最新の研究成果
規格外ココナッツから航空用バイオ燃料を開発 ~持続可能な航空燃料(SAF)実現に向けた燃焼評価を実施~
2026年7月9日
- 工学研究科
- 現代システム科学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学大学院工学研究科 小川 秦一郎講師
大阪公立大学大学院現代システム科学研究科 グエン フイン プオン ウィエン客員研究員
概要
二酸化炭素排出量削減の手段として、持続可能な航空燃料(SAF)※1の需要が高まっているなか、東南アジアでは全収穫量の約30%にあたる規格外ココナッツ※2が廃棄されており、これらをバイオ燃料の原料として利用する取り組みが期待されています。本研究では、常温・常圧環境下で高純度なバイオ燃料を製造できる共溶媒法※3を用い、ココナッツ油由来のバイオ燃料を製造しました。これを航空用燃料として燃焼試験を実施した結果、既存の航空用ガスタービンエンジン※4に利用できるバイオ燃料候補であることが示されました。
本研究成果は、2026年6月8日に国際学術誌「Fuel」にオンライン掲載されました。
図1 ココナッツ油由来のバイオ燃料
ポイント
- 本研究グループが開発している、常温・常圧環境下で不純物の少ない高純度なバイオ燃料を製造できる共溶媒法を利用し、ココナッツ油由来のバイオ燃料を製造した。
- このバイオ燃料を航空用燃料として用い、燃焼試験を実施。燃料消費率、熱効率、排気ガス成分を評価した。
- 既存の航空用ガスタービンエンジンに利用できる有望なバイオ燃料候補であることが示された。
<研究者のコメント>
東南アジアで大量に廃棄されている規格外ココナッツを原料として、本研究グループが研究開発したバイオ燃料製造技術を実証し、航空用ガスタービンエンジンへの適用の可能性を確認できたことは大きな成果です。今後は環境影響評価や実用化に向けた研究をさらに加速させていきます。
小川 秦一郎講師
本研究は、熱帯地域におけるココナッツ農業産業にとって非常に重要な意義があります。規格外ココナッツを原料として持続可能な航空燃料(SAF)を開発・製造することで、現地農家の経済状況の改善に貢献できるだけでなく、SAF生産における原料不足の解消にも寄与することが期待されます。
グエン フイン プオン ウィエン氏
研究の背景
航空分野では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、持続可能な航空燃料(SAF)の導入が急がれています。現在実用化が進んでいるSAFの多くは、バイオ燃料製造過程において水素化処理や高温高圧反応を必要としており、製造時のエネルギー消費やCO2排出が課題となっています。このような背景から、燃料製造から利用までを含めたライフサイクル全体での環境負荷低減が求められているため、低エネルギーで製造可能な新たなバイオ燃料製造技術の開発が重要な研究課題となっています。また、バイオ燃料の原料として国内では廃食用油の利用が進められていますが、原料不足や価格高騰の影響で、新たな原料の確保と多様化が求められています。
東南アジアではココナッツ全収穫量の約30%が規格外として廃棄されており、ココナッツは脂質含有量が高いことからバイオ燃料原料としての利用可能性が高く、原料多様化への貢献が期待できます。また、本研究グループが開発している共溶媒法では、常温・常圧環境下で不純物の少ない高純度なバイオ燃料を製造できるため、製造時のエネルギー消費を大幅に削減できることが期待されています。しかし、この方法で製造されたバイオ燃料を航空用ガスタービンエンジンに適用した場合の燃焼特性や排気ガス特性については十分に明らかにされていませんでした。
研究の内容
本研究では、本研究グループが研究開発している共溶媒法を利用した5Lのバイオ燃料製造装置(図2)を用いてココナッツ油由来のバイオ燃料(純度97%以上)を製造しました。このバイオ燃料を航空用燃料として用い、小型ターボジェットエンジン※5(図3)による燃焼試験を実施しました。従来の化石燃料由来のジェット燃料(Jet A-1)との混合率を10~50%まで変化させ、燃料消費率(Specific Fuel Consumption、SFC)、熱効率、排気ガス成分(HC、 CO、CO2、NO)を評価しました。
