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人⇔ペットでも伝播?恐怖の“薬剤耐性菌”ペットのイヌからコリスチンと第三世代セファロスポリン両方の抗生物質に耐性を示す大腸菌を国内で初めて発見

2023年3月14日

  • 獣医学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇ペットのイヌから、コリスチンと第三世代セファロスポリンに耐性を示す大腸菌を国内で初めて発見。
◇ペットが持つ薬剤耐性菌の性質やヒトとの双方向的な伝播リスク評価へ新たな知見を提供。

概要

大阪公立大学大学院獣医学研究科の安木 真世准教授、嶋田 照雅教授、鳩谷 晋吾准教授らと、大阪公立大学 獣医学部附属獣医臨床センター(以下 獣医臨床センター)、大阪大学 微生物病研究所の共同研究グループは、ペットとして飼育されているイヌから、コリスチンと第三世代セファロスポリン両方の抗生物質に耐性を示す大腸菌を国内で初めて発見しました。

近年、抗生物質の不適切な使用などにより抗生物質が効かない細菌(薬剤耐性菌)が出現しており、対策を行わない場合、ヒトでは2050年に癌を抑えて死因1位になると予測されています。薬剤耐性菌はペットからも確認されていますが、ペットが持つ薬剤耐性菌の性質やヒトとの間での双方向的な伝播リスクについては研究が進んでいません。

本研究では、獣医臨床センターに来院した感染症疑いのイヌ428匹、ネコ74匹から分離された細菌687株を対象に調査を行いました。その結果、可動性コリスチン耐性mcr遺伝子1と第三世代セファロスポリン耐性blaCTX遺伝子2を両方持つ大腸菌を2株発見し、そのうちイヌから発見された1菌株は、コリスチンと第三世代セファロスポリンの両方に耐性を示すことを明らかにしました。

本研究成果は、国際学術誌「Veterinary Microbiology」に、2023年2月16日にオンライン掲載されました。

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薬剤耐性菌対策はヒトだけで完結できるものではなく、周囲の動物、環境を含めた取り組みが必要です。特に取り組みが未成熟であるペットにおける研究を深めることで、ヒトとペットが健康で安心して生活できる環境作りに貢献していきたいと考えています。

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安木 真世准教授

 資金情報

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費(20K10432)からの支援を受けて行われました。

用語解説

※1 mcr遺伝子…mobile colistin resistance遺伝子(可動性コリスチン耐性遺伝子)。コリスチンの標的となる細菌外膜の糖脂質に存在する構成成分の構造変化をもたらす。この変化によりコリスチンの細菌への結合力は低下し、コリスチン耐性を獲得する。

※2 blaCTX遺伝子…CTX型beta-lactamase遺伝子(CTX型βラクタマーゼ遺伝子)。第三世代セファロスポリン抗生物質を分解する酵素を産生する遺伝子である。

掲載誌情報

【発表雑誌】Veterinary Microbiology
【論文名】Genetic and phenotypic analyses of mcr-harboring extended-spectrum β-lactamase producing Escherichia coli isolates from companion dogs and cats in Japan
【著者】Mayo Yasugi, Shingo Hatoya, Daisuke Motooka, Daisuke Kondo, Hideo Akiyoshi, Masayuki Horie, Shota Nakamura, and Terumasa Shimada
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.vetmic.2023.109695

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 獣医学研究科
准教授 安木 真世(やすぎ まよ)
TEL:072-463-5709
E-mail:shishimaru[at]omu.ac.jp
※[at
]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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