最新の研究成果

摘出困難な頭蓋底脳腫瘍に対する内視鏡を用いた新たな低侵襲開頭手術法を確立

2024年4月9日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇脳腫瘍の中で摘出が最も難しい腫瘍の一つである錐体先端部の病変に対し、世界標準となりうる内視鏡を用いた新たな低侵襲開頭手術法を確立。
◇本手法では、従来の顕微鏡下開頭手術(顕微鏡下前経錐体到達法)による煩雑な工程を改良。
◇小さな傷(皮膚切開)で、従来手術と同様の腫瘍切除率及び患者の日常生活活動能力の維持を達成。

概要

頭蓋底部は“頭蓋骨の底”を指し、内頸動脈、椎骨動脈、脳神経、脳下垂体、海綿静脈洞、眼球、内耳などの重要で複雑な組織が密集しています。そのため、頭蓋底部、中でも錐体先端部(図1)に発生した脳腫瘍や脳動脈瘤の摘出を行う外科手術は、全ての脳外科手術の中で最も難しいものの一つと言われています。

大阪公立大学医学研究科 脳神経外科学の後藤 剛夫教授、森迫 拓貴講師らのグループは、脳深部に発生する錐体先端部病変に対する外科的治療において、内視鏡を用いた新たな低侵襲手術法「内視鏡下前経錐体到達法」を開発し(図2)、腫瘍切除率98.5%、手術後の日常生活活動能力の改善率30%、維持率70%という極めて良好な治療成績を収めることに成功しました。

本研究成果は、2024年4月5日に米国の医学専門学術誌「Journal of Neurosurgery」のオンライン速報版に掲載されました。

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図1 頭蓋底部病変の発生部位を示した図
緑色が錐体先端部および錐体斜体部

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図2 皮膚切開と開頭範囲を示した図

錐体先端部の病変に対しては顕微鏡を用いた前経錐体到達法が用いられますが、錐体骨削除を含めた開頭手技は煩雑で時間を要する工程でした。今回、我々は従来の顕微鏡を用いた開頭手術の方法を改良し、内視鏡を用いて低侵襲な方法で良好な治療成績を収めることに成功しました。この到達法が国内外で普及することで、多くの患者さんに低侵襲で安全な治療ができることを期待します。

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後藤教授(左)、森迫講師(右)

掲載誌情報

【発表雑誌】Journal of Neurosurgery
【論文名】Purely endoscopic subtemporal keyhole anterior transpetrosal approach to access the petrous apex region: surgical techniques and early results
【著者】Hiroki Morisako, Tsuyoshi Sasaki, Masaki Ikegami, Yuta Tanoue, Hiroki Ohata, Sachin Ranganatha Goudihalli, Juan Carlos Fernandez-Miranda, Kenji Ohata, Takeo Goto
【掲載URL】https://doi.org/10.3171/2024.1.JNS231774

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 医学研究科 脳神経外科学
教授 後藤 剛夫(ごとう たけお)
講師 森迫 拓貴(もりさこ ひろき)
TEL:06-6645-3846
E-mail:gotot[at]omu.ac.jp
      hmorisako[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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