最新の研究成果
RSVワクチン接種につながる医療情報源を明らかに ~高齢者8,300人を対象とした調査から判明~
2026年8月3日
- 医学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学大学院医学研究科呼吸器内科学 堤 将也氏(博士課程4年)、山田 一宏講師、浅井 一久准教授、川口 知哉教授
概要
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症は、乳幼児の感染症として広く知られていますが、高齢者においても重篤化することが近年明らかになっています。日本では、2024年からRSVワクチンが実用化されましたが、認知度は極めて低く、接種率向上が課題となっています。
本研究グループは、RSVワクチン接種と関連する要因を明らかにするため、60歳以上の高齢者8,300人の調査データを解析しました。その結果、職場や学校、医療従事者からの医療情報に加え、大学などの研究機関のWebサイトやメッセージアプリ、雑誌から医療情報を得ていることが、RSVワクチン接種の有無と関連していることが明らかになりました。
本研究成果は、2026年7月25日に国際学術誌「Respiratory Investigation」にオンライン掲載されました。
ポイント
- 全国規模のインターネット調査「Japan COVID-19 and Society Internet Survey(JACSIS)2024」に参加した60歳以上の男女8,300人を対象に、RSVワクチン接種に関連する要因を解析した。
- 職場や学校、医療従事者から医療情報を得ていることに加え、大学などの研究機関のWebサイトやメッセージアプリ、雑誌から医療情報を得ていることがRSVワクチン接種の有無と関連しており、関連の強さは情報源の種類によって異なることが示唆された。
- 医療従事者による個別的な接種勧奨と、メッセージアプリなどを活用した幅広い情報発信を組み合わせることで、高齢者におけるRSVワクチン接種率向上につながる可能性が示された。
<研究者コメント>
高齢化が進んだ日本においてRSV感染症がもたらす社会的な影響は大きく、ワクチン接種による予防は極めて重要です。本研究では、ワクチン接種と関連する医療情報源を明らかにしました。この結果が、有効な医療情報の発信経路や方法の確立に寄与し、RSVワクチン接種率の向上、ひいては日本人の健康維持に繋がることを期待しています。
堤 将也氏
研究の背景
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、一般に「RSウイルス」とも呼ばれる呼吸器疾患を引き起こすウイルスであり、これまで主に乳幼児への影響が広く知られていました。しかし近年では、高齢者においても重篤な感染症を引き起こすことが明らかとなっています。一方で、RSV感染症に対する確立された直接的な治療法はまだありません。
近年、RSVワクチンがRSV感染症の発症率や発症後の入院率、死亡率を低下させることが報告されており、日本においても2024年にRSVワクチンが実用化されました。しかし、日本ではRSV感染症やRSVワクチンに対する認知度が依然として低く、ワクチン接種率も低水準にとどまっていることから、接種推進が課題となっています。
また、新型コロナウイルス感染症の流行を経て、人々のワクチンに対する意識や医療情報の収集・活用方法が変化した可能性が指摘されています。こうした変化は、ワクチン接種に関連する要因にも影響している可能性があります。ワクチン接種を促進する要因については、これまで他の感染症ワクチンを対象とした研究が行われてきましたが、RSVワクチンに関しては、新型コロナウイルス感染症流行後の接種意向や接種行動に関連する要因を検討した研究報告は十分に蓄積されていません。
研究の内容
本研究では、RSVワクチン接種を促進する要因を明らかにするため、2024年12月から2025年1月に実施された全国規模のインターネットアンケート調査「the Japan COVID-19 and Society Internet Survey(JACSIS)2024」に参加した60歳以上の適正回答者8,300人を対象に、多変量ロジスティック解析※1を行いました。解析の結果、RSVワクチン接種の有無は、対人的な情報源として、職場・学校や医療従事者から医療情報を得ていることに加え、メディア関連の情報源として、大学などの研究機関のWebサイトやメッセージアプリ、雑誌から医療情報を得ていることと関連していました。一方で、その他の多くの情報源では明確な関連は認められませんでした。
これらの結果は、情報源の種類によってワクチン接種の推進への寄与の度合いが異なる可能性を示唆しています。
期待される効果・今後の展開
本研究では、RSVワクチン接種と関連する医療情報源の種類を明らかにしました。特に、医療従事者からの推奨は、接種が望ましい人へワクチン接種を後押しする上で重要な役割を果たす可能性が示されました。また、メッセージアプリなどのプッシュ型※2の情報伝達手段は、RSVに関する知識を多くの人々に普及する手段として有用な可能性があります。今後は、有用な可能性が示された医療情報の伝達手段を活用したワクチン接種推進の効果について詳細に検証し、その成果を踏まえた公衆衛生施策への展開が期待されます。
資金情報
本研究は、厚生労働省科学研究費補助金(23FA1004)、科学研究費助成事業(JP21H04856, JP25H01079,JP23K07631)の支援を受けて実施しました。
用語解説
※1 多変量ロジスティック解析:複数の説明変数(それぞれの医療情報源)が目的変数(RSVワクチン接種の有無) に与える影響を調べる解析。
※2 プッシュ型:発信者が受信者に能動的に情報を届ける方式。
掲載誌情報
【発表雑誌】 Respiratory Investigation
【論文名】 Association between respiratory syncytial virus vaccination and medical information sources among Japanese older adults in the post-COVID-19 era: a JACSIS 2024 cross-sectional study
【著者】 Masaya Tsutsumi, Kazuhiro Yamada, Kazuhisa Asai, Kentaro Ueno, Yuri Oshima, Takahiro Ueda, Kaho Hirai, Erika Toyokura, Yuichiro Furukawa, Atsushi Miyamoto, Tetsuya Watanabe, Takahiro Tabuchi, Tomoya Kawaguchi
【掲載URL】 https://doi.org/10.1016/j.resinv.2026.101475
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科呼吸器内科学
准教授 浅井 一久(あさい かずひさ)
TEL:06-6645-3916
E-mail:kazuasai[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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