医学部TRENDY Vol.12

以前は不可能であった脳神経外科手術に、光をもたらした新手術法

脳神経外科学 後藤 剛夫 教授

脳の底を支えている頭蓋底には、神経や血管、脳と脊髄をつなぐ脳幹など非常に重要な組織が密集しています。そこに発生した腫瘍は、良性であっても神経や血管を圧迫し、頭痛やめまい、手足が動かしにくいなどの神経症状を引き起こすため、摘出手術が必要になる場合があります。
しかし脳の深部にあり、重要な神経組織が集まっている頭蓋底にできた腫瘍を摘出するのは容易ではありません。神経や血管を少しでも傷つけてしまうと、神経まひなど非常に重い合併症を引き起こす可能性があります。そのため1970年ごろまでは手術不可能な疾患とされていました。
私が所属する脳神経外科学研究室では、この頭蓋底にできた腫瘍を摘出する頭蓋底手術法の開発・研究において世界の中でもパイオニアとしての評価を得ています。最近では顕微鏡を用いた低侵襲頭蓋底手術に加え、広い術野で安全に腫瘍を摘出できる内視鏡を用いた新しい手術法をいくつか開発しました。この手法は、手術の際に視認できる範囲と手術機器が届く範囲を拡大させ、これまで手が届かなかった腫瘍に到達。また安全でからだへの負担も小さく画期的であると高い評価を受け、頭蓋底腫瘍治療を大きく発展させました。今後も多くの頭蓋底腫瘍患者を治療し、さらなる技術の向上を目指します。

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国内外での手術法普及に尽力 

新手術法の開発もさることながら、より多くの患者を救うためには技術の普及が重要です。論文には手術方法が詳述されていますが、外科医にとって実際の手術を見て学ぶことは、技術を向上させるために必要不可欠です。しかし、頭蓋底腫瘍は症例が多くないため、医師が臨床で経験する機会が限られています。そこで、長年にわたる頭蓋底腫瘍治療の実績と国内有数の症例数をもつ私たちの教室では、国内および国外から多くの若手医師の研修や留学を積極的に受け入れています。また、海外諸国の医療機関へ出張講義を行い、国内だけでなく世界の頭蓋底腫瘍治療へ貢献しています。

医学部広報委員長より

当院脳神経外科は私が医学生の頃にすでに国際的知名度が高く、かく言う私も脳外科医になりたいと思ったものです(結局形成外科医になりましたが)。現在は後藤教授のもと、世界の頭蓋底手術のトップランナーとして、顕微鏡を用いた低侵襲外科手術法の開発や内視鏡の併用など最先端の技術と医療を提供されています。また、国内のみならず国外の脳外科医の教育・育成にも注力されており、後藤教授の卓越した技術とその人柄に魅了された多くの若手医師が集う教室となっております。

脳神経外科学 後藤 剛夫 教授

趣味
  • 読書
  • スポーツ観戦(特にサッカー、ガンバ大阪を応援しています!)
取材対応可能なテーマ

脳腫瘍治療、頭蓋底外科、内視鏡手術、低侵襲外科手術

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 2024年2月発行