最新の研究成果

歯科健診未受診の高齢者で死亡リスクが約1.5倍に 歯科健診が“命を守る”可能性、大阪府94万人データから判明

2025年5月21日

  • 看護学研究科
  • プレスリリース

概要

歯の本数などの口腔の健康状態と死亡リスクには関連があることが知られており、高齢化が進む日本では健康寿命の延伸を目指し、75歳以上の後期高齢者を対象とした後期高齢者歯科健康診査事業1(以下、歯科健診)が2018年度から開始されました。しかし、高齢者を対象とした公的な歯科健診は世界でも例がなく、その有益性は明らかになっていません。

大阪公立大学大学院看護学研究科の大槻 奈緒子講師と大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター保健管理部門の山本 陵平教授らの共同研究グループは、2017年10月~2019年3月の期間、継続して大阪府後期高齢者医療保険に加入していた75歳以上の946,709人を対象に、歯科健診・歯科受診の有無と死亡の関連を生存時間解析で検討しました。対象者を4群(①歯科健診有り・歯科受診有り ②歯科健診有り・歯科受診無し ③歯科健診無し・歯科受診有り ④歯科健診無し・歯科受診無し)に分け、年齢や基礎疾患などの背景因子が一致する対象者ごとに分析した結果、④群の高齢者は、②群の高齢者に比べて死亡リスクが男性で1.45倍、女性で1.52倍であることが明らかになりました(図1)。

本研究成果は、2025年5月7日に国際学術誌「Journal of Gerontology: Medical Sciences (The Journal of Gerontology series A)」のオンライン速報版に掲載されました。

pr_0520図1 高齢者における歯科健診・歯科受診の有無と累積全死亡率

人口の高齢化に伴い、世界的に口腔と全身の健康の関連が注目されています。2018年度から日本で開始した後期高齢者歯科健診事業の受診勧奨に繋がるエビデンスを、大阪府民250万人コホート研究(OHSAKA study※2)から創出し、府民の健康寿命の延伸に助力できたことを嬉しく思います。

後期高齢者歯科健診事業はまだまだ認知度が低いですが、今後効果的に受診勧奨を行なっていくことで、8020運動のように国民に歯科健診の受診を普及していくことも夢ではないと考えています。

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大槻 奈緒子講師

掲載誌情報

【発表雑誌】Journal of Gerontology: Medical Sciences (The Journal of Gerontology series A)
【論文名】Dental checkups and all-cause mortality in older adults aged ≥75 years: a large retrospective cohort study
【著者】Naoko Otsuki*, Tomoaki Mameno*, Yuya Kanie, Maki Shinzawa, Kazunori Ikebe, and Ryohei Yamamoto.
   *These two authors contributed equally to this work.
【掲載URL】https://doi.org/10.1093/gerona/glaf100

資金情報

本研究は、JSPS科研費基盤研究(B)(24K02764)および大阪府後期高齢者医療広域連合受託研究(受託研究代表:大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター 山本 陵平)の一部として実施しました。

用語解説

※1  大阪府後期高齢者歯科健康診査…日本では高齢者の口腔状態の問題や口腔機能低下をスクリーニングし、精密検査、治療および地域の介護予防事業等につなげることで、口腔機能の維持・向上、全身疾患の予防等を実現することを目的に、2018年度から後期高齢者を対象とした公的な歯科健診事業を開始した。高齢者を対象にした公的な歯科健診の実施は、世界的にも珍しく諸外国からの報告は見られない。

※2  Oral Health Screening to Assess Keys of Aging well (OHSAKA) study…2018年から実施されている後期高齢者歯科健康診査結果と、大阪府後期高齢者医療保険介入者延べ250万人の医療・介護レセプトデータ(悉皆)を突合した大規模リアルワールドデータを用いて、大阪府民の健康寿命の延伸を目指して実施している大阪発の歯学領域世界最大規模の疫学研究。大阪府後期高齢者医療広域連合および大阪府歯科医師会の協力のもと、大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター保健管理部門、本学大学院看護学研究科地域包括ケア科学分野、大阪大学大学院歯学研究科有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座が実施している多施設共同研究。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院看護学研究科
講師 大槻 奈緒子(おおつき なおこ)
TEL:06–6645–3558
E-mail:otsuki.naoko.cics[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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