最新の研究成果
犬の肥満細胞腫におけるCT所見の特徴を明らかに~良性病変との鑑別に有用な指標を提示~
2026年9月25日
- 獣医学研究科
- プレスリリース
発表者
大阪公立大学獣医臨床センター 盛下 基夢特任臨床助教、日下 拓哉特任臨床助教、村田 真由美勤務獣医師、大阪公立大学大学院獣医学研究科 田中 利幸准教授
概要
犬の皮膚や皮下に発生する肥満細胞腫は外観が良性病変と類似しているため、鑑別が難しい場合があります。
本研究グループは、犬の肥満細胞腫と良性病変の3相造影CT画像※1を比較し、画像上の特徴的な違いを明らかにしました。さらに、肥満細胞腫は腫瘍の大きさによって異なる特徴があることも示しました。
本研究成果は、2026年9月17日に国際学術誌「Veterinary Radiology & Ultrasound」にオンライン掲載されました。

図 小型肥満細胞腫と良性病変のCT画像
ポイント
- 大型の肥満細胞腫では、不均一な造影効果、栄養血管の存在、周囲組織への浸潤、壊死、周囲脂肪濃度の上昇といったCT画像上の特徴が確認された。
- 小型の肥満細胞腫では、造影剤投与後しばらく時間が経ってから撮影したCT画像において、良性病変よりも高いCT値※2を示すことが確認された。
<研究者コメント>
犬に発生する肥満細胞腫は、良性病変とよく似た見た目を示すことがあり、特に小型の腫瘍は身体検査だけでは良性病変と見分けることが難しい場合があります。本研究では、3相造影CTを用いて肥満細胞腫と良性病変の特徴の違いを明らかにしました。これらの知見が、獣医療における肥満細胞腫の早期発見につながることを期待しています。
盛下 基夢特任臨床助教
研究の背景
犬の皮膚や皮下に発生する肥満細胞腫は、良性病変と類似した外観を示すことがあり、身体検査だけでは見分けることが難しい場合があります。近年、CT検査が肥満細胞腫の検出に有用である可能性が報告されていますが、良性病変との違いを詳しく比較した研究や、造影剤投与後の時間経過に応じた複数の画像(造影時相)を用いた詳細な検討はほとんど行われていませんでした。
そこで本研究では、肥満細胞腫と良性病変の3相造影CT検査画像上の特徴の違いを明らかにしました。
研究の内容
本研究では、2018年10月から2025年5月までの間に3相造影CT検査を受けた犬の皮膚や皮下の病変のうち、病理検査で肥満細胞腫と診断された23症例と、良性病変と診断された7症例を対象としました。また、肥満細胞腫は大型(3cm以上)と小型(3cm未満)に分類し、それぞれのCT画像の特徴を良性病変と比較しました。
その結果、大型の肥満細胞腫では、不均一な造影効果、栄養血管の存在、周囲組織への浸潤、壊死、周囲脂肪濃度の上昇が特徴的に認められました。一方、小型の肥満細胞腫ではこれらの特徴がほとんど認められませんでしたが、造影後の遅いタイミングで撮影する平衡相においては、良性病変よりも高いCT値を示しました。
これらの結果から、肥満細胞腫は腫瘍の大きさによって異なるCT画像の特徴を示すことが明らかになりました。また、小型の肥満細胞腫ではCT値を測定することで良性病変と区別できる可能性が示されました。さらに、小型の肥満細胞腫では、遅延性造影効果がみられる可能性も示されました。
期待される効果・今後の展開
本研究により、犬の皮膚や皮下に発生する肥満細胞腫と良性病変との間で、3相造影CT所見の違いがあることが明らかになりました。これらの知見は、CT検査による肥満細胞腫の評価や、良性病変との鑑別に役立つことが期待されます。今後は肥満細胞腫のCT所見と病理所見との関連を調べることで、CT画像に現れる特徴がどのような病理学的変化を反映しているのかを明らかにしたいと考えています。また、本研究は対象となった症例数が限られているため、今後はより多くの症例を対象とした検討が必要であると考えられます。
用語解説
※1 3相造影CT検査:造影剤を投与後、20秒(動脈相)、60秒(門脈相)、180秒(平衡相)の3つのタイミングでCT撮影を行う検査方法。
※2 CT値:CT画像で組織の性質を数値で表したもの。組織の種類や造影剤の染まり方によって値が異なる。
※3 遅延性造影効果:造影剤を注射した直後ではなく、時間の経過とともに病変が徐々に強く染まる現象。
掲載誌情報
【発表雑誌】 Veterinary Radiology & Ultrasound
【論文名】 Triple-phase computed tomography for differentiating canine cutaneous and subcutaneous mast cell tumors from benign lesions: A size-based evaluation
【著者】 Motomu Morishita, Takuya Kusaka, Mayumi Murata, Toshiyuki Tanaka*
【掲載URL】https://doi.org/10.1111/vru.70256
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院獣医学研究科
准教授 田中 利幸(たなか としゆき)
TEL:072-463-5457
E-mail:t-tanaka[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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