最新の研究成果
ナスのおいしさは調理法で変わる~揚げ調理による渋味の感じにくさと風味の向上が嗜好性に寄与~
2026年9月8日
- 生活科学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学大学院生活科学研究科 石橋 ちなみ講師、竹中 重雄教授、岡本 さゆり氏(博士前期課程2年)
概要
本研究グループは、ナスを「ゆでる」「蒸す」「揚げる」「過熱水蒸気※1で加熱する」の4種類の方法で調理し、糖度やポリフェノール量、色、硬さなどを測定するとともに、55名の男女を対象に官能評価を実施しました。
その結果、「揚げたナス」が、最もおいしいと評価され、渋味を感じた人が最も少ない調理法であることが示されました。一方で、渋味成分であるポリフェノール量は、調理法によってほとんど変化しなかったことから、揚げ調理によって渋味の感じ方が弱まったと考えられます。
本研究成果は、2026年8月5日に国際学術誌「International Journal of Gastronomy and Food Science」にオンライン掲載されました。

ポイント
- 揚げたナスは、「甘い」「香ばしい」「油の風味がある」と評価され、「渋味」を感じにくい。
- 「渋味」に影響のあるポリフェノール量は調理法によってほとんど変化せず、調理による味の感じ方の変化が嗜好性に影響した可能性を示した。
- 過熱水蒸気調理は、ナスをやわらかくしながら果肉と果皮の色を良好に保持した。
<研究者コメント>
本研究では、揚げ調理によってナスの渋味が感じにくくなるなど、調理が味の感じ方に影響することが明らかになりました。「おいしい」と感じる理由を科学的に明らかにすることは、野菜をよりおいしく食べる調理法の開発につながります。野菜を「おいしいから食べたい」と思える食環境づくりに貢献したいと考えています。

石橋 ちなみ講師
研究の背景
野菜は積極的に摂取すべき食品の一つですが、野菜には苦味や渋味があり、好まれないことが多くあります。野菜を積極的に食べるためには「健康に良いから食べる」だけではなく、「おいしいから食べる」ということも重要です。野菜は調理法によっておいしさが大きく変化するため、調理の仕方を工夫することで野菜のおいしさを向上させることは可能であると考えられます。
ナスは世界中で食べられている野菜で、日本でも煮る、蒸す、揚げるなどさまざまな調理法で利用されています。これまでの研究では、調理によってナスの栄養成分や機能性成分がどのように変化するかは調べられてきましたが、「どの調理法が最もおいしいと感じられるのか」や、「おいしさを決める要因は何か」については十分に分かっていませんでした。
そこで本研究では、ナスをさまざまな方法で調理し、ナスのおいしさに寄与する官能特性を明らかにすることを目的としました。
研究の内容
本研究では、ナスを「ゆでる」「蒸す」「揚げる」「過熱水蒸気で加熱する」の4種類の方法で加熱した後、糖度やポリフェノール量、色の変化、硬さなどを測定しました。さらに、男女55人を対象に官能評価を行い、嗜好性評価によって各調理法の好ましさを、CATA(Check-All-That-Apply)法※2によってナスを食べたときに感じられる官能特性を評価しました。
その結果、最もおいしいと評価されたのは「揚げたナス」でした。揚げたナスは、「甘い」「香ばしい」「油の風味がある」と評価され、「渋味」を感じにくいことが分かりました。一方で、渋味成分であるポリフェノール量は調理法によってほとんど変化しなかったことから、揚げ調理によって渋味の感じ方が弱まったと考えられます。つまり、成分そのものが減少したのではなく、調理によって味の感じ方が変化したことが示されました。
また、「ゆでる」「蒸す」「過熱水蒸気」で調理したナスは、「甘味」が感じられると好まれ、「渋味」が感じられると好まれないことが明らかになりました。さらに、過熱水蒸気で調理したナスは、果肉をやわらかくしながら明るい色を保ち、皮の鮮やかな紫色も維持できることが分かりました。
期待される効果・今後の展開
本研究は、野菜をおいしく調理するための科学的な手がかりを示した点に大きな意義があります。特に、ナスのおいしさを高めるためには、甘味を感じやすくし、渋味を感じにくくすることが重要であると示されました。
また、本研究により揚げ調理はおいしさの面で非常に優れていることが示されました。しかし、油を多く使用するため、健康面への配慮が必要です。そのため、油の使用量を抑えながらも、揚げ物のようなおいしさを実現できる調理法の開発が期待されます。
さらに、ナスをやわらかくしながら鮮やかな色を保てる過熱水蒸気調理は、給食施設や食品工場などで活用されることで、見た目が良く、健康的でおいしい野菜料理の開発につながる可能性があります。
将来的には、本研究で得られた知見をナス以外の野菜にも応用することで、野菜をよりおいしく食べられる調理法の開発や、若年層の野菜摂取量の向上につながることが期待されます。
用語解説
※1 過熱水蒸気:100℃で蒸発した飽和水蒸気を常圧で100℃以上に加熱した気体状態の水で、乾燥・焙煎処理や殺菌、酵素の不活化などに用いられている。近年では、高い加熱能力をもつ過熱水蒸気の特性を利用した調理・加工技術が注目されている。
※2 CATA(Check-All-That-Apply)法:官能評価手法の一つ。複数の評価用語からなるリストの中から試料の特徴を表すと思う用語をチェックし、試料の特性を明らかにする方法。
掲載誌情報
【発表雑誌】 International Journal of Gastronomy and Food Science
【論文名】 Effects of domestic and superheated steam cooking methods on physicochemical and sensory characteristics of purple eggplant (Solanum melongena L.)
【著者】 Chinami Ishibashi, Sayuri Okamoto, Wakana Matsumura, Yuri Yoshida, Shigeo Takenaka
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.ijgfs.2026.101616
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院生活科学研究科
講師 石橋 ちなみ(いしばし ちなみ)
TEL:06-6167-1367
E-mail:cishibashi[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs