最新の研究成果

紫外線照射で酵母の生産能力を強化 メタノールからのD-乳酸生産量が約1.5倍に向上

2025年5月27日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

概要

石油価格の高騰や将来的な資源の枯渇が懸念される中、石油に代わる炭素資源としてメタノールなどの有機物が注目されています。メタノールは化石資源以外からの合成も可能なため、これを原料に微生物の力で有用な化合物を生産する技術の開発が進んでいます。

大阪公立大学大学院工学研究科の井上 義文大学院生(博士後期課程1年)、山田 亮祐准教授らの研究グループはこれまでに、メタノールから医薬品原料やバイオプラスチックの素材として利用されるD-乳酸を、効率的に生産できる酵母 Komagataella phaffiiK. phaffiiを開発してきました。

本研究では、D-乳酸のさらなる生産性向上を目指し、紫外線照射によって細胞内のDNAに損傷を与え、遺伝子変異を誘導する手法(図1)に着目。既存の酵母株に紫外線を数分間照射することで、D-乳酸の生産量が約1.5倍に増加した新規株の作出に成功しました。さらに、次世代シーケンサーによる遺伝子解析を行い、D-乳酸の生産性向上に関与する遺伝子を特定しました。今後は、本研究で得られた知見をもとに、K. phaffiiからのD-乳酸生産のさらなる高効率化を目指すとともに、メタノールから他の有用化合物を生産する技術の開発にも取り組む予定です。

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図1 紫外線照射により、K. phaffiiへ遺伝子変異を誘導する実験の様子

本研究成果は、2025年5月17日に国際学術誌「Metabolic Engineering Communications」のオンライン速報版に掲載されました。

二酸化炭素や廃棄バイオマス等から生産可能なメタノールは、再生可能資源として期待されています。本研究では、メタノール資化酵母のメタノール代謝メカニズムに関する、新たな知見を得ることができました。得られた知見をもとに、さらなる有用化合物生産へと発展させていきたいと考えています。

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井上 義文大学院生

掲載誌情報

【発表雑誌】Metabolic Engineering Communications
【論文名】Improvement of D-lactic acid production from methanol by metabolically engineered Komagataella phaffii via ultra-violet mutagenesis
【著者】Yoshifumi Inoue, Kaito Nakamura, Ryosuke Yamada, Takuya Matsumoto, Hiroyasu Ogino
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.mec.2025.e00262

資金情報

本研究の一部は、JSPS科研費(JP22H03803)の助成を受けて実施しました。

用語解説

※ Komagataella phaffii…メタノールを単一炭素源として増殖できる酵母

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
准教授 山田 亮祐(やまだ りょうすけ)
TEL:072-254-9504
E-mail:ryamada[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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