最新の研究成果

不眠症状のある高齢者は社会的フレイルに該当しやすい~75歳以上の高齢者2,091人を対象に調査を実施~

2026年9月18日

  • 看護学研究科
  • プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院看護学研究科 河野 あゆみ教授、池田 直隆准教授、佐藤 由恵特任講師

概要

本研究グループは、75歳以上の在宅高齢者2,091人を対象としたアンケート調査結果を用いて、不眠症状と社会的フレイル※1の関連を検討しました。その結果、社会的フレイルに該当する割合が、不眠症状のある人では64.4%、不眠症状のない人では40.0%であることが示されました。

さらに、年齢や性別、認知機能などの影響を考慮して解析を行ったところ、不眠症状と社会的フレイルとの関連が認められ、不眠症状のある人は不眠症状のない人に比べて、社会的フレイルに該当しやすいことが示されました。

本研究成果は、2026年9月2日に国際学術誌「BMC Geriatrics」にオンライン掲載されました。

press_0918_kawano

ポイント

  1. 不眠症状のある人は、不眠症状のない人に比べ、社会的フレイルに該当しやすいことが示された。
  2. 高齢者の睡眠状態の把握が社会的フレイルの早期発見につながる可能性を示した。

本研究は、75歳以上の後期高齢者に絞り、社会的フレイルと不眠症状との関連を実証した点において学術的に新規性があります。不眠症状は高齢者に比較的よくみられる症状であり、社会的フレイルに気づく手がかりになり得ると考えられます。今後は、睡眠薬の適切な使用や日中の生活リズムの整え方も含め、不眠症状と社会的フレイルの因果関係などさらに検討することが望まれます。

press_0918_kawano02.png

河野 あゆみ教授

本研究は、松原市在住の高齢者の皆さまにご協力いただいたことで実現しました。地域の皆さまからいただいた貴重なデータを、高齢者の健康や社会的なつながりを支えるための知見として還元していくことが重要だと考えています。今後も地域と連携し、実際の介護予防や健康づくりに役立つ研究を進めていきたいと思います。

press_0918_kawano03

池田 直隆准教授

研究の背景

フレイルは、要介護状態や死亡のリスクとなる高齢期特有の問題であり、その関連要因を明らかにすることは老年学において重要です。また、高齢者の約40%が不眠症状を感じているとされており、従来の研究では、不眠症状が将来のフレイル進行を高める可能性が示されています。
フレイルは身体的側面だけでなく、心理・認知的側面や社会的側面を含む多面的な概念です。なかでも「社会的フレイル」は、社会参加の減少や対人交流の希薄化、社会的役割の喪失などにより、社会とのつながりが脆弱化した状態を指し、近年注目されています。
しかし、社会的フレイルと不眠症状との関連については、十分に検証されていません。特に、配偶者の死別や身体機能の低下、社会的ネットワークの縮小といった出来事が重なりやすい75歳以上の高齢者を対象とした研究は乏しいのが現状です。そこで、本研究では75歳以上の高齢者を対象に、不眠症状と社会的フレイルの関連を検証しました。

研究の内容

本研究は、大阪府松原市在住の75歳以上の在宅高齢者2,091人(75-84歳:1,377人85歳以上:714)を対象に、自記式アンケートを用いて、不眠症状と社会的フレイルの関連を検討した横断研究です。本研究では、不眠症状は日本語版アテネ不眠尺度※2、社会的フレイルはMakizako らの5項目質問票※3で評価しました。解析の結果、不眠症状あり群では社会的フレイル保有率は64.4%、なし群では40.0%と不眠症状のある人の方が社会的フレイルになりやすい傾向が示されました。
次に、年齢・性別・教育年数・就労状況・経済的不安・認知機能を調整した多変量ロジスティック回帰分析※4を行った結果、不眠症状あり群は不眠症状なし群に比べ、社会的フレイルに該当しやすいことが示されました(調整オッズ比:2.3595%信頼区間1.912.88))。
さらに、身体的フレイルの影響を考慮して解析を行ったところ、不眠症状と社会的フレイルの関連は引き続き認められました(調整オッズ比:1.93(同1.56~2.40))。
なお、本研究は看護学研究科と松原市の「高齢者の介護予防・健康増進に関する連携協定」によって実施されました。

期待される効果・今後の展開

本研究により、後期高齢者の睡眠状態を評価することが、社会的フレイルのリスクを早期に発見する手がかりとなる可能性が示されました。身近な健康指標である睡眠を切り口に、社会的脆弱性に目を向けるフレイル予防の新しい視点が提供するものと考えられます。また、高齢者の睡眠を良好に保つ生活リズムのありようが、社会的ネットワークの維持と関連している可能性も示されました。今後は、不眠症状と社会的フレイルの因果関係などについて、さらに検証する必要があります。

資金情報

本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究(課題番号:JP24K22211)の支援を受けて実施しました。

用語解説

※1 社会的フレイル:人とのつながりや社会的な役割が保ちにくい状態。

※2 日本語版アテネ不眠尺度:不眠症状を評価するための質問票。寝つき、中途覚醒、早朝覚醒、睡眠の質、日中の活動性などの8項目について自己評価し、合計6点以上を不眠症状ありと判定する。

※3 Makizako らの5項目質問票:高齢者の社会的フレイル(Social Frailty)を評価するためのスクリーニング指標。昨年に比べ外出が減った、友人を訪ねない、友人や家族の役に立っている気がしない。独居、毎日誰かと話さないの5項目のうち、2項目以上に該当する場合は、社会的フレイルと定義される(Makizakoら,2015)。

※4 多変量ロジスティック回帰分析:目的変数が「2値(あり/なし、成功/失敗、生存/死亡など)」の場合に、複数の説明変数が目的変数に与える影響を同時に評価する統計手法。

掲載誌情報

【発表雑誌】 BMC Geriatrics
【論文名】 Association between insomnia symptoms and social frailty in community-dwelling adults aged 75 years and older: a cross-sectional study
【著者】  Naotaka Ikeda, Yoshie Sato, Hideyuki Dobashi, Ayumi Kono

【掲載URL】https://doi.org/10.1186/s12877-026-08220-0

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院看護学研究科
地域包括ケア科学分野
教授 河野 あゆみ(こうの あゆみ)
TEL:06-6645-3540
E-mail:ayukono[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs03