最新の研究成果

糖尿病の発症に関わる遺伝子を新たに発見 ~発症メカニズムの一端を解明、早期診断法や治療法開発へ一歩~

2025年5月26日

  • 農学研究科
  • プレスリリース

概要

日本では、およそ6人に1人が糖尿病または糖尿病予備群に該当するとされており、糖尿病は一度発症すると完治が困難な疾患であることから、発症の予防が極めて重要です。糖尿病は、膵臓内のインスリン分泌細胞(β細胞)が過食などによるストレスにより損傷を受け、インスリンの分泌量が減少することで発症します。そのため、糖尿病の予防には、β細胞が損傷を受けるメカニズムの解明が不可欠です。

大阪公立大学大学院農学研究科の原田 直樹准教授、山地 亮一教授らと、大手前大学、東京大学、The Lundquist Institute at Harbor UCLA Medical Center、UCLAデヴィッド・ゲフィン医科大学院らの共同研究グループは、過食によるストレスによってβ細胞内で発現量が増加する遺伝子の一つを特定。この遺伝子の発現量増加がβ細胞に損傷を与え、その結果としてインスリンの分泌量低下や糖尿病の発症に繋がることを明らかにしました。また、この遺伝子の発現を抑制することで、過食によるストレスを加えてもβ細胞の損傷が抑えられ、糖尿病の発症を防げることを、培養細胞およびモデルマウスを用いた実験により明らかにしました。本成果は、糖尿病の発症メカニズムの解明に繋がるとともに、将来的な糖尿病の早期診断法や治療法の開発に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2025年5月21日に国際学術誌「Journal of Biological Chemistry」のオンライン速報版に掲載されました。

press_0526図1 酸化ストレス環境でのREDD2の発現誘導と膵臓β細胞における機能

私たちは、代謝異常によって引き起こされる生活習慣病の予防を目指して研究を行っています。本研究成果は、共同著者である大学院生の熱意と精力的な活動が結実したものです。

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原田 直樹准教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Journal of Biological Chemistry
【論文名】Nrf2- and p53-inducible REDD2/DDiT4L/Rtp801L confers pancreatic β-cell dysfunction, leading to glucose intolerance in high-fat diet-fed mice
【著者】Yukiho Yamada, Natsuho Urakawa, Hisato Tamiya, Shuya Sakamoto, Hiroki Takahashi, Naoki Harada, Tomoya Kitakaze, Takeshi Izawa, Shigenobu Matsumua, Eiji Yoshihara, Hiroshi Inui, Tomoji Mashimo, and Ryoichi Yamaji
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.jbc.2025.110271

資金情報

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費 基盤研究B(19H02913、22H02289、25K01971)、挑戦的研究(萌芽)(21K19093)からの支援を受けて実施しました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院農学研究科
准教授 原田 直樹(はらだ なおき)
TEL:072-254-9454
E-mail:naoki.harada[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs03
  • SDGs17