最新の研究成果

2種類の反応性を併せ持つラジカル分子誕生! ラジカル動的共有結合×配位結合

2023年5月30日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇不対電子(ラジカル)を用いた動的共有結合1と、配位結合2という全く新しい反応の組み合わせで分子を合成
◇2種類の反応は互いを阻害しないことを確認
◇センシング材料や多孔質材料など、機能性物質の新しい合成部品開発に貢献

概要

大阪公立大学大学院理学研究科の藤原 秀紀教授、酒巻 大輔准教授らの研究グループは、切れたり繋がったりを繰り返す不対電子を用いた動的共有結合と、金属イオンと分子の間で形成される配位結合2種類の結合を併せ持つ新分子の合成に世界で初めて成功し、その性質を調べました。その結果、2種類の反応は互いを阻害せず働くことが示されました。
 本研究成果により、異なった種類の結合を組み合わせた物質合成の可能性が示唆され、これまでになかった構造体構築などへの展開が期待されます。
 本研究成果は2023年5月4日、国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン掲載されました。

press_0306_fujii01

今回合成した分子の構造式

「ラジカルの動的共有結合」と「金属–配位子反応」。この2種類の反応を組み合わせるという非常にシンプルな発想ですが、両者は素性が大きく異なるため共存できるかは自明ではありませんでした。物質合成の新しいパーツとして広く使われることを期待しています。

press_0306_fujii02

酒巻 大輔准教授

 

掲載誌情報

【発表雑誌】Angewandte Chemie International Edition
【論 文 名】A Dicyanomethyl Radical Conjugated with a Pyridylamino Group: Combining Radical-based Dynamic Covalent Chemistry and Coordination Chemistry
【著  者】Hiroki Hasegawa, Daisuke Sakamaki, Hideki Fujiwara
【掲載URL】https://doi.org/10.1002/anie.202302498

プレスリリース全文 (549.2KB)

資金情報

本研究は、科学研究費補助金 基盤研究(C) (課題番号: 18K05264)、基盤研究(B) (課題番号: 20H02726)、学術変革研究 (A) (課題番号: JP20H05866)、公益財団法人 小笠原敏晶記念財団の支援の下で実施されました。

用語解説

※1 動的共有結合:原子間で電子のペア(電子対)を共有することで形成される化学結合を共有結合といい、さらにその結合が切れたり繋がったりを繰り返すものを動的共有結合という。

※2 配位結合:一方の原子からもう一方の原子へ電子対を供給して形成される結合。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科
准教授:酒巻 大輔(さかまき だいすけ)
TEL:072-254-9708
E-mail:sakamaki[at]omu.ac.jp  ※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp  ※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs09