最新の研究成果

霊長類での有効性を確認! 新規肺炎球菌ワクチンを開発

2023年11月17日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇幅広い血清型をカバーできる新規の肺炎球菌ワクチンを開発中。
◇カニクイザルを用いた実証実験でワクチンの有効性を確認。
◇何度も注射を打つ必要のない肺炎球菌ワクチン開発実現に期待。

概要

中耳炎や副鼻腔炎、髄膜炎等が含まれる肺炎球菌感染症の予防にはワクチンが有効とされていますが、ワクチンの普及によりワクチンでカバーできない血清型も増えています。現在肺炎球菌の血清型は100種類ほど同定されており、ワクチンに含まれない血清型を原因とする肺炎球菌の感染増加が問題視されています。

大阪公立大学大学院医学研究科ゲノム免疫学の植松 智教授、藤本 康介准教授、横田 知衣子大学院生(大阪市立大学大学院医学研究科博士課程4年)らの研究グループは、独自に開発した粘膜ワクチン技術※と、幅広い血清型をカバーできる肺炎球菌表層タンパクを組み合わせ、新規の肺炎球菌ワクチンを開発。マウスモデルとカニクイザルを用いた実証実験を行い、ワクチンを接種した対象動物群では肺炎球菌感染による肺炎を明らかに抑制できていることを確認しました(右図)。 

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図:肺炎球菌感染による肺炎の発症の様子
左のコントロール(ワクチン非投与)群では、矢印部分に肺炎を発症。右のワクチン投与群では著明に抑制(カニクイザル)


本研究成果は「Inflammation and Regeneration」に2023年11月15日にオンライン掲載されました。


研究チームは、免疫グロブリンA(IgA)を主体とした抗原特異的な粘膜免疫応答を、あらゆる粘膜面に自在に誘導できる粘膜ワクチンを開発し、2019年に報告しています。
【2019年8月23日プレスリリース:https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2019/190823-2

本研究では私たち独自の粘膜ワクチン技術を用いて、新しい肺炎球菌ワクチンを開発しています。病原体の侵入門戸である粘膜面に抗原特異的なIgAを多量に誘導することで「感染の成立を未然に防ぐ」新しいコンセプトの粘膜ワクチンを目指しています。この粘膜ワクチン技術がヒトに応用できるようになれば、感染症予防に大きく役立つと考えています。

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横田 知衣子大学院生

 

掲載誌情報

【発表雑誌】Inflammation and Regeneration
【論 文 名】Prime-boost-type PspA3+2 mucosal vaccine protects cynomolgus macaques from intratracheal challenge with pneumococci
【著  者】Chieko Yokota†, Kosuke Fujimoto†, Natsuko Yamakawa, Masamitsu Kono, Daichi Miyaoka, Masaki Shimohigoshi, Miho Uematsu, Miki Watanabe, Yukari Kamei, Akira Sugimoto, Natsuko Kawasaki, Takato Yabuno, Tomotaka Okamura, Eisuke Kuroda, Shigeto Hamaguchi, Shintaro Sato, Muneki Hotomi, Yukihiro Akeda, Ken J. Ishii, Yasuhiro Yasutomi, Kishiko Sunami, Satoshi Uematsu*(†共同筆頭著者、*責任著者)
【掲載URL】https://doi.org/10.1186/s41232-023-00305-2

プレスリリース全文 (400.8KB)

資金情報

本研究は、日本学術振興会(JSPS)研究費(19K17932、17K19543)、日本医療研究開発機構(AMED)研究費(ワクチン・新規モダリティ研究開発事業:革新的アジュバント・ワクチンキャリアの開発と技術支援ならびにデータベースの構築、JP223fa727001)からの支援を受けて行われました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 医学研究科
准教授:藤本 康介(ふじもと こうすけ)
TEL:06-6645-3926
E-mail:kfujimoto[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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