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初撮影から1年後のM87ブラックホールの姿

2024年1月18日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

初撮影から1年後のM87ブラックホールの姿 -新望遠鏡の参加-

イベント・ホライズン・テレスコープはM87巨大ブラックホールの新たな観測画像を公開しました。2017年の初撮影(左)から約1年後に撮影された2018年の画像(右)でも同じ大きさのシャドウが再現されていることがわかりました。2018年の観測には、新たにグリーンランド望遠鏡が参加しています。明るいリングに囲まれた中央の暗闇がブラックホールのシャドウ(影)に相当し、リングの最も明るい場所は2017年の画像では6時の方向、2018年の画像では約30度異なる5時の方向にあります。
画像クレジット:EHT Collaboration

概要

大阪公立大学の研究者が参加する国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・コラボレーション」は、史上初の撮影に成功した楕円銀河M87の巨大ブラックホールについて新たな観測画像を公開しました。今回公開された画像は、初撮影が行われた2017年4月の観測から約1年後の2018年4月に観測されたものです。2018年の観測では新たにグリーンランド望遠鏡がネットワークに参加し、またデータ記録速度が向上したことでM87ブラックホールの新たな姿が明らかとなりました。1年後の画像では、2017年に観測されたものと同じ大きさのリング構造が確認されました。この明るいリングに囲まれた中央の暗い部分が、まさに一般相対性理論から予言されている「ブラックホールシャドウ」の存在を裏付けています。一方で、リングの最も明るい場所は角度にして約30度異なっており、ブラックホール周辺の物質が乱流状に振る舞っていることを示唆しています。この成果は、欧州の天文学専門誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジクス』に掲載されました。

本研究成果の詳細はEHT-Japanプレスリリースをご覧ください。
https://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/c/pr/pr20240118

小川 英夫客員教授のコメント

今回、新しくEHTに参加したグリーンランド望遠鏡に搭載した超伝導受信機は大阪公立大学が開発しました。
大阪公立大学電波天文グループは2012年、台湾の中央研究院天文及天文物理研究所からブラックホール観測を目的とした12mアンテナに搭載する230GHz(波長1.3mm)超伝導受信機の要請を受け、開発を開始しました。
本研究グループは既に国立天文台宇宙電波観測所に設置されている大阪公大1.8m電波望遠鏡において超伝導低雑音230GHz受信機の経験があり、12m受信機の開発は短時間で超低雑音高性能受信機の開発できるという算段がありました。
そして、1号機を2014年に、2号機を2016年に完成させて台湾に送り出しました。(写真1. 1号機、写真2. 2号機、写真3. 2号機)
そのわずか2年後、2号機がグリーンランドに設置された12mアンテナに搭載され、ブラックホールの観測に成功しました。
そして、今回、その結果を報告できることになりました。これほど開発者冥利に尽きる話はありません。今後もブラックホール等の観測に参加し、これら学問の発展に寄与したいと考えております。
なお、現在は国立天文台水沢VLBI観測所に設置されている20mアンテナVERAに搭載する86GHz帯(波長3.5mm)低雑音受信機の開発を行っており、これらの受信機も試験観測に成功しており、今後の展開が期待されています。(写真4.)

1号機超伝導受信機写真1. 1号機超伝導受信機

2号機心臓部コルゲートホーン,両偏波超伝導ミクサ等写真2. 2号機心臓部コルゲートホーン,両偏波超伝導ミクサ等

2号機超伝導受信機写真3. 2号機超伝導受信機

VERAに搭載された86GHz帯常温型の低雑音受信機(手前部分)
写真4. VERAに搭載された86GHz帯常温型の低雑音受信機(手前部分) 

論文情報

雑誌名:

Astronomy and Astrophysics

論文タイトル:

The persistent shadow of the supermassive black hole of M87. I. Observations, calibration, imaging, and analysis

著者:

Event Horizon Telescope Collaboration et al.

掲載URL:

https://doi.org/10.1051/0004-6361/202347932
研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科
客員教授:小川 英夫(おがわ ひでお)
TEL072-254-9726
E-mailogawah[at]omu.ac.jp [at]@に変更してください。 

特任研究員:長谷川 豊(はせがわ ゆたか)
TEL072-254-9484
E-maily.hasegawa [at]omu.ac.jp ※[at]@に変更してください。

教授:大西 利和(おおにし としかず)
TEL072-254-9727
E-mailtonishi [at]omu.ac.jp [at]@に変更してください。 

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

該当するSDGs

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