最新の研究成果

食品・医薬品の安全製造へ 有害細菌を素早く同時検出することが可能に

2024年2月27日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇細菌の抗体を導入した検査標識に電流を流し、その電気信号から細菌の種類・量を検出。
◇培養法では結果が出るまで数日かかるところ、1時間以内に複数菌種の同時検出が可能に。
◇手のひらサイズまで小型化した装置をスマホアプリと連動することで、細菌汚染レベルを瞬時に確認。

 概要

病原性大腸菌や黄色ブドウ球菌など、集団食中毒や院内感染の原因となる有害微生物の検出には培養法などが用いられますが、培養に時間がかかる、複数菌種の同時識別が不可能などの問題点があります。そのため、原因を早期特定し被害の拡散を抑えるには、複数の菌種を同時に、かつ迅速に検査できる手法が必要です。

大阪公立大学大学院 工学研究科の板垣 賢広大学院生(博士後期課程1年)、中尾 彰宏大学院生(博士前期課程1年)、椎木 弘教授らの研究グループは、金ナノ粒子とポリマー粒子から構成されるAuNHに腸管出血性大腸菌(O26)の抗体を、銅ナノ粒子とポリマー粒子から構成されるCuNHに黄色ブドウ球菌の抗体を導入した検査標識を開発。これを肉汁などの試料に混ぜ、電流を流すことで、得られた電気信号から細菌の種類と量を同時に検出できる手法を開発しました。また検査装置を小型化してスマホアプリと連動させることで、食品や医薬品の製造現場においても細菌汚染レベルを瞬時に確認することが可能です。今後は新たな検査標識の開発を進め、さらに多くの菌種の同時検出を目指します。

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図(左)開発した検査標識ごとの電気信号
(右)手のひらサイズの装置で計測し、スマホアプリで数値を瞬時に確認

本研究成果は、米国化学会が刊行する国際学術誌「Analytical Chemistry」に2024年2月3日にオンライン掲載され、Supplementary Journal Coverに選出されました。

標識やセンサ、アプリなどの開発によって、これまでなかった複数菌種の同時検出を簡易方法で実現しました。本手法を用いることで、いつでも、どこでも、だれでも検査が可能です。食品や医薬品の製造現場などで活用することで、安心で豊かな生活の形成に貢献したいと思います。

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板垣 賢広大学院生

掲載誌情報

【発表雑誌】Analytical Chemistry
【論文名】Simultaneous Electrochemical Detection of Multiple Bacterial Species Using Metal-Organic Nanohybrids
【著者】Satohiro Itagaki, Akihiro Nakao, Shogo Nakamura, Masashi Fujita, Shigeki Nishii, Yojiro Yamamoto, Yasuhiro Sadanaga, and Hiroshi Shiigi
【掲載URL】https://doi.org/10.1021/acs.analchem.3c04587

資金情報

本研究の一部は、JST研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START)(JPMJST1916)、および科学研究費助成事業(科研費)基盤研究(A)(21H04963)、挑戦的萌芽(開拓)(22K18442)からの支援を受けて行われました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 工学研究科
教授 椎木 弘(しいぎ ひろし)
TEL:072-254-9875
E-mail:shii[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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