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手術への耐性・心肺機能等を正しく評価するために! 上肢運動負荷試験による心肺機能評価の可能性を検証

2024年1月11日

  • 生活科学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇通常、下肢による測定が行われる試験について、上肢で行う場合の差に注目
◇上肢・下肢の機能に優れた本学ボート部とサイクリング部の男子アスリート17名が実験参加
◇調査結果をもとに推定した最大酸素摂取量は、下肢よりも上肢運動負荷試験時が低いことから、上肢による測定は下肢の完全な代替にはなれないことが明らかに
◇障がいや怪我による下肢利用困難者に向けた上肢運動負荷試験による心肺機能評価への第一歩

概要

心肺機能の評価指標として用いられる最大酸素摂取量(1分間に体内に取り込むことができる酸素の最大量)は、一般的に下肢運動による運動負荷試験で測定します。下肢運動が困難な人は上肢運動で測定する必要がありますが、腕の疲労などが原因で十分な運動ができないため、過小評価されることが指摘されています。

大阪公立大学 都市健康・スポーツ研究センター 横山 久代教授、生活科学研究科 出口 美輪子特任助教、本宮 暢子特任教授らの研究グループは、心肺機能評価を目的とした運動負荷試験において、上肢を下肢の代わりに利用できるか、上肢を用いた運動負荷試験の結果が上肢のトレーニング状態に影響されるのか否かを明らかにするため、本学ボート部(漕艇部)とサイクリング部に所属する17名の男子アスリートを対象に、下肢エルゴメータと上肢エルゴメータを用いた運動負荷試験中の心拍数と酸素摂取量の関係について調査し、最大酸素摂取量を推定しました(図)。

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図. 下肢エルゴメータ(左)と上肢エルゴメータ(右)

その結果、ボート部・サイクリング部ともに、推定された最大酸素摂取量は、下肢エルゴメータよりも上肢エルゴメータの方が低い結果となりました。本研究により、上肢のトレーニング経験に関わらず上肢エルゴメータを用いた運動負荷試験は心肺機能を過小評価することが分かりました。

今後、心肺機能評価のために上肢エルゴメータで運動負荷試験を行うには、運動中の心拍数と酸素摂取量との関係にどのような因子が影響するのかを明らかにする必要があると考えられます。

本研究成果は2023年12月3日、学術誌「Applied Sciences」にオンライン掲載されました。


下肢の代わりに上肢を用いた運動負荷試験が心肺機能や運動耐容能の評価として利用可能になれば、日常的に車椅子を利用している方や、整形外科的な問題で下肢を用いた運動ができない方の役に立ちます。本研究で得られた結果を足掛かりに、上肢を用いた運動負荷試験の適用可能性を広げるべく研究を進めていきたいと考えています。

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横山教授 本宮特任教授 出口特任助教

 

資金情報

本研究の一部は、文部科学省「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」2022年度連携型共同研究助成による助成を受けました。

掲載誌情報

【発表雑誌】Applied Sciences
【論 文 名】Does Exercise Testing with Arm Crank Ergometer Substitute for Cycle Ergometer to Evaluate Exercise Capacity?
【著  者】Miwako Deguchi, Hisayo Yokoyama, Nobuko Hongu, Atsuya Toya, Takahiro Matsutake, Yuta Suzuki, Daiki Imai, Yuko Yamazaki, Masanori Emoto and Kazunobu Okazaki
【掲載URL】https://doi.org/10.3390/app132312926

プレスリリース全文 (671.5KB)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学 都市健康・スポーツ研究センター
教授: 横山 久代(よこやま ひさよ)
TEL:06-6605-2947
E-mail:yokoyama_hisayo[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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