医学部TRENDY Vol.05

眼が自然に動く! 義眼手術の最新技術とは

形成外科学 元村 尚嗣 教授 (医学部広報委員長)

私たちの研究グループは、『動く義眼』の臨床研究に取り組んでいます。眼球を失った場合などに使用される義眼は、技術の進歩により年々リアルさが増していますが、リアルすぎるが故に、眼が動かない不自然さが逆に際立ってしまいます。
そこで私たちは、患者さんから採取した肋軟骨で義眼台を作成することにより、動く義眼を実現しています。義眼台とは、義眼を装着する際に必要となる土台のこと。シリコンやレジンで作られることが多いですが、義眼と義眼台の接触面が滑ってしまい、うまく義眼が動きません。また、異物であるが故に感染や露出の可能性もあります。しかし、患者さん本人の肋軟骨で作られた義眼台であれば、表面に凹凸があり、義眼とうまく密着するため、外眼筋によって義眼台を動かした際に連動して義眼を動かすことができるのです。
現在は肋軟骨から義眼台を作成していますが、今後は再生医療を活用し、培養軟骨から義眼台を作成するなど、より短時間で低侵襲な手術法も開発できればと考えています。

肋軟骨を使用した義眼台再建手術を表した図

~メスを持った精神科医 、 高まる形成外科のニーズ~

形成外科とは、身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的問題に対して、機能だけでなく形態的にも正常に近づけることによって、患者さんのQOLの向上に貢献する外科系の専門領域です。
例えば事故に遭った際、命は助かったものの醜い傷跡が残ってしまっては、その後の人生を前向きに過ごせない可能性があります。このような方々の精神的苦痛を外科的に取り除くことができるのが形成外科です。薬によって精神的苦痛を軽減・解消するのが精神科医であれば、メスやレーザーを使って精神的苦痛を軽減・解消するのが形成外科医というわけです。
医療技術の発展により平均寿命の延長などがもたらされましたが、病気を治すことだけでなく、病気によって引き起こされたQOLの低下を改善させる点も近年重要視されており、形成外科のニーズが高まっています。

形成外科学 元村 尚嗣 教授 (医学部広報委員長)

趣味・特技
  • 絵を描くこと
    絵の面白さは現実ではありえないことを表現できること。休みの日は、美術館へ行くことも!
  • サーフィン
    学生時代はウィンドサーフィン一筋であったが、現在は年に数回程度、宮崎や種子島などの海でゆっくりサーフィンを楽しんでいる。
  • ゴルフ
    45歳をすぎて始めたゴルフで一向に上達をみないが、週末は自然の中で仲間と共にリフレッシュ。
取材対応可能なテーマ

頭頸部再建、乳房再建、義眼床再建、皮膚悪性腫瘍、悪性黒色腫、顔面神経麻痺、頭蓋形成

元村 尚嗣 教授日本形成外科学会指導医、専門医
日本形成外科学会皮膚腫瘍外科分野指導医
日本形成外科学会再建・マイクロサージャリー分野指導医
日本創傷外科学会専門医
日本フットケア・足病医学会認定師
日本がん治療認定医機構がん治療認定医

 2023年7月発行