最新の研究成果

筋肉内脂肪が多いと心不全予後が悪くなることを明らかに―筋肉量や筋力以外に筋肉の質も心不全に影響―

2022年4月8日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

<本研究のポイント>

◇非虚血性心筋症による心不全患者で筋肉内脂肪比が高い群の方が予期せぬ再入院が多い。
◇大腿部の筋肉内脂肪を測定することで心不全の予後を推測できる可能性。
◇大腿部の筋肉内脂肪が多いとなぜ心不全患者の予後が悪くなるのか。その解明が今後の鍵。

<概 要>

 大阪公立大学大学院医学研究科 循環器内科学の柴田 敦(しばた あつし)病院講師、吉田 俊丈(よしだ としたけ)大学院生らの研究グループは、大腿部の筋肉内脂肪が非虚血性心筋症による心不全の予後に影響を与えることを初めて明らかにしました。本研究成果により、大腿部の筋肉内脂肪を測定することで心不全の予後を推測できる可能性が示されました。
 皮下脂肪や内臓脂肪以外の脂肪組織のことを異所性脂肪と呼び、主なものとしては心臓周囲脂肪や筋肉内脂肪があります。異所性脂肪の一つである心臓周囲脂肪が狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患や心房細動を引き起こすとの報告はありましたが、身体の他の部位の異所性脂肪が心不全に与える影響についての報告は今までほとんどありませんでした。大腿部の筋肉内脂肪が糖尿病など生活習慣病の発症に影響を与えているという報告は既にあったため、今回、大腿部の筋肉内脂肪が心不全患者の予後に関係するかを調査しました。

 本研究グループは、2017年9月から2020年1月に大阪公立大学医学部附属病院で、心機能が低下した心不全の精査目的に入院し冠動脈疾患が否定された連続93例を対象とし、CTで大腿部のスキャンを行い、筋肉量と筋肉内脂肪を測定して筋肉内脂肪比を算出しました。筋肉内脂肪比を中央値で2群に分類し、それぞれの群で心血管死もしくは心血管系の病気による予期しない入院の発生率に差があるか検討を行いました。その結果、筋肉内脂肪比が高い群の方が発生率が高く、筋肉内脂肪比が独立した予後規定因子であることが明らかになりました。

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 本研究成果は、『American Journal of Cardiology』(IF = 2.778)の2022年4月号に掲載されました。

研究者からのコメント

 心不全とは心臓のポンプ機能が低下することにより身体機能が低下し、寿命を縮める状態と言われています。
 かねてより、身体機能の中でも骨格筋が注目され、筋肉量や筋力の重要性が報告されていました。
 今回、我々は筋肉量や筋力以外にも筋肉の質も心不全の予後に関連することを見出しました。これにより、心不全患者様の予後改善を目指した治療の新たな標的が判明したと考えています。

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柴田 敦病院講師

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吉田 俊丈大学院生


 

掲載誌情報

雑誌名:

American Journal of Cardiology(IF = 2.778

論文名:

Thigh Intramuscular Fat on Prognosis of Patients With Nonischemic Cardiomyopathy

著者:

Toshitake Yoshida, Atsushi Shibata, Akiko Tanihata, Hiroya Hayashi,Yumi Yamaguchi, Ryoko Kitada, Shoichi Ehara, Yasuhiro Izumiya, Minoru Yoshiyama

DOI:

https://doi.org/10.1016/j.amjcard.2021.12.059

プレスリリース全文 (364.3KB)

研究内容に関する問合せ先

大阪公立大学大学院循環器内科学
担当:柴田 敦
TEL:06-6645-3801
E-mail:atsushiba1008[at]yahoo.co.jp [at]を@に変更してください。

取材に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:上嶋 健太
TEL:06-6605-3411
E-mail:t-koho[at]ado.osaka-cu.ac.jp [at]を@に変更してください。

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