最新の研究成果

見えなくても伝えたい想いがある! 視覚障害者を支援するAIを活用した写真撮影システム「VisPhoto」を開発

2023年12月22日

  • 情報学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇全方位カメラでの360度撮影により、被写体にカメラを向けることなく、簡単に撮影可能。
◇AIによる物体検出で対象物の位置や種類を把握し、写真に残したい部分をピンポイントで切り取り写真データとして抽出。

概要

大阪公立大学大学院情報学研究科の岩村 雅一准教授、平林 直樹氏(大阪府立大学大学院 工学研究科 修了)らと独立行政法人大学入試センター研究開発部の南谷 和範教授の研究グループは、全方位カメラを用いた写真撮影システム「VisPhoto」を開発しました(図1)。

今やSNSでの写真共有は、目が見える人(晴眼者)では当たり前に行われていますが、視覚障害者ではどうでしょうか。視覚障害者においても、思い出を写真として残し、家族や友人へ共有したいという想いがあります。このような方をサポートすべく、本研究グループでは視覚障害者の撮影をサポートするスマートフォン用の音声ガイド付きアプリを提供してきましたが、被写体がフレームに入らない場合や複数ある場合、動いている場合は上手く撮影ができないという課題があります。

本システムではまず、撮影した画像に含まれる対象物の位置や種類をAIの物体検出で把握します。そして、写真に残したい対象物を、撮影時に録音した音声や、ウェブインタフェースで選択することで、その部分を切り取り、写真データとして抽出できます。本技術は360度の撮影が可能なため、被写体にカメラを向けず簡単に写真を撮影ができる画期的な新システムです。

本研究成果は、Association for Computing Machineryが刊行する「Proceedings of the 25th International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility」に、2023年10月22日に掲載され、Beat Paer Awardを受賞しました。

press_1222_2図1 新たに開発した写真撮影システム「VisPhoto」の概略図

VisPhotoを視覚障害者の方に使ってもらい、喜びの声を聞けたことは非常に印象的な経験でした。より良いシステムになるよう改善を重ねたり、システムの有用性を定量的に示す方法を考えたりすることにはかなり苦労しました。視覚障害の有無にかかわらず、SNS映えするような写真を撮影できるシステムの実現に近づいたことを、とても嬉しく思います。

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平林 直樹氏

資金情報

本研究の一部は、電気通信普及財団 2017年度研究調査助成の支援を受けて行われました。

掲載誌情報

【発表雑誌】Proceedings of the 25th International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility (ASSETS 2023)
【論文名】VisPhoto: Photography for People with Visual Impairments via Post-Production of Omnidirectional Camera Imaging
【著者】Naoki Hirabayashi, Masakazu Iwamura, Zheng Cheng, Kazunori Minatani, Koichi Kise
【掲載URL】https://doi.org/10.1145/3597638.3608422

関連情報

プロジェクトページ
https://opu-imp.github.io/VisPhoto/

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学 大学院情報学研究科
准教授 岩村 雅一(いわむら まさかず)
TEL:072-254-9277
E-mail:masa.i[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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