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高性能な全固体電池実現の鍵! 高イオン伝導性を示す固体電解質の作製に成功

2023年6月21日

  • プレスリリース
  • 工学研究科

ポイント

◇全固体電池の高性能化には、液体電解質と同等の高イオン伝導性を示す固体電解質が必要。
◇材料となるガラス(Li3PS4)を結晶化させる際の昇温速度に着目。
◇これまで不可能であった、Li3PS4の高温相の室温安定化に初めて成功。

概要

全固体電池は、リチウムイオン電池などの液体電解質を用いる電池に比べ、安全性や出力、寿命などの面で、より高性能な電池として実用化が期待されています。全固体電池では、電解質中のイオン移動により機能しますが、イオンは固体中では動きにくいため、液体電解質と同じように固体中をリチウムイオンが高速に移動できる、高いイオン伝導性を示す固体電解質開発が必要です。

大阪公立大学大学院 工学研究科の木村 拓哉氏1、稲岡 嵩晃氏2、井澤 遼氏2、中野 匠氏2、保手浜 千絵研究員、作田 敦准教授、辰巳砂 昌弘学長、林 晃敏教授らの研究グループは、ガラスを1分間に約400°C上昇させるスピードで急速に加熱し、結晶化させることで、これまで実現が困難であった、高いイオン伝導性を示すLi3PS4の高温相(α-Li3PS4)を、室温で安定化させることに世界で初めて成功しました。本成果により、より高性能な全固体電池の材料開発への貢献が期待されます。

本研究成果は、米国化学会が刊行する国際学術雑誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン速報版に6月21日に掲載されました。

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全固体電池のイメージ

1…大阪府立大学大学院工学研究科 博士後期課程修了
2…大阪府立大学大学院工学研究科 博士前期課程修了

固体電解質の材料であるLi3PS4は、温度によって結晶構造が異なります。高温時の結晶構造(高温相)では、一般的に高いイオン伝導性を示しますが、Li3PS4では高温相の室温安定化が実現できていませんでした。約20年に渡る、全固体電池材料開発の成果です。

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林 晃敏教授

資金情報

本研究は、JST ALCA-SPRING(JPMJAL1301)およびJSPS科研費(JP18H05255、JP19H05816)の支援を受けて行われました。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Journal of the American Chemical Society (IF = 16.383)
【論文名】 Stabilizing High-Temperature α-Li3PS4 by Rapidly Heating the Glass
【著者】 Takuya Kimura, Takeaki Inaoka, Ryo Izawa, Takumi Nakano, Chie Hotehama, Atsushi Sakuda, Masahiro Tatsumisago, Akitoshi Hayashi
【論文DOI】 https://doi.org/10.1021/jacs.3c03827

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 工学研究科
物質化学生命系専攻 応用化学分野
教授 林 晃敏(はやし あきとし)
TEL:072-254-9331
E-mail:akitoshihayashi[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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