最新の研究成果

AIで「窓からの眺め」の価値を可視化~3D都市モデルと住宅賃料から東京23区の眺望価値を推定~

2026年9月24日

  • 生活科学研究科

概要

大阪公立大学大学院生活科学研究科の瀧澤 重志教授、堀之内 雅人氏(研究当時:学士課程4年)らを含む国際共同研究グループは、Google MapsとProject PLATEAU※1の3D都市データ、不動産賃貸データ、AI画像解析を組み合わせ、住宅の「窓からの眺め」の望ましさを都市スケールで定量化する手法を開発しました。

住宅を選ぶ際、窓から見える景観は居住環境の快適性や住宅価値に関わる重要な要素です。しかし、従来の研究では、緑の量や空の広さ、眺望距離など個別の要素を評価する方法が中心で、景観全体として人がどの程度魅力を感じ、その価値が住宅市場にどのように反映されているかを大規模に捉えることは困難でした。

本研究ではまず、東京23区の賃貸住宅データを整理し、各住宅の位置、階数、方位と建物形状を対応させることで、各住宅からの窓景観を近似する撮影ポイントをPLATEAUの3次元空間上に設定しました。さらに、ゲームエンジンのUnityを介してGoogle Photorealistic 3D Tiles※2を利用し、それぞれの地点から見えるカラー画像と奥行き(深度)画像を自動取得しました。最終的に、5,246棟、51,849件の3ベッドルーム賃貸住宅について、19,690種類の窓景観データを構築しました。

次に、住宅の広さ、築年数、駅からの距離などの一般的な住宅属性から賃料を説明するヘドニック価格モデル※3を構築し、そのモデルから予測される賃料と実際の賃料との差に着目しました。そして、その差を窓景観画像からAIに学習させることで、窓からの景観に由来する総合的な価値を「Housing Window View Desirability(HWVD:住宅窓景観の望ましさ)」として推定しました。研究では複数の画像AIモデルを比較し、カラー画像と深度画像※4を同時に用いるEncoder–Decoderモデル※5が最も高い性能を示しました。窓景観情報を加えることで、賃料予測の決定係数は、住宅属性だけを用いたモデルのR²=0.62からR²=0.71へ向上しました。
また、HWVDは窓から見える緑の割合と正の関係を示し、建物が多く見える景観とは負の関係を示しました。空間的には東京南西部で高く、東部では低い傾向が確認されました。さらに、区単位の平均所得との関連もみられ、良好な眺望という「見えない都市環境資源」が、都市内で均等に分布していない可能性が示されました。

加えて、画像の主観評価実験を実施し、AIによる景観評価と人間による主観評価との対応関係を検証しました。これにより、本手法が住宅市場に表れる価値だけでなく、人が感じる窓景観の好ましさとも一定程度対応することを確認しました。
本学は、本研究の初期構想、不動産データの整理、建物上の撮影地点の設定、Unityを用いたカラー・深度画像の取得、および最高精度を示したAIモデルの提案・学習などを主に担当しました。

本成果は、窓からの眺めというこれまで捉えにくかった環境価値を、3D都市モデル、AI、不動産市場データを組み合わせて定量化する新しい方法を示すものです。不動産評価だけでなく、都市計画、建築設計、環境格差の分析などへの応用が期待されます。

本研究成果は、2026713日に「Applied Geography」にオンライン掲載されました。

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資金情報

本研究はSmart Data Research UK, a UKRI investment [grant number UKRI4017] の支援を受けて実施しました。

用語解説

※1 Project PLATEAU:国土交通省が整備・公開する3D都市モデルのプロジェクト。本研究では、建物の形状や高さ、階数などの情報を利用し、窓景観の撮影ポイント設定に用いました。

※2 Google Photorealistic 3D Tiles:実際の都市を、建物の形状や写真情報を用いて立体的かつ写実的に再現した3次元地図データ。本研究では、住宅の窓位置から見える景観画像を生成するために利用しました。

※3 ヘドニック価格モデル:住宅価格や賃料を、広さ、築年数、駅からの距離など、その住宅を構成するさまざまな要因に分けて分析する手法。本研究では、こうした一般的な住宅属性では説明できない賃料の差から、窓景観に関係する価値を捉えました。

※4 深度画像(Depth Image):カメラから物体までの距離を画素ごとに表した画像。通常のカラー画像では分かりにくい、景観の奥行きや建物までの距離などの3次元的な情報を表現できます。

※5 EncoderDecoderモデル:入力画像の特徴をいったん圧縮して捉え、それを再構成する過程を通して画像の特徴を学習するニューラルネットワーク。本研究では、カラー画像のみを用いるモデルと、カラー画像に深度情報を加えたモデルを構築し、得られた画像特徴を窓景観価値の推定に利用しました。

掲載誌情報

【発表雑誌】Applied Geography
【論文名】Estimating and mapping Tokyo Window View Desirability using 3D model imagery and the hedonic price approach
【著者】Stephen Law, Masato Horinouchi, Esra Suel, Steven Stalder, Michele Volpi, Yao Shen, Maosu Li, Atsushi Takizawa

【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.apgeog.2026.104110

お問い合わせ

大阪公立大学大学院生活科学研究科
教授 瀧澤 重志(たきざわ あつし)
Email: takizawa[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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