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バイオテクノロジー分野での可能性を切り拓く! ユーグレノイドのゲノム解読プロジェクト発表

2022年11月23日

  • 農学研究科

大学院農学研究科 中澤 昌美講師が参画しているEuglena International NetworkEIN; ユーグレナ国際ネットワーク)は、約1000種の既知のユーグレノイドについて、高品質なゲノム情報を得るためにどのように協調していくかについて、事例を交えて解説したPosition paperを国際学術誌『Biology Open』に発表しました。本件は、日本だけでなく16か国38機関からオンライン掲載されます。
Position paper本文

EINは2020年に設立され、学術界と産業界との共同研究や統合的なオミックス研究を通じて、ユーグレノイドの研究を支援し活性化することを共通の目的とするグローバルなコンソーシアムです。現在は世界20か国以上、数百人の科学者が参画しています。

ユーグレノイドは、原生生物界(動物、植物、菌類に分類されない真核生物)に属する分類群です。この単細胞真核生物群は、世界中の非常に広い範囲の生態系で発見されています。これらの生物は、バイオ燃料、栄養補助食品、バイオレメディエーション、医療、さらにはロボット工学の設計シミュレーターなど、さまざまな分野での応用が期待されています。しかし、最も応用研究が進んでいるユーグレナ(Euglena gracilis)を含め、これまでどのユーグレノイドについても高品質なゲノム情報が公開されるには至っておらず、この生物群が有するさらに大きなポテンシャルはほとんど開拓されていないままです。

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ユーグレノイドは世界各地に生育し、時には非常に高密度な個体群を形成する
※写真提供:Bożena Zakryś、EINフォトコンテスト受賞者2021年

EINの研究者グループは、既知のユーグレノイドの種について、高品質のゲノム配列情報を得ることにより、以下のことに貢献できると考えています。
- ユーグレノイドの基本的な生物学の理解
- ユーグレノイドの進化の理解
- 生態学的および環境管理におけるユーグレノイド活用
- ユーグレノイドを用いた製品の探索、開発、商品化

EINで収集されたデータは、European Nucleotide Archive (ENA)というレポジトリサイトを通じて全世界に公開される予定です。ENAに登録されると、これらのゲノムおよびアノテーション情報(ゲノム配列に対応した意味づけをすること)はデータベースに取り込まれ、世界中の研究者に均一かつ公平な方法でシェアされます。

この計画により新しいバイオ燃料や持続可能な食品、さらには医薬品に至るまで、さまざまなブレークスルーがもたらされる可能性があると考えられます。

中澤講師は、生物資源、遺伝子資源としての藻類の活用を目指し原生動物のユーグレナ(ミドリムシ)を用いた研究を行っています。主なテーマは、ユーグレナのミトコンドリアに存在する非常にユニークな酵素の性質解明・遺伝子取得を通じた有効利用法の探索と、さらなるユーグレナの活用を目指すための遺伝子組換え系の開発です。近年では、バイオ燃料生産生物としてのユーグレナの利用研究や、糖質分解関連酵素についても研究を始めています。
また、最近ではベルギーのリエージュ大学とJSPS-FNRS二国間交流事業に基づく共同研究を開始するなど、国際共同研究にも積極的に取り組んでいます。

EINは、ユーグレノイド研究者の国際共同研究を大きく加速する役割を果たしています。私自身も、EIN創設以前には知り合うことのなかった研究者とともに、ユーグレナに関するエキサイティングなプロジェクトを立ち上げました。ゲノム情報を含むユーグレノイドの未知の特徴を明らかにすることは、基礎科学に加えて、バイオテクノロジーを通じて人類の福祉に貢献すると考えています。」

中澤講師の研究紹介動画
https://www.youtube.com/watch?v=5KVEOOm5Uyw

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中澤 昌美講師

 問い合わせ先

大学院農学研究科
講師 中澤 昌美(なかざわ まさみ)
E-mailmamiatomu.ac.jp ※ [at]を@に変更してください。