医学部TRENDY Vol.08

チームで挑む、ハイリスク妊婦への対応

女性生涯医学 橘 大介 教授

昨今、晩婚化・晩産化が進んだことや、2022年4月より不妊治療が保険適用となったことが影響し、不妊治療を行う人は増加しています。2021年の厚生労働省と日本産科婦人科学会のデータから算出すると、11.6人に1人が体外受精で生まれた子となり、その割合は年々増えています。
しかし、体外受精による妊娠は、自然に妊娠した場合と比べて出産時に出血量が多くなるなど、妊娠中や出産時におけるさまざまなリスクが高まります。

そこで私が所属する女性生涯医学では、体外受精などの不妊治療を経て妊娠した方や、ハイリスクと診断された妊婦の方々を中心に診療を行っています。周産期の修羅場は突然やってくることが多いことがほとんど。
そのため、医療者の経験値によらず24時間均質な医療レベルを提供するために、密な情報共有をはじめ、チームで対応できるシステムづくりに取り組んでいます。

チームで挑む、ハイリスク妊婦への対応

見過ごされがちな前置血管とは

体外受精で妊娠した場合、さまざまなリスクが高まりますが、その中でもあまり知られていないのが『前置血管』です。前置血管とは、本来なら胎盤に流入すべき胎児の血管が、子宮口付近の卵膜上に逸脱している状態。この場合、破水した際に胎児の血管が断裂してしまうリスクが高くなります。最悪の場合は、胎児・新生児死亡となる可能性があるため、計画的に帝王切開分娩を行います。

このように母子の命をおびやかす前置血管ですが、実は見逃されやすい症例のため、私たちは独自のアルゴリズムを用いた診断方法で観察することにより、早期発見に努めています。現在は、前置血管の妊婦を年間20件程度受け入れており、その数は関西でもかなり有数。今後も前置血管だけでなく、ハイリスク妊婦を受け入れることで、患者さまのニーズに対応していきます。

医学部広報委員長より

橘教授は、大阪公立大学医学部附属病院における赤ひげ先生です。24時間、365日、周産期の修羅場に向き合っておられます。その専門知識と経験により多くのカップルや母親に希望をもたらしています。
彼の存在は多くの家庭にとって、まさに救世主となっています。また、その強靭な精神と肉体は止まることを知らず、トライアスロンにまで手を伸ばす“鉄人”でもありそうです。

女性生涯医学 橘 大介 教授 

趣味
  • 料理
    和洋中問わず、そのとき作りたいと思ったものを作る!
  • トライアスロン
    学生時代に水泳部だったことがきっかけ、最近は休止中。
好きな言葉

医食同源

取材対応可能なテーマ

胎児医学、ハイリスク妊産婦、不妊治療、前置血管、骨盤臓器脱

tachibana_navy_0906日本産科婦人科学会指導医
日本周産期新生児医学会周産期専門医
NCPR(新生児蘇生法)インストラクター
母体保護指定医

 2023年10月発行