最新の研究成果
日本からゲンゴロウ科の2新亜種を発見
2026年9月29日
- 農学研究科
石川県ふれあい昆虫館の渡部 晃平学芸員、大阪公立大学大学院農学研究科の加藤 雅也氏と上田 昇平准教授、ウィーン自然史博物館のHelena Shaverdo博士の研究チームが、日本からゲンゴロウ科の2新亜種を発見し、記載・命名しました。
本研究成果は、分類学の国際学術誌「European Journal of Taxonomy」に2026年9月23日に掲載されました。

図1.基亜種チンメルマンセスジゲンゴロウ(A),新亜種ダイトウセスジゲンゴロウ(B),新亜種スジナシセスジゲンゴロウ(C)
はじめに
コウチュウ目ゲンゴロウ科は水中生活に特化した形態を有する水生昆虫です。水生甲虫の中では最も多様性が高く、日本では140種が記録されています。このうち、チンメルマンセスジゲンゴロウはセスジゲンゴロウ属Copelatusに属し、上翅に多くの条溝を有することや、頑丈で太く特徴的な交尾器を有する顕著な種として知られています。
この度、日本産のチンメルマンセスジゲンゴロウの形態および遺伝子を詳しく検討した結果、南大東島と宮古島から採集された個体群は亜種相当の差異があると判断され、2新亜種を記載・命名しました。さらに、中国産の標本も含めた形態観察による検討結果から、チンメルマンセスジゲンゴロウはAustrelatus属(和名なし)の特徴を有することが判明したため、セスジゲンゴロウ属CopelatusからAustrelatus属へ移動しました。
研究成果
新亜種の記載
日本産のチンメルマンセスジゲンゴロウの形態を観察した結果、南大東島産と宮古島産の個体群には以下のような顕著な特徴が見られました。南大東島産の個体群は体色が黒褐色であること、上翅基部に見られる黄赤色の帯状模様が細いことなどにより区別され、宮古島産の個体群は体が小さいこと、体形が細長いこと、上翅基部に見られる黄赤色の帯状模様が太いこと、上翅の条溝を欠くことなどにより明確に区別できることがわかりました。DNA解析の結果からは、南大東島産の個体群は他の個体群から大きく分化しており、宮古島産の個体群は分化の程度は小さいものの、他の個体群と区別できることがわかりました(図2)。
さらに、宮古島の個体群を繁殖させ、26℃で飼育した時の幼虫期間を長崎県産の個体群と比較したところ、宮古島産の個体群では幼虫期間が長いということもわかりました。
形態的な特徴や幼虫期間の比較などから、これらの個体群間には区別できるだけの差が認められたものの、雄の交尾器形態およびDNA解析では別種にわける程の大きな差は見出せませんでした。しかし、南大東島と宮古島は他の生息地から大きく隔離されており、島独自の特徴を有する個体群であることから、これら2つの個体群を新亜種として記載し、それぞれダイトウセスジゲンゴロウAustrelatus zimmermanni daitoensis Watanabe, Kato & Shaverdo, 2026とスジナシセスジゲンゴロウAustrelatus zimmermanni miyakoensis Watanabe, Kato & Shaverdo, 2026と命名しました。
属の移動
チンメルマンセスジゲンゴロウの形態を詳細に検討した結果、雄交尾器中央片が複雑な構造をなし、腹面側が2つの頂端裂片に分かれているなど、Austrelatus属の特徴を有することが判明しました。また、mtDNAおよびnDNAに基づく系統解析の結果もそれを示唆し、チンメルマンセスジゲンゴロウはAustrelatus属の姉妹群となりました(図3)。これらの結果に基づき、チンメルマンセスジゲンゴロウをセスジゲンゴロウ属CopelatusからAustrelatus属へ移動しました。

図2.SNPsデータに基づくneighbor-net法を用いた系統樹

図3.mtDNAおよびnDNAに基づく最尤系統樹
掲載誌情報
【発表雑誌】 European Journal of Taxonomy
【論文名】 Austrelatus zimmermanni (Gschwendtner, 1934) comb. nov. (Coleoptera: Dytiscidae: Copelatinae) with two new subspecies from Japan, and notes on the species biology and ecology
【著者】 渡部晃平,加藤雅也,上田昇平,Helena Shaverdo
【掲載URL】 https://doi.org/10.5852/ejt.2026.1098.3329
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大阪公立大学 広報課
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TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
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