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医療用AIにおける公平性の現状と課題を明らかに ~性別、年齢、人種・民族ごとの性能評価が限定的であると判明~

2026年9月17日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院医学研究科人工知能学 Shannon Walston(シャノン ワルストン)研究員、植田 大樹教授

概要

市販の医療用人工知能(AI)製品が、社会的に不利な立場の集団に適用された場合、有害なバイアスを増幅する恐れがあることが指摘されています。医療用AI製品がさまざまな患者グループに対して公平に機能するか確認するためには、性別、年齢、人種・民族ごとの性能評価が重要です。しかし、これまでどの程度性能評価が行われているのか分かっていませんでした。

本研究グループは、市販の医療用AI製品を検証した放射線医学分野の研究について、2010年以降の報告を対象にスコーピングレビュー※1を行いました。その結果、545件の研究のうち、性別、年齢、人種・民族のいずれかに関する人口統計学的データと、そのサブグループごとの性能報告も含む研究は77件のみでした。また回帰分析※2の結果、サブグループごとの性能報告は依然として十分に行われていないことが明らかになりました。

本研究成果は、2026年6月12日に国際学術誌「European Radiology」にオンライン掲載されました。

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ポイント

  1. 市販の放射線診断AI製品を検証した研究において、2010年以降に発表された論文を対象にスコーピングレビューを実施。
  2. 545件の検証研究のうち、性別、年齢、人種・民族のいずれかに関する人口統計学的データを報告していたのは392件、そのサブグループごとの性能報告も含む研究は77件のみであった。
  3. 回帰分析の結果、近年の研究であることや企業スポンサーの有無はサブグループ報告の増加につながっておらず、サブグループごとの性能報告は依然として十分でないことが明らかに。

<研究者のコメント>

私自身の医療経験において、10年以上にわたる診断の遅れによって健康状態が悪化したことから、AIのバイアスに興味をもちました。現在は患者に適用されるAIツールの公平性とバイアス排除に取り組んでいます。AIの医学分野における可能性に強く魅了され、特にAIの公平性と、人間の意思決定における公平性の測り方との違いについて深く探求してきました。研究によって公平なグローバルヘルスを実現する、本学内外の多くの優れた研究者と共に研究していることを光栄に思います。

pr202609_wal02Shannon Walston研究員

研究の背景

人工知能(AI)は医療ソフトウェア製品市場の成長分野の一つであり、その多くは放射線診断用に開発されています。近年の研究では、医療用AI製品におけるバイアスが、人口統計学的、社会経済的、地理的な要因によって区別される患者集団にリスクをもたらす可能性が指摘されています。このようなバイアスは、医療用AI製品が特定の集団データのみで検証されていた場合、異なる性別、年齢、人種・民族の患者に使用した際に性能の偏りが大きくなり、患者の診療や治療結果に直接影響を与える恐れがあるため、慎重に評価する必要があります。

研究の内容

本研究グループは、市販の医療用AI製品を検証した放射線医学分野において、2010年以降に報告された研究を対象として、研究領域の全体像を把握するためにスコーピングレビューを実施しました。そして、性別、年齢、人種・民族に関する報告がどの程度行われているかについて、その傾向を回帰分析により統計的に評価しました。

その結果、252製品を対象とした545件の研究のうち、性別、年齢、人種・民族の人口統計学的な詳細データとサブグループ解析の結果を含んでいたのは、52製品を対象とした77件の研究のみであることが明らかになりました。また、割合を算出するために用いられるウィルソン信頼区間(Wilson Confidence Interval)を、結核検出用AIの検証研究に対して適用したところ、報告されたデータセットの67%が、性別サブグループ解析を行うには統計的な検出力が不十分である可能性が示されました。データ不足はメタ分析を困難にし、人口統計学的データの欠如により集団別性能評価も不能となります。

本研究により、AI製品におけるバイアスの検証が十分になされておらず、多くの研究でそのリスク自体が報告されていないことが判明しました。また、バイアスを検出するための最適な方法がいまだ確立されていない点が大きな課題であることが示されました。

期待される効果・今後の展開

本研究は医療用AI製品のバイアスに関する明確なデータを提供し、現在策定・改訂中の出版物および報告要件の指針となる価値ある議論材料となります。これまでも、米国および欧州連合(EU)の市販AI医療機器要件への改善を求める声は多数ありましたが、本調査はそれに続き、人口統計学的サブグループ保護に特化した提言を加えました。

今後は、研究者が研究設計の一環として集団別分析を実施するように促すことを目指します。本研究は放射線診断AI製品を対象にしましたが、国内外の患者保護に向けて、他の医療用AI製品についても系統的バイアスの検証を継続して行います。

資金情報

本研究は、科学技術振興機構(JST) さきがけ JPMJPR2521の支援を受けて実施しました。

用語解説

※1 スコーピングレビュー:体系的かつ反復的なアプローチを用いて、ある主題に関する既存の文献群を特定する手法。他のシステマティックレビューに先立って実施され、当該主題に関する文献の現状の範囲・頻度(広がり)および性質を整理するとともに、文献における潜在的な研究課題(ギャップ)を明らかにすることを目的とする。

※2 回帰分析:従属変数と一つまたは複数の独立変数との間の関係を推定するための統計的手法。本研究においては、人口統計学的データまたは結果の報告の有無と、出版年または研究の特性(対象の診療分野、画像検査の種類、資金源など)との間の関係を推定した。

掲載誌情報

【発表雑誌】 European Radiology
【論文名】 The current state of demographic subgroup reporting for commercially available AI for radiology: a scoping review
【著者】 Shannon L. Walston, Hirotaka Takita, Yasuhito Mitsuyama, Junya Sato, and Daiju Ueda

【掲載URL】 https://doi.org/10.1007/s00330-026-12652-y

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科人工知能学
研究員Walston Shannon(ワルストン シャノン)
TEL:06-6645-3831
E-mail:ai.labo.ocu[at]gmail.com
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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