最新の研究成果

メダカのオスはライバルオスの行動を把握して巧妙に射精量を調節していた!

2023年7月13日

  • 理学研究科
  • 研究

大阪公立大学大学院理学研究科の近藤 湧生特任助教、安房田 智司教授、幸田 正典特任教授および岐阜大学教育学部の古屋 康則教授らの研究グループは、ミナミメダカのオスが自身の置かれている状況(ライバルオスの存在やその行動)の違いに応じてどのように射精量を調節しているのかを、水槽実験で検証しました。




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                   ミナミメダカの産卵の様子

本研究では、3つの実験条件を設定し、ミナミメダカの産卵行動を詳細に観察し、その際の射精量を調べました(下図)。

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条件1:ライバルオスと直接的な接触ができる
条件2:ライバルオスを視覚的に認識できるだけ(別の区画からライバルオスを提示)
条件3:ライバルオスがいない


条件1では、ライバルオスの産卵への参加が2パターン観察されました。1つ目のパターンは、ライバルオスがペア産卵に混ざり、3個体が同時に放卵・放精する同時放精。2つ目は、産卵を終えてお腹に卵をぶら下げたメスに向かってライバルオスが放精する産卵後放精です。また同時放精の場合に、放卵・放精前にライバルオスの放精を妨害する行動(割り込み)が観察され、ライバルオスの割り込み行動によってペアオスとメスが引き剥がされる場合(割り込み成功)と引き剥がされない場合(割り込み失敗)のさらに2パターンが観察されました。

それぞれのパターンにおけるオスの射精量を調査した結果、ライバルオスがただ見えているだけ、またはオス同士が単に接触するだけの場合には射精量を変えず、ライバルオスが割り込みに成功した場合に限り、その時の射精量を増やしていることが明らかになりました。

これまで、ミナミメダカも含め魚類のオスは、ライバルの存在を視覚的に認識して射精量を調節すると考えられていましたが、本研究結果より、ミナミメダカのオスは予想していた以上に柔軟に状況に応じて射精量を調節していることが示されました。今後、他の動物でも今回の実験のように詳細な行動観察と射精量の定量をすることで、オスがさまざまな状況の変化に応じて射精量を調節していることが明らかになるかもしれません。また、ミナミメダカはモデル生物であるので、精子配分戦略に関わる生理的・遺伝的・認知的メカニズムの解明に今後つながると期待されます。

本研究成果は、2023610日に国際学術誌「Animal Behaviour」にオンライン掲載されました。

資金情報

科研費『脊椎動物の自己意識の起源の解明:魚類の鏡像自己認知、意図的騙し、メタ認知から』
科研費『魚類をモデルに脊椎動物の交尾に伴う精子進化の分子基盤を探る』
科研費『魚類の射精量の新規定量法の開発と繁殖戦略の異なる雄の精子配分戦略の解明』

掲載誌情報

【発表雑誌】 Animal Behaviour
【論 文 名 】 Sperm allocation in relation to male–male aggression and courtship in an externally fertilizing fish, the medaka
【著  者】

Yuki Kondo, Masanori Kohda, Yasunori Koya, Satoshi Awata

【掲載URL】 https://doi.org/10.1016/j.anbehav.2023.05.011

参考:大阪公立大学 動物社会学研究室Webサイト
https://www.omu.ac.jp/sci/biol-asoci/index.html

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科
教授 安房田 智司(あわた さとし)
TEL:06-6605-2607
E-mail:sa-awata [at]omu.ac.jp    [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

 

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