最新の研究成果

柔軟性と秩序性を両立した新有機常磁性体を開発 -フレキシブルデバイスへの応用に期待-

2025年5月19日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇次世代IoTデバイスを拓く、柔軟性と秩序性を併せ持つ分子性常磁性体を開発。
◇高度に秩序化された分子膜で、特異な磁気応答と温度変化に応じた動的構造変化を両立。
◇フレキシブルデバイス、スピントロニクス、ナノメディシンなど、幅広い分野での応用へ期待。

概要

近年、IoTInternet of Things)の急速な発展に伴い、フレキシブルデバイスなどへの応用が期待される「柔軟な」磁性体へのニーズが高まっています。このニーズに応えるべく、東京大学物性研究所の藤野智子助教・森初果教授、原田慈久教授らの研究グループ、東京理科大学の菱田真史准教授、自然科学研究機構分子科学研究所の中村敏和チームリーダーらの研究グループ、大阪公立大学の牧浦理恵准教授らの研究グループ、物質・材料研究機構の原野幸治主幹研究員、科学技術振興機構の大池広志さきがけ専任研究者(研究当時)は、柔軟性と高い秩序性を兼ね備えた新しい分子性常磁性体※1の開発に成功しました。本研究で開発された構造体は、水中で高い秩序性を維持しながらも、分子間相互作用に基づく特異な磁気特性を示します。さらに、温度変化に連動して構造が大きく変化するという動的な性質を持ち合わせていることがわかりました。スピンをもつ平面分子が規則正しく並んだ分子性常磁性体において、動的な膜構造変化を示した初めての例となります。

この成果は、柔軟で磁性を制御できるソフトな分子性常磁性体の開発を加速させ、フレキシブルデバイスなどの幅広い分野の応用につながることが期待されます。

本研究成果は、2025年5月17日に国際学術誌「Advanced Science」にオンライン掲載されました。

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軟性と秩序性を両立する分子性常磁性体。水中で温度に伴い構造が変化した。

掲載誌情報

【発表雑誌】Advanced Science
【論文名】Macroscopic Structural Transition of Nickel Dithiolate Capsule with Uniaxial Magnetic Anisotropy in Water
【著者】藤野智子、菱田真史、伊藤雅聡、中村敏和、浅田瑞枝、倉橋直也、木内久雄、原田慈久、原野幸治、牧浦理恵、武野カノクワン、横森創、大池広志、森初果
【掲載URL】https://doi.org/10.1002/advs.202504967

資金情報

本研究は、日本学術振興会 科学研究費 (JP19H05717、JP19H05715、JP20H05206、JP21K05018JP22H04523、JP22H00106、JP23H04874、JP23K17865、JP23KK0255、JP23K22435、JP23H04861JP24K01301)、Core-to-coreプログラム(JPJSCCA20240001)、MEXT「マテリアル先端リサーチインフラ」事業(JPMXP1224MS1096)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR22Q8、JPMJPR21Q2)、公益財団法人 内藤記念科学記念財団、池谷科学技術振興財団、花王芸術・科学財団の支援により実施されました。

用語解説

※1 分子性常磁性体…スピンをもった開殻性分子が相互作用し合うことで、磁気特性を示す有機材料。外部から磁場をかけると磁場に引き寄せられ、磁場を切ると磁性が消失する性質を示す。特に、分子が規則的に配列した積層構造では、分子間の異方的な相互作用が磁気特性に大きく影響する。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
准教授 牧浦 理恵(まきうら りえ)
TEL:072-254-9851
E-mail:rie.makiura[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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