
  2. 色ごとにサイズを変えて色カプセルを作成し、その色カプセルを無色のプラスチックに混ぜることで、色鮮やかなプラスチックを作ることが可能。
  3. 色付きプラスチックを溶媒に溶かし、ふるいにかけることで、無色のプラスチックと色カプセルに分別できる。
  4. 複数回リサイクルしても、劣化は見られなかった。

<研究者のコメント>

過去の研究では、耐水性・耐薬品性・耐酸素性に優れたシリカ粉末(小さなガラス玉)を複雑な工程を経ず作成することに成功しました。これに着色剤を添加した粉末を樹脂のリサイクルに応用した再生循環ができないかという思いから、今回の研究成果となりました。

pr20260630_oka03岩林 弘久氏

研究の背景

色鮮やかなプラスチックの容器やスプーンなどは日常的に使用されており、環境保護のためにプラスチックのリサイクルが強く求められています。しかし、従来のプラスチック製品は、染料や顔料などの着色剤が、プラスチック材料の中にミクロレベル(分子の大きさ程度)で混ざっているため、色の成分を分離することは困難です。そのため、リサイクルにおいて、さまざまな色が混在した状態になり、最終的に灰色や黒色などの濁った色のプラスチックにしか再生できません。これはダウンサイクル※3と呼ばれ、再利用の用途が限られてしまうため、プラスチックの循環を妨げる大きな原因となっています。

これまでにも、化学的にプラスチックを分解して着色剤を取り出す、化学リサイクルという方法が研究されてきましたが、約300℃500℃の非常に高い温度での処理が必要で、莫大なエネルギーがかかることが課題でした。そのため、過剰なエネルギーを使わずに、色付きプラスチックから着色剤を分離してプラスチックを再生するアップサイクル※4の技術が望まれています。

研究の内容

本研究では、着色剤をシリカと呼ばれる直径46μm(髪の毛の太さの10分の1以下)の、小さなカプセルの中に閉じ込める技術を開発しました。シリカは砂やガラスの主成分で、熱や薬品に非常に強く、250℃という加工の熱にも耐えられます。そして、この「色カプセル」をプラスチックに混ぜることで、色鮮やかなプラスチックを作ることに成功しました(図2)。

本研究で開発した色付きプラスチックをリサイクルする際は、まず、マニキュアの除光液などにも使用されているアセトン溶液にプラスチック製品を入れ、プラスチックを溶かします。そして、この溶液を遠心分離機にかけ、透明なプラスチック溶液と色カプセルを分離させます。その結果、それぞれほぼ100%回収することに成功しました。

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図2 開発した色付きプラスチックとリサイクル実験の様子

(左)鮮やかに着色されたプラスチック製品:開発した色カプセルを混ぜて作成した、ネコやイヌ、星などの形状のプラスチック製品。(中央)リサイクル実験で溶媒に溶けるスプーン:赤色のスプーンをアセトン溶液に入れ、室温において、時間をかけて溶解していく様子。(右上)ほぼ100%分離・回収された色の成分:溶液を遠心分離機にかけると赤色と青色のカプセル(粉末)が回収される。(右下)再生されたプラスチック:色の成分が取り出され、高純度で新品同様の透明プラスチックの破片(フレーク)が再生される。


さらに、色ごとにカプセルの大きさを変えるサイズコード化という手法を取り入れ、黄色のカプセルは大きく、赤色のカプセルは小さく作りました。そして、この2色のカプセルの分類実験では、2色混在したプラスチックをアセトンに溶かした後、ふるい(メッシュ)に通すことで、黄色のカプセルと赤色のカプセルを別々に回収することに成功しました(図3)。また、回収した無色のプラスチックと色カプセルで、プラスチック製品を3世代にわたって繰り返し作成したところ、色、品質とも全く劣化しないことが実証できました。

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図3 色カプセルの大きさの違いを利用した2色の分類実験

(上)2色混合のプラスチック:色カプセルの大きさが異なる赤色と黄色が混ざったプラスチック製品。

(中央)溶媒への溶解:アセトン溶液に入れると、プラスチックだけが溶けカプセルが分離する。

(下)ふるいによる色分け:色カプセルの大きさの違いを利用し、ふるいにかけることで、2色を仕分けて回収可能。

期待される効果・今後の展開

本研究の技術により、これまでは廃棄または、黒色のプラスチックとして再利用するのみであった使用済みの色付きプラスチック製品を、何度も新品同様の価値のある資源として利用することが可能になります。

また、このリサイクル方法は室温でプラスチックを溶かし、溶剤を蒸発させて回収するだけのため、従来の分解リサイクル技術に比べ、エネルギー使用量が少なく、環境に優しいプロセスであることも数学的に証明しました。さらに、使用済みの色カプセルを500℃で加熱すると、中身の着色剤は燃え、自然界に存在する安全なシリカ(砂の成分)だけが残るため、環境に有害なごみが一切出ません。

今後は、お弁当のパック(ポリスチレン)やアクリル樹脂(PMMA)だけでなく、ペットボトル(PET)やポリ袋(ポリエチレン)など、日常生活で大量に使われているプラスチックへの応用も期待されます。将来的には、国内外のプラスチック製造・リサイクル企業との連携が進むことで、地球に優しい色カプセルが循環するリサイクル社会の実現が期待されます。

資金情報

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)「超セラミックス」(課題番号:JP22H05142、JP22H05144)、および科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業(FOREST)(課題番号:JPMJFR235Q)の支援を受けて実施しました。

用語解説

※1 シリカ:二酸化ケイ素(SiO2)のこと。地球の地殻に大量に存在する物質で、砂や海岸の砂浜、ガラスなどの主成分。化学的に非常に安定しており、人体や環境に対して無害な安全性の高い材料である。

※2 溶媒:物質を溶かすための液体のこと。身近な例では、水や、マニキュアを落とす除光液(アセトン)などがある。本研究で用いたアセトンは、国際的な安全基準(CHEM21などの溶媒ガイド)において、毒性が低く環境中で分解されやすい「推奨されるグリーン溶媒」に分類されており、環境に優しい材料である。

※3 ダウンサイクル:リサイクルの一種。元の製品よりも品質や価値が下がったものに生まれ変わること。色付きプラスチックの場合、混ぜ合わせることで色が濁るため、灰色のゴミ袋や建築資材など、一度しか再利用できない価値の低いものになることが多い。

※4 アップサイクル:元の製品よりも価値を高めたり、同等の品質を維持したまま別の製品に生まれ変わらせたりするサステナブルなリサイクル。今回の技術では、色鮮やかなプラスチックから新品同様の透明プラスチックと色カプセルが分離できるため、これに該当する。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Green Chemistry
【論文名】 Sustainable and Recyclable Polymer Coloring System via Size-Tunable, Pigment-Encapsulated Silica Microspheres: Enabling Circular Economy of Plastics
【著者】 Hirohisa Iwabayashi, Kenji Okada,* Arisa Fukatsu, Ryohei Mori, Masahide Takahashi*

【掲載URL https://doi.org/10.1039/D6GC02002J

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
教授 髙橋 雅英(たかはし まさひで)
准教授 岡田 健司(おかだ けんじ)
TEL:072-254-9309

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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