最新の研究成果

AIで粉体の“混ざり具合”を高速シミュレーション 従来法の350倍の計算速度を実現!

2023年10月3日

  • プレスリリース
  • 工学研究科

ポイント

◇粉体が原料の製品(医薬品や電池等)は、粉体の“混ざり具合”が品質の決め手になる。
◇AIを活用して粉体の混ざり具合を高速シミュレーションする手法を開発。
◇従来法では実現できなかった、長時間にわたる粉体混合のシミュレーションが可能に。
◇粉体を用いる製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に貢献。

概要

医薬品から電池まで、粉体はあらゆる製品の原材料として使用されており、原材料である粉体がいかに均一に混ざっているか、が製品の品質を大きく左右します。この“混ざり具合”を予測する従来のシミュレーション手法は、粉体を構成する固体粒子の運動挙動を一つ一つ計算するため、計算に膨大な時間がかかることが課題です。

大阪公立大学大学院 工学研究科の岸田 尚樹大学院生(博士後期課程2年、JSPS特別研究員DC1)、仲村 英也准教授、大崎 修司准教授、綿野 哲教授らの研究グループは、AIを用いた新たなシミュレーション手法を開発し(図1)、従来法と変わらない精度で、計算速度を約350倍向上させることに成功しました。本手法を応用することで、今まで予測ができなかった、大規模(製造規模に相当)かつ長時間にわたる粉体混合シミュレーションの実現が期待されます。

本研究成果は、国際学術誌「Chemical Engineering Journal」のオンライン速報版に、2023年9月27日に掲載されました。

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図1 開発した予測モデル(RNNSR)の概念図

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図2 左:従来法(DEM)と右:RNNSRによる粉体混合挙動の予測

私たちが長年研究してきた粉体工学に関する知見と、機械学習を組み合わせて、複雑な粉体特有の振る舞いを予測することに成功しました。
本成果を発展させて、“粉体をどう扱うとどういう製品が出来上がるのか?”を仮想空間で予測しながら製品の開発や製造を迅速かつ効率良く行う、未来のものづくりの実現に貢献します。

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上段 左より岸田大学院生、仲村准教授
下段 左より大崎准教授、綿野教授

資金情報

本研究は、科研費基盤研究(B)(22H01852)、日本学術振興会特別研究員奨励費DC1(22KJ2627)などの支援を受けて行われました。

掲載誌情報

【発表雑誌】Chemical Engineering Journal
【論文名】Development of ultra-fast computing method for powder mixing process
【著者】Naoki Kishida, Hideya Nakamura, Shuji Ohsaki, and Satoru Watano
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.cej.2023.146166

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 工学研究科
准教授 仲村 英也(なかむら ひでや)
TEL:072-254-9451
E-mail:hideyanakamura[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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