最新の研究成果

熊本地震での実態を調査 非常用水源としての災害用井戸の有効性を実証

2022年10月18日

  • プレスリリース
  • 現代システム科学研究科

研究のポイント

◇災害時の水源として着目される地下水だが、これまで地下水の探査技術や断水時の潜在的な供給量に関する研究しか行われて
 おらず、災害時の利用実態は調査されてこなかった。

◇今回、熊本地震での災害用井戸の活用に関するアンケート調査を実施。
 生活用水として利用され、自治体の給水活動をバックアップしていた実態が明らかに。

◇一方で、存在を認知できておらず災害用井戸を活用できなかったケースもあり、災害用井戸の周知の課題も浮き彫りになった。


大学院 現代システム科学研究科 遠藤 崇浩教授らの研究グループは、2016年に熊本地震で被災した市内の災害用井戸登録事業者(供給者)と市内の高齢者関連施設(需要者)にアンケート調査を行い、震災時地下水利用の実態、および災害用井戸のさらなる活用のために必要な政策課題を明らかにしました。なお、地下水の防災利用は、2020年6月に国が発表した「水循環基本計画」でも言及されています。また遠藤教授が2021年に成果公表した別調査によると、災害用井戸は日本国内の全1741市区町村のうち、少なくとも418の市区町村に広がっています。

本研究成果は、国際学術雑誌Hydrogeology Journalに掲載されました。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Hydrogeology Journal
【論 文 名 】 Groundwater as emergency water supply: case study of the 2016 Kumamoto Earthquake, Japan
【著  者】 Takahiro Endo, Tomoki Iizuka, Hitomi Koga, Nahoko Hamada
【掲載URL/DOI】 https://doi.org/10.1007/s10040-022-02547-9 


プレスリリース全文 (1.2MB)

資金情報

本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」(研究推進法人:国立研究開発法人防災科学技術研究所)、科学研究費助成事業(基盤研究(B))「日本型地下水ガバナンスの特徴と動態に関する理論・実証研究」(課題番号20H04392)」、大阪府立大学科研費特定支援事業「災害用井戸の研究-地下水と防災の多重ガバナンスの確立に向けて-」によって実施された。


地下水の防災利用はかねてより提唱されていたのですが、過去の災害における利用実態はよく分かっていませんでした。今回、我々はアンケート調査を行い、熊本地震後の地下水の利用状況を分析しました。2021年時点の調査で日本国内の全1741市区町村のうち、少なくとも418が災害用井戸を導入済みであることから、今回の論文がそうした自治体あるいは近い将来災害用井戸の導入を検討している自治体にとって何かの参考になれば幸いです。

press_221018-2-2.JPG遠藤 崇浩 教授

 

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 現代システム科学研究科
教授:遠藤 崇浩(えんどう たかひろ)
TEL:072-254-9646
Email: endo[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

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