最新の研究成果
嚥下調整食における「料理らしさ」の重要性を検証~見た目や料理らしさも総合評価に影響することが明らかに~
2026年9月9日
- 生活科学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学大学院生活科学研究科 松本 佳也准教授、石橋 ちなみ講師、長井 優佳氏(博士前期課程2年)
概要
本研究グループは、栄養学を学ぶ大学生を対象に、通常の料理に近い見た目を再現した嚥下調整食(通常食型嚥下調整食)と、それをペースト状にした嚥下調整食(ペースト状嚥下調整食)の官能評価を行いました。
その結果、嚥下調整食は、食べやすさだけでなく、料理本来の見た目や料理らしさも、総合的な評価に関わる重要な要素であることが示されました。
本研究成果は、2026年8月31日に国際学術誌「Discover Food」にオンライン掲載されました。

図:通常食型嚥下調整食とペースト状嚥下調整食の比較
ポイント
- 通常食型嚥下調整食は、見た目、料理らしさ、総合評価において、ペースト状嚥下調整食より高い評価を得た。
- ペースト状嚥下調整食は、つぶしやすさ、なめらかさに優れており、食べやすさの面で評価された。
- 嚥下調整食は、食べやすさだけでなく、料理本来の見た目や料理らしさも、総合的な評価に関わる重要な要素であることが示された。
<研究者コメント>
嚥下調整食を必要とする方だけでなく、ともに食卓を囲むご家族や周囲の方にとっても、食事を楽しめることは大切です。本研究を通じて、安全性だけでなく「食べる楽しみ」を大切にした嚥下調整食の普及につなげたいと考えています。

松本 佳也准教授
研究の背景
加齢や病気などにより飲み込む力が低下した人には、噛みやすさや飲み込みやすさを考慮した「嚥下調整食」が提供されます。一方で、嚥下調整食では、食べやすくするための調理や加工によって、料理本来の見た目や、その料理らしさが失われてしまうことがあります。食事の見た目や料理らしさは、食欲や「おいしそう」と感じる気持ちにも影響する重要な要素であり、嚥下調整食においても、食事を楽しむ上で重要な役割をもつと考えられます。近年では、噛みやすさや飲み込みやすさに配慮した上で、通常の料理に近い見た目を再現した嚥下調整食も開発されています。しかし、このような見た目を再現した嚥下調整食が、従来の嚥下調整食と比べてどのように感じられるのか、また、その評価にどのような要素が関わっているのかは、十分に明らかになっていません。
本研究では、見た目の異なる2種類の嚥下調整食を比較するとともに、嚥下調整食の総合評価に関わる要因を調べました。
研究の内容
本研究では、栄養学を学ぶ大学生42人を対象に、ビーフステーキとさばの味噌煮について、通常の料理に近い見た目を再現した嚥下調整食(通常食型嚥下調整食)と、それをペースト状にした嚥下調整食(ペースト状嚥下調整食)の官能評価を行いました。官能評価では、見た目、味、風味、口の中でのつぶしやすさ、なめらかさ、料理らしさ、総合的な評価などを回答項目としました。また、食品の硬さなどの物性を測定するとともに、各評価項目の関係や自由記述の内容についても分析しました。
その結果、通常食型嚥下調整食は、ペースト状嚥下調整食と比べて、見た目、料理らしさ、総合的な評価が高い傾向を示しました。一方、ペースト状嚥下調整食は、口の中でのつぶしやすさやなめらかさが高い傾向を示しました。また、嚥下調整食としての総合的な評価に関わる要因を分析したところ、味や風味に加えて、見た目や料理らしさが重要であることが示されました。
さらに、各評価項目の関係を分析したところ、見た目や料理らしさ、味、風味などのさまざまな要素が互いに関連していることが示されました。自由記述の分析では、通常食型嚥下調整食では、料理の再現性や調理法に関する言葉が特徴的にみられ、ペースト状嚥下調整食では、否定的な印象を表す言葉が特徴的にみられました。
これらの結果から、嚥下調整食では、食べやすさだけでなく、料理本来の見た目や料理らしさも、総合的な評価に関わる重要な要素であることが示されました。
期待される効果・今後の展開
本研究成果により、嚥下調整食では、噛みやすさや飲み込みやすさだけでなく、見た目、料理らしさ、味、風味などを総合的に設計・評価することが重要であると示されました。こうした視点を嚥下調整食の開発・提供に活用することで、「食べる楽しみ」にも配慮した嚥下調整食の普及につながることが期待されます。
しかし、本研究は若年者を対象としているため、今後は高齢者や嚥下機能が低下した方など、実際に嚥下調整食を必要とする方を対象に検証を進め、安全性と食べる楽しみを両立した嚥下調整食のあり方を検討していく必要があります。
資金情報
本研究は、株式会社ナコム(https://hokkodeli.jp/care_food/)との共同研究として、同社の支援を受けて実施しました。
掲載誌情報
【発表雑誌】 Discover Food
【論文名】 Comparison of the sensory characteristics of regular appearance texture-modified and pureed foods and identification of factors associated with overall acceptability
【著者】 Chinami Ishibashi, Yuka Nagai, Sayuri Okamoto, Sayo Gamo, Yoshinari Matsumoto
【掲載URL】https://doi.org/10.1007/s44187-026-01247-7
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院生活科学研究科
准教授 松本 佳也(まつもと よしなり)
TEL:06-6167-1307
E-mail:y-matsumoto[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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