最新の研究成果

尋常性ざ瘡(ニキビ)患者を対象としたバクテリオファージ療法の臨床試験開始のお知らせ

2024年1月18日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

大阪公立大学大学院医学研究科 皮膚病態学の鶴田 大輔教授、立石 千晴准教授、ゲノム免疫学の植松 智教授、藤本 康介准教授らの研究グループは、尋常性ざ瘡(ニキビ)患者を対象としたバクテリオファージ療法に関する臨床試験を開始いたします。

背景

薬剤耐性菌による死亡者数は2050年には世界で1,000万人を超えると推定されており、国際的な医療問題となっています。新規の抗菌薬開発は非常に困難を極めており、代替治療法の創出が急務です。このような状況を踏まえて、抗菌薬とは異なる機序の治療法の開発が世界中で進んでおり、バクテリオファージを用いた治療法(ファージ療法)が代替治療法の一つとして注目されています。しかし、日本国内ではヒトに対するファージ療法の実用化は全く進んでいません。

<尋常性ざ瘡について>

尋常性ざ瘡(以下、「ニキビ」)は、皮膚の慢性炎症性疾患の一つです。皮脂(皮膚のあぶら)の分泌が多いことや毛穴の先が詰まることで、毛穴の中に皮脂がたまり、炎症が始まります。この皮脂のたまりには、アクネ菌が増えやすい状態になっています。アクネ菌はどんな毛穴にもいる常在菌ですが、数が増えると赤いぶつぶつしたニキビや膿がたまったニキビの状態になります。

<ファージ療法について>
バクテリオファージは、細菌(バクテリア)に感染するウイルスの総称であり、略して「ファージ」とも呼ばれます。特定の細菌に感染するウイルスであるファージを用いて、細菌が原因となる病気を治療する手法のことをファージ療法と言います。抗菌薬に薬剤耐性をもっている細菌に対しても耐性菌を壊すことができる可能性が期待されています。

研究概要

化粧品として日本国内でも販売されているロシアのミクロミル社製造のファージ製剤(日本名称:イスクラファージスキンバランス、ロシア名称:ファゴデルム)を用いて、皮膚の慢性炎症性疾患の一つであり耐性菌も生じることのある尋常性ざ瘡患者を対象に、安全性および効果の評価を目的とする臨床研究を行います(臨床研究の詳細につきましては、https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs051230164を参照ください)。

近い将来、死亡原因の第一位が薬剤耐性菌を含む感染症になることが既に予測されています。治療の切り札としてのファージ療法の国内実用化を目指した大変重要な臨床研究になります。研究チーム一丸となり、本研究を進めてまいります。

press_0306_fujii02

鶴田教授、立石准教授、植松教授、藤本准教授

 

プレスリリース全文 (396.3KB)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 医学研究科
准教授:立石 千晴(たていし ちはる)
TEL:06-6645-3826
E-mail: chiharu0326[at]omu.ac.jp 

大阪公立大学大学院 医学研究科
准教授:藤本 康介(ふじもと こうすけ)
TEL:06-6645-3926
E-mail: kfujimoto[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs03
  • SDGs17