最新の研究成果
新たな数式で腎臓の「働きすぎスコア」を定義 従来値にはなかった加齢の影響も考慮
2024年12月12日
- 医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇腎機能の低下により糸球体が無理やり働いている状態(過剰ろ過)を判断する、新たな数式を定義。
◇高齢患者では、従来の定義値からでは過剰ろ過と判断されない症例があることが明らかに。
◇過剰ろ過のより正確な診断により、糖尿病性腎症の早期発見・治療に繋がる可能性。
概要
糖尿病性腎症は、腎機能の指標のである糸球体ろ過量(GFR)とアルブミン尿の測定結果から診断されます。アルブミン尿は、GFRが低下する前段階の症状で、肥満やインスリン抵抗性によって起こる過剰ろ過が原因で排出されます。しかし、過剰ろ過を規定するGFRの値は定まっておらず、異常値の範囲を示す基準が求められていました。また、GFRの値は年齢とともに低下しますが、これまで年齢によるGFRの低下は、過剰ろ過の定義には考慮されていませんでした。
大阪公立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学の津田 昌宏講師らの研究グループは、腎移植ドナー候補者180人(男性77人、女性103人)の正確なGFRを測定し、年齢およびGFRの値から、過剰ろ過の判断値を算出する新たな数式を定義しました。従来の定義値では、過剰ろ過ではないと判断された症例のうち、本式では過剰ろ過であると判断された症例2例はいずれも高齢者でした。このことから、特に高齢者では、従来の定義値では過剰ろ過として検出できない症例があることが分かりました。さらに、肥満患者ではGFR値の体表面積での補正により、過剰ろ過を検出することができないという先行研究での報告が、本研究でも確認されました。過剰ろ過は糖尿病性腎症の前段階のため、新たな数式を用いてより正確に診断することで、早期発見・早期治療に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2024年12月12日に国際学術誌「Hypertension research」のオンライン速報版に掲載されました。
過剰ろ過が正確に定義されていないこと、また従来の定義に年齢の影響を加味しなければならないことに気づき、今回論文にするまで6~7年かかりましたが、その思いを形にすることができ良かったです。少しでも臨床で役に立つことができれば幸いです。
津田 昌宏講師
掲載誌情報
【発表雑誌】Hypertension research
【論文名】Definition of hyperfiltration taking into account age-related decline in renal function in kidney donor candidates with obesity and glucose tolerance disorder
【著者】Akihiro Tsuda, Katsuhito Mori, Hideki Uedono, Shinya Nakatani, Yuki Nagata, Masafumi Kurajoh, Shinsuke Yamada, Tomoaki Morioka, Eiji Ishimura, Junji Uchida, Masanori Emoto
【掲載URL】https://doi.org/10.1038/s41440-024-02020-y
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科
講師 津田 昌宏(つだ あきひろ)
TEL:06-6645-3806
E-mail:naranotsudadesu[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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