最新の研究成果

媒介主はアライグマ O157と似た特性を持つ人獣共通感染症菌を選択的に増殖できる培地を開発

2023年8月22日

  • プレスリリース
  • 獣医学研究科

ポイント

◇O157と非常に似た細菌特性を持つ、新興人獣共通感染症菌Escherichia albertii
◇細菌数の少ないアライグマ検体からも、E. albertiiを検出可能な培地を開発。
E. albertiiの感染経路や感染源解明への貢献が期待。

概要

地球温暖化により、野生動物の生息域が人の生活圏内へ広がっていることから、野生動物が媒介主となる人獣共通感染症の拡大が懸念されています。近年、日本国内でも被害報告が拡大しているアライグマなどによって媒介される新興人獣共通感染症菌E. albertiiは、O157などの大腸菌(Escherichia coli)と特性が非常に類似しており、人、特に小児に重篤な症状を引き起こす可能性があるとして注目されていますが、感染経路や薬剤耐性の有無などの詳しい特性は明らかになっていません。

感染経路の特定には、媒介主である野生動物の検体から菌を取り出し調べる必要がありますが、アライグマ検体中に含まれるE. albertiiの細菌数は極微量の場合が多く、これまで上手く取り出すことができていまませんでした。

大阪公立大学大学院 獣医学研究科の徐 炳婷(ジョヘイテイ)大学院生(大阪府立大学大学院 博士課程4年)、山﨑 伸二教授らの研究グループは、E. albertiiを選択的に増殖できる新しい培地を開発し、細菌数の少ないアライグマ検体から本菌を取り出すことに成功しました。本成果は、E. albertiiの細菌学的特性の解明に貢献するだけでなく、人感染が生じた場合の食中毒制御にも繋がることが期待されます。

本研究成果は、2023年6月27日に、英国応用微生物学会誌が刊行する国際学術誌「Journal of Applied Microbiology」にオンライン掲載されました。

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アライグマによるE. albertii媒介のイメージ

本研究は、中国からの留学生の徐 炳婷さんが中心に行った研究です。
本研究室では世界各国から留学生を受け入れており、国際的に課題となっている人獣共通感染症に対する診断法や予防法の開発を目指し、日々研究に取り組んでいます。

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山﨑 伸二教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Journal of Applied Microbiology
【論文名】Cefixime–tellurite-deoxycholate tryptic soy broth (CTD-TSB), a selective enrichment medium, for enhancing isolation of Escherichia albertii from wild raccoon fecal samples
【著者】Bingting Xu, Noritoshi Hatanaka, Sharda Prasad Awasthi, Keiji Tekehira, Atsushi Hinenoya, and Shinji Yamasaki
【掲載URL】https://doi.org/10.1093/jambio/lxad123

資金情報

本研究の一部は、JSPS科研費(17H04651、20K06396)の支援を受けて行われました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 獣医学研究科
教授 山﨑 伸二(やまさき しんじ)
Tel:072-463-5653
E-mail:yshinji[at]omu.ac.jp

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
Tel:06-6605-3411
E-mail:koho-list@ml.omu.ac.jp

該当するSDGs

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