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遠赤色光が少ない環境では苗の生育差が拡大 ~高密度育苗における光獲得と苗の均一性の関係を明らかに~

2026年9月16日

  • 農学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院農学研究科 西村 有可里氏(博士前期課程1年)、渋谷 俊夫教授、遠藤 良輔准教授、松田 ひかる氏(研究当時:大阪府立大学学士課程4年)

概要

本研究グループは、ヒマワリを高密度に育苗する環境において、20 mmの高低差がつくように苗を交互に配置し、遠赤色光を含む照射光と、遠赤色光を含まない照射光のそれぞれの下で、苗の成長や個体間のばらつきなどを比較しました。その結果、遠赤色光を含む照射光下では、個体間の大きさのばらつきは小さくなりましたが、茎の伸長が大きくなり、光合成産物の葉への分配が少なくなることが分かりました。一方、遠赤色光を含まない照射光下では、初期に高い位置に配置した苗ほど多くの光を受けて成長し、低い位置に配置した苗との成長の差が大きくなりました。本研究結果により、集団としての均一性と個々の苗の品質との間にはトレードオフの関係があることが示されました。

本研究成果は、2026年8月21日に国際学術誌「Scientia Horticulturae」にオンライン掲載されました。

pr202608_shibuya01l図1 ヒマワリ苗に高低差をつけて高密度で育成する様子

ポイント

  1. ヒマワリを高密度に育苗する環境において、20 mmの高低差がつくように苗を交互に配置し、遠赤色光を含まない照射光と遠赤色光を含む照射光のそれぞれの下で、苗の成長や形態、光合成特性と個体間のばらつきを比較(図1)。
  2. 遠赤色光を含む照射光下では、光獲得の有利・不利に差がつきにくく、個体間の大きさのばらつきは抑制された。しかし、茎の伸長が大きくなり、光合成産物の葉への分配が少なくなることが分かった。
  3. 遠赤色光を含まない照射光下では、初期に高い位置に配置された苗ほど生育期間を通して多くの光を受けて成長し、低い位置に配置された苗との成長の差が拡大した。

<研究者のコメント>

遠赤色光を含まない光源を使うと、高品質な苗を生産しやすい一方で、苗の生育に個体間でばらつきが生じやすいことが分かりました。今後は、光の種類・照射方法、育苗密度などを調節し、高品質な苗を均一に生産できる環境について調べたいと思います。

pr202608_shibuya03西村 有可里氏

研究の背景

人工光源を用いた育苗施設では、太陽光と比べて遠赤色光が少ない白色LEDなどの光源がよく使われます。遠赤色光が少ない照射光下では、植物の茎の伸長が抑えられ、コンパクトで丈夫な苗になります。一方で、遠赤色光は植物が周囲の個体の存在を感知するための手がかりでもあります。遠赤色光を含む光が葉に当たり、葉を透過・反射した光は、赤色光に対する遠赤色光の割合が大きくなります。植物は、この変化を手がかりに、近くに他の植物がいることを感知し、光を獲得するために茎を伸ばします。高密度で育つ植物では、この反応が繰り返されることによって個体間の高さが揃うことが知られています。そのため、遠赤色光が少ない照射光下では、個々の植物はコンパクトになる一方、他の個体の存在を知る手がかりが少なくなることで、いったん生じた光獲得の有利・不利が続きやすく、そのことが生育のばらつきに繋がる可能性があります。
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図2 遠赤色光の有無による植物個体間の光獲得競争の違い
遠赤色光を含む光では、光獲得における有利・不利が入れ替わりやすい一方、遠赤色光を含まない光では、その入れ替わりが生じにくい。

研究の内容

本研究では、高密度のヒマワリ苗個体群を用いて、遠赤色光を含む照射光と、遠赤色光を含まない照射光の下で、苗の成長や形態、光合成特性とそれらの個体間のばらつきを比較しました。

光獲得条件に初期差をつくるため、一部の苗を他の苗より20 mm高い位置に配置し、高い位置の苗と低い位置の苗を交互に並べて10日間育成しました。そして、初期の高さの違いによって生じた受光量の差が、生育とともにどのように変化するかを調べました。

遠赤色光を含む照射光下では、光獲得の有利・不利に差がつきにくく、個体間のばらつきは小さくなりましたが、茎の伸長が大きくなり、葉への光合成産物の配分が少なくなりました。一方、遠赤色光を含まない照射光下では、初期に高い位置にあった苗ほど生育期間を通して多くの光を受けて成長し、低い位置にあった苗との成長の差が拡大しました。その結果、植物の成長量だけでなく、光合成特性や形態などの性質にも大きなばらつきが生じました。本研究結果により、集団としての均一性と個々の苗の品質との間にトレードオフがあることが示されました。

期待される効果・今後の展開

本研究結果は、人工光源を用いた育苗施設の照明条件を検討する際に、個々の植物の生育だけでなく、植物の集団としての均一性も考慮する必要があることを示しています。今後、光の質だけでなく、育苗密度や照明方法などを組み合わせることで、苗の品質と均一性を両立できる環境制御方法の構築につながることが期待されます。

資金情報

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業 基盤研究(B)(課題番号:JP24K01883)の支援を受けて実施しました。

用語解説

※ 遠赤色光:波長700~800 nm付近の光。植物が周囲の植物の存在を感知する手がかりとなるなど、植物の形態形成に大きく影響する。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Scientia Horticulturae
【論文名】 Far-red-deficient light reduces within-stand uniformity in growth and leaf-level traits in high-density sunflower seedling stands through asymmetric competition for light
【著者】 Yukari Nishimura, Toshio Shibuya, Hikaru Matsuda, Ryosuke Endo

【掲載URL】 https://doi.org/10.1016/j.scienta.2026.115097

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院農学研究科
教授 渋谷 俊夫(しぶや としお)
TEL:072-254-9433
E-mail: tshibuya[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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