最新の研究成果

光合成にかかわる脂質の機能解明が大きく前進! モヤシが葉緑体をつくるためのカギは「酸性リン脂質」

2024年1月9日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

本研究のポイント

  • 暗所で発芽した被子植物(モヤシ)が子葉細胞内に作る、葉緑体※1に発達する前の細胞小器官(エチオプラスト)について、膜を作る脂質に着目。
  • ホスファチジルグリセロール(PG)という酸性リン脂質が、エチオプラストがもつ特殊な膜構造の形成や色素の合成に不可欠であることを明らかに。
  • スルホキノボシルジアシルグリセロール(SQDG)がPGの役割を一部補うことを確認。

概要

光合成には葉緑体が必要であることはよく知られていますが、暗所で発芽した被子植物(モヤシ)には葉緑体がありません。しかし、実はモヤシは光を浴びる前から葉緑体を作る準備をしているのです。
モヤシの先端には黄白色の小さな葉(子葉)があり、その子葉の細胞内にエチオプラストと呼ばれる器官、さらにその内部にはプロラメラボディと呼ばれる構造体があります。プロラメラボディにはクロロフィル※2になる前の物質(クロロフィル中間体)が蓄えられており、モヤシに光が当たると、直ちにクロロフィルに変えられます。それに伴い、プロラメラボディはチラコイド膜※3に、エチオプラストは葉緑体になって、光合成が可能となるのです。
この変化や関連物質について、さまざまな研究が行われてきました。これまでに、プロラメラボディを作る膜脂質※4のうち、ガラクト脂質(MGDG、DGDG)の重要性は示されましたが、残りの2つの脂質、PGとSQDGの役割は不明でした。

大阪公立大学大学院理学研究科の吉原 晶子大学院生(日本学術振興会特別研究員DC1)、小林 康一准教授、日本女子大学理学部の小林 啓子研究員(日本学術振興会特別研究員RPD)、永田 典子教授、弘前大学農学生命科学部の藤井 祥助教、東京大学大学院総合文化研究科の和田 元教授の共同研究グループは、シロイヌナズナ※5の変異体を用いた解析から、PGがプロラメラボディの格子構造の形成やクロロフィル中間体の合成に必要であること、またSQDGがPGの役割を一部補うことを解明しました。本研究により、プロラメラボディを構成する4種類の脂質の重要性が判明し、中でもPGがエチオプラストの発達に特別な役割を担うことが明らかになりました。 この発見は、植物が効率的に葉緑体を形成し光合成を開始する仕組みを理解する上で重要な知見となります。本研究成果は2023年11月14日、「Plant Physiology」に掲載されました。

用語解説

※1 葉緑体
藻類や植物の細胞内に含まれる細胞小器官で、光合成反応を担う。二重の包膜に加え、内部にチラコイド膜をもつ。チラコイド膜にはクロロフィルが蓄積するため、葉緑体は細胞内で緑色の粒として観察される。

※2 クロロフィル
葉緑素とも呼ばれる植物の緑色色素で、光合成に必要な光エネルギーを吸収する機能をもつ。光化学系Iや光化学系IIの反応中心に存在し、光エネルギーを電子エネルギーに変換するほか、光捕集アンテナ複合体内で光エネルギーを捕捉する役割を担う。

※3 チラコイド膜
葉緑体の内部にみられる扁平な袋状の膜構造で(図 1 参照)、光合成の初期反応の場である。膜脂質が作る脂質二重層(※4)に、クロロフィルやタンパク質が蓄積している。光合成の光化学反応や電子伝達反応に加え、ATP合成反応もチラコイド膜を介して行われる。

※4 膜脂質
生体膜の基本構造を作る疎水性の分子で、グリセロールを骨格としたグリセロ脂質が主である。動物細胞や酵母ではリンを結合したリン脂質が生体膜の主成分となるが、植物細胞では糖脂質の割合が多く、そのほとんどは葉緑体に存在する。脂質分子が極性頭部を外側に、疎水性尾部を内側にして並ぶことで、脂質二重層を形成する(図 1 参照。極性頭部を丸で、疎水性尾部を 2 本の線で表している)。葉緑体のチラコイド膜やエチオプラストのプロラメラボディも、膜脂質による脂質二重層により形成される。

※5 シロイヌナズナ
被子植物であるアブラナ科シロイヌナズナ属の 1 年草。学名は Arabidopsis thaliana。モデル実験生物として植物で初めてゲノム解読が行われ、多くの変異系統やデータベースが世界各国の研究機関で維持・管理されている。

掲載誌情報

雑誌名:

Plant Physiology(IF = 8.005

論文名:

Anionic lipids facilitate membrane development and protochlorophyllide
biosynthesis in etioplasts

著者:

Akiko Yoshihara, Keiko Kobayashi, Noriko Nagata, Sho Fujii, Hajime Wada
and Koichi Kobayashi

掲載URL

https://academic.oup.com/plphys/advance-article/doi/10.1093/plphys/kiad604/7420153

研究に関する問い合わせ先

大阪公立大学 国際基幹教育機構
准教授 小林 康一(こばやし こういち)
Tel:072-254-9749
E-mail:kkobayashi[at]omu.ac.jp  [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:上嶋 健太
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

該当するSDGs

  • SDGs04