その結果、バイオ燃料混合率の増加によりSFCは最大約20%増加しましたが、これは両燃料間の発熱量の差に起因するものと考えられました。一方、熱効率はJet A-1と同等であり、バイオ燃料混合によるエンジンの熱効率への影響は小さいことが確認されました。また、ジェットエンジンからの排気ガス特性の調査結果より、HC濃度は低減し、CO濃度はわずかに増加しましたが、温室効果ガスの主要因であるCO2濃度およびNO濃度に顕著な変化は認められませんでした。この結果から、共溶媒法により製造したココナッツ由来のバイオ燃料は、既存の航空用ガスタービンエンジンに適用可能な有望なバイオ燃料候補であることが示されました。
図2 バイオ燃料製造装置
図3 小型ターボジェットエンジン
期待される効果・今後の展開
本研究成果は、航空分野におけるCO2排出量削減と、共溶媒法による製造エネルギーの削減を通じたバイオ燃料の低コスト化に貢献することが期待されます。特に、東南アジア地域で豊富に存在する規格外ココナッツ資源を活用することで、地域循環型の燃料生産システムの構築が可能となります。また、共溶媒法は従来法に比べて製造エネルギーを低減できるため、ライフサイクル全体での温室効果ガス削減効果も期待されます。
現在は、燃料消費率の改善および100%バイオ燃料でのエンジン運転技術の確立に取り組んでおり、さらに、今後は燃料の長期保存安定性、材料適合性及びライフサイクルアセスメント(LCA)による環境影響評価を実施することで、航空分野への実用化を目指します。
資金情報
本研究は、大阪市イノベーション創出支援補助金の支援を受けて実施しました。
用語解説
※1 持続可能な航空燃料(SAF):Sustainable Aviation Fuelの略称。廃食用油、バイオマス、都市ごみなどを原料に生産される航空用バイオ燃料である。従来の化石燃料と比較してCO2排出量を最大で約80%削減でき、既存の航空機エンジンやインフラをそのまま利用できるのが特徴である。
※2 規格外ココナッツ:ココナッツ栽培では未成熟果・発芽果・割れ果・腐敗果など食用に適さない規格外ココナッツが全生産量の約30%発生する。これらが埋め立て廃棄や放置によって腐敗する過程では、CO2と比較して地球温暖化係数が約27~30倍に達するメタンガスが発生するため、廃棄による温室効果への影響が懸念されている。
※3 共溶媒法:本来混合しないアルコールと油脂にアセトンを10体積パーセント(vol%)添加することで両者を完全均一に混合し,石鹸の生成を伴わず反応させることができる製造方法である。
※4 航空用ガスタービンエンジン:空気を遠心圧縮機で圧縮し、圧縮した空気を燃焼器内で燃料と混合し燃焼させて高温・高圧のガスを発生させる。このガスをタービンで膨張させて得られる回転エネルギーによって推力や軸出力を生み出す、連続燃焼式の熱機関である。航空用ガスタービンエンジンは、ターボファンエンジン、ターボジェットエンジン、ターボプロップエンジン、ターボシャフトエンジンに分類される。
※5 ターボジェットエンジン:ジェット噴流を利用して推力を得る最も基本的な形式の航空用ガスタービンであり、圧縮機、燃焼器、タービン、ノズルで構成されており、最も簡単な構造となっている。
掲載誌情報
【発表雑誌】 Fuel
【論文名】 Combustion and emission characteristics of aviation biofuel derived from coconut oil using the co-solvent method: toward eco-friendly micro jet engines
【著者】 Shinichiro Ogawa, Takuto Hongo, Yasuaki Maeda, Huynh Phuong Uyen Nguyen, Koichi Mori
【掲載URL】 https://doi.org/10.1016/j.fuel.2026.140208
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院工学研究科
講師 小川 秦一郎(おがわ しんいちろう)
TEL:072-254-9237
E-mail:shinichiro.ogawa[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